第46話 罪の重さを思い知れ

「うわぁ……」


 おっと、危ない危ない。

 思わず遠い目で声が漏れてしまった。

 心の準備が全くできてなかったとは言え、敵の前に出て来ちゃったからには堂々としなければ!!


「けど」


 目の前に広がる、遙か後方まで視界を埋め尽くす大軍勢。

 ダンジョンの真上に浮いてるからよく見える。

 もうこれ、魔物の群れって言うより軍隊じゃん。

 パッと見だけど殆どが人間の姿をしてるし、武装までしちゃってるし。


 いやまぁ、国家を形成してる時点でわかってはいたけどさ……

 この大陸を支配しているのは魔物の中でも強大な力を誇り、さらには人間と同等の知能を有した魔人と呼ばれる存在達。


 魔人。

 人間は勿論、エルフに獣人、ドワーフの他にも色んな種族が存在するこの世界において、魔の存在ながらも人の姿を持ち最低でもAランクの実力を誇る者達の総称。


 本来なら数百年に一度の周期で現れる魔王やその配下、永き時間を生きる強大な魔物を指す言葉であり。

 基本的に魔物の上位にあたる存在。

 しかも、神話級の存在が普通に跋扈してるような大陸での魔人……お家に引き篭もっても良いですか?


「さぁ、レフィーお嬢様。

 あの愚か者共に勧告を」


 うっ……やっぱり、そうは問屋が下さないよね。

 えぇい! こうなったらやってやろうじゃない!

 大人数の前で喋る事になるのはわかっていた事! まぁ、ここまで多いなんて想像してなかったけど……

 とにかく! 堂々と精々大物感を醸し出してやるわっ!!


「聞け、我らに敵対する愚か者共よ。

 私の名前はレフィー、最古にして始まり。

 原初の悪……」


「何だ貴様は?」


 お前こそ何だ?

 他の奴らより豪華な装いに武装。

 軍勢を率いるような感じで立ってるからそれなりの立場なんだろうけど。

 せっかく頑張って喋ってたのに……


「貴様のような幼女を使者に出すとは……我々を侮辱するのも大概にしろっ!!」


 貴様のような……幼女?

 え? まさかとは思うけど、私に向かって言ってないよね??


「おい幼女、貴様レフィーと言ったな?

 死にたくなければ今すぐ主人の元に戻ってこう伝えろ。

『我らが王と対話を望むのならば、お前のような幼女を遣すのではなく自身でで向け』とな。

 尤も、我らが怖くなければの話だが」


 見下すような嘲笑が軍勢から巻き起こってるけど、そんな事はどうでも良い。

 幼女……私が幼女ね……インテリメガネの分際で言ってくれるじゃねぇかっ!!


「不愉快だ、黙れ」


 嘲笑っていた者達が驚愕に目を見開き、騒がしかった軍勢が一瞬にして静まり返る。

 本来なら降伏するように勧告するつもりだったけど……やめだ。


 まぁそもそも降伏勧告なんてしても素直に降伏するハズも無い。

 そっちがその気なら良いだろう、受けて立ってやる。


「っ!!」


 突然声が出なくなった事に焦ったのか、インテリメガネを中心とした一団から魔力が迸って殺気が高まる。


「ミーシャ」


「お任せ下さい」


 そう言ったミーシャが地に降り立った瞬間、今にも飛び掛かって来そうだった軍団一帯が凍り付いた。

 ふっふっふ、どうだうちのミーシャは!

 今やシルヴィアと同じく、四魔王にも匹敵する実力は伊達じゃないのだ!!


「しかし」


「がぁっ……」


 インテリメガネめ、ミーシャの攻撃を躱すとは、流石はこの同盟軍の指揮官クラスなだけはあるな。


「この……放せ」


 やっぱり、今の私の腕力じゃあインテリメガネ程度でも首を絞め殺す事は無理か。

 まぁ、それならそれで確実に仕留めるだけだけど。

 ふふふ、この私に向かって幼女なんて言った罪を思い知れっ!!


「死ね」


 その瞬間。

 なんの予兆もなく、唐突にインテリメガネの身体から力が抜け落ちた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る