第29話 朝ご飯の時間

 全身を優しく包み込むような、ふかふかなベッド。

 冷たい外気を遮断し、強固な結界の如く守護してくれる暖かなお布団。

 端的に言って、素晴らしい。


 前前世ではずっとベッドの上で生活してたから何とも思わなかったし、前世では規則正しい生活を送る事は当たり前な環境。

 むしろ寝過ごしたりして、ベッドの上で無駄な時間を浪費する事を愚かとすら思っていた。


 けど、今ならわかる!

 愚かだったのは私の方だったのだとっ!!

 自堕落に惰眠を貪る。

 なんて甘美で、魅力的で、至福な時間!


 この心地よさを知らなかったなんて、人生を半分くらい損してた気分だわ。

 何よりこのベッドの品質が凄まじい。

 寝返りもしやすいし、何より重力を感じない、まさに雲の上にいるようなこの感覚!

 ずっとこの微睡に溺れていたいわ〜。


「んぅ」


 むにゅっ


「……」


 あれ? おかしいな。

 寝返りして仰向けから横向きになっただけなのに、顔に何か知ってる柔らかい感触が……


「……」


 さっきまでの心地良い微睡が嘘のように一瞬で意識が覚醒して浮上していくのを明確に感じる。

 これは目を開けたらその瞬間に、完全に目が覚めるやつだ。

 本来ならこの上なくサッパリかつスッキリとした目覚めなんだろうけど……


「……よし」


 地球の記憶にある雑学によると、睡眠中に約0.5〜1リットルの水分を消費するらしいし。

 取り敢えず、水でも飲もう。

 まぁ、魔力で構築されてるこの身体に水分が必要なのかは不明だけど。


 しかしまぁ、このベッドは品質の高さもさる事ながら……とにかくデカイ。

 ぶっちゃけ私の身体のサイズに全くもってフィットしてない。


 ベッドから出るだけで、いそいそとハイハイしないとダメなのは流石になぁ。

 まぁ、寝心地は最高だから別にいいけど……


「よっ、と」


 水は……おぉ、素晴らしい。

 昨日寝る前にダンジョンの権能で、冷蔵庫を創造しておいて正解だったな。

 キンキンに冷えてやがるっ!!


「んっ……ふぅ〜」


 さて、昨日の夜ちゃんと自分の部屋に行ったハズのシルヴィアが、何故か私のベッドで一緒に寝てた事はさておき。

 流石に昨日は初戦闘をこなして疲れてたからかすぐに寝ちゃったし、シルヴィアが起きる前にできる事をしておかないと。


 早朝って事もあって、邪神もまだ趣味の悪い覗き見はしてないみたいだしね……反応がない。

 よし、本当に邪神はいないみたいだな。


 まぁ邪神がいても別に困る事なんて何も無いし、大した事をするわけでもないけど。

 いちいち口を挟まれると、ちょっとイラってくるしなぁ……今のうちにやるとしよう。


「ステータス」




 ステータス

 名前:レフィー

 種族:悪魔デーモン

 加護:なし

 称号:「原初の悪魔」「神の敵対者」

 眷属:シルヴィア

 DP:950000


 ・ユニークスキル

「付与者」


 ・固有スキル

「魔力体」「魂食」「高速再生」


 ・エクストラスキル

「鑑定」


 ・特殊スキル

「ステータス」


 ・スキル

「魔力制御LV8」「魔力操作LV8」「魔力感知LV6」


 ・耐性

「魔法攻撃耐性」「物理攻撃耐性」「精神攻撃耐性」




 ダンジョンポイントの項目が追加されてるのはいいとして……


「鑑定」




 悪魔デーモン

 下位悪魔よりも上位に位置する悪魔。

 悪魔族の中では最も一般的な通常種に位置する。

 強大な魔力を保有しており、高度な魔法を操り、魂すらも弄ぶその力は未知数。

 危険度・未定。




 危険度・未定って……

 まぁ確かに魔物や魔人と称される存在の危険度は人間が付けてるから、人間に知られてない悪魔の危険度がわかるハズないか。


 う〜ん、客観的に見てどの程度に位置するのか知っておきたかったんだけど……まぁ仕方ないか。

 取り敢えず、オークエンペラーと同等かそれより少し強い程度って仮定しておくとしよう。


 シルヴィアがいたとは言え、進化前の下位悪魔の状態でも少なくともオークエンペラーには勝てたしね。

 ん? そう言えば、シルヴィアの種族は何なんだろう?


 悪魔だって事は知ってるけど、シルヴィアが今の私と同格とはとてもじゃないけど思えない。

 シルヴィアが起きたら……


「……」


 シルヴィアとガッツリ目が合った。


「ふふ、おはようございます。

 難しいお顔で考え込んでいらっしゃるレフィーお嬢様を見れるなんて、朝から眼福でございました」


「いつから……」


「レフィーお嬢様、私はお嬢様の専属メイドですよ?

 私がレフィーお嬢様よりも後に起きるなんて失態を犯すとお思いですか?」


「……思わない」


 そう言えば、前世から私が目が覚めた頃にはシルヴィアは絶対に起きてた気がする。

 当然、私のベッドに潜り込んではいなかったけど……まぁ、いいか。

 シルヴィアの種族については道すがら聞くとして!


「シルヴィア、行こう。

 朝ご飯の時間だ」


 無意識に自然と口角が吊り上がった。

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