第47話 最初の生贄はお前だ
唐突に動かなくなったインテリメガネの姿に視界を埋め尽くす軍勢にざわりと動揺が走る。
「成功した」
付与者よる〝死〟と言う概念の付与。
ステータスはの状態異常とかの付与とは違い、概念の付与は初めてだったけど。
無事に成功してよかった。
「おめでとうございます! レフィーお嬢様!!」
「流石はご主人様です!」
「うん、ありがと」
まぁ、流石にインテリメガネ以上の実力者には容易に付与できないだろうけど。
インテリメガネは腐っても上位魔人。
このレベルの存在相手に通用したって事だけで十分な成果だわ。
「しかし、
それ? あぁ、これね。
もう中身も無いし、インテリメガネの死体なんていつまでも持っていても仕方ない。
とは言え、捨てちゃうのは勿体無い。
「DPに」
「かしこまりました」
シルヴィアに渡すと同時に死体が転送されて掻き消える。
これでインテリメガネは良いとして…… 軍勢の奥からビシバシ伝わってくる怒りの波動。
「随分とお怒りらしい」
まぁでも当然か。
最初はとるに足らない雑魚だと思っていた私達に手も足も出ず。
何が起こっているのかさえ理解できずに、長い時間をかけて築き上げた勢力を僅か半年足らずで半数以下にまで減らされた訳だし。
「アレが?」
「はい、アレが四魔王が一柱。
鬼王ヴィゴーレです」
「品のない脳筋ですね」
ミーシャさん、辛辣ですね……まぁ、ミーシャを眷属とする時に負っていた怪我の原因だし仕方ないか。
鬼王ヴィゴーレ。
圧倒的な暴力でもってしてその地位を築き上げたオーガ種の王であり、私のミーシャを傷付けた愚か者。
「どう思う?」
「私情を抜きにしても、アイツは考え無しの脳筋です。
ご主人様なら問題ないかと思います」
「シルヴィアは?」
「私とミーシャもおりますし、私も問題ないかと」
ふむふむ、2人がこう言うのなら大丈夫そうだな。
『まぁ付与の力に加えて、悪魔ちゃんの魔法は特別だからね』
そう、そうなのだ。
少し前に獲得した新たなユニークスキルである付与魔法。
付与魔法を獲得した時に判明したけど、私の使う魔法は特別だったらしい。
まぁ、確かに魔法とは本来適正のある属性のものしか使えない。
魔法とは歴としたスキルの一種であり、御伽噺のように何でもできるものではない。
そのくらいは当然、私とて知っていた。
けど! 私は悪魔に転生して普通に思うがままに魔法が使えちゃった訳じゃん。
悪魔は全種族で最も魔法に長けた種族だって言うし、それが悪魔にとっての普通だって思っちゃうじゃん!!
それがよくよくシルヴィアに話を聞くと。
確かに悪魔は全ての属性の魔法を使えるけど、理論として確立されてないと使えないって言われてビックリしたわ!
そんでもって、私が付与と並行して魔法を使っているから思った通りに魔法を使えると理解した瞬間にユニークスキルとして付与魔法を獲得したわけだけど……
『あはは、まさか気付いてないとは思ってなくてね。
でもまぁ、私としては目を見開く悪魔ちゃんが見れたから満足だよ』
コノヤロウ……絶対に私が勘違いしてる事をわかってて黙ってたな……!!
おかげでシルヴィアとミーシャに優しい目で微笑ましそうに見られたんだからなっ!?
「おいクソ餓鬼! そのような格好をしていても我の目はごまかせんぞ!!
貴様がこの大陸中央部を支配する者だな?」
「あ゛?」
誰がクソ餓鬼だと? 鬼王ヴィゴーレ!!
さっきからモーセの海割りの如く軍勢を割って近づいてきてるのは知ってたけど……脳筋ってのは本当らしい。
わざわざ最前線まで出向いてくれるなんてバカとしか言いようが無いわ。
それにしてもクソ餓鬼ね。
ふふふ、ただでさえ私のミーシャを傷付けたって言う許されざる罪を犯してたのに……
「雑魚を排除した程度で図に乗ったか?
幼女を装い油断を誘うつもりとは浅ましい愚か者よ、我が直々に始末してやろう」
幼女……ふふ、あはは! さっきのインテリメガネといい、この脳筋といい、ふざけやがってっ!!
そもそも、
もともとコイツを最初に殺る予定だったけど……絶対に許さない。
徹底的に潰してやる!
私を侮辱した事を精々後悔しながら死ぬがいいっ!!
「喜べ、四魔王でも最弱と名高い鬼王ヴィゴーレ」
「何だとっ!?」
「大陸統一の最初の生贄として血祭りにしてやる」
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