第27話 進化! その2

 今のは邪神じゃなくて、世界の声……進化?

 え? ウソでしょ、ちょっと待って欲しいんですけど。

 進化するって事は、当然またあの進化の繭に包まれるって事だよね。


 今まさにミルフィーユを食べようとしてる、このタイミングで?

 目の前にこの光り輝くミルフィーユがあるのにお預けなんて……そんな残酷なっ!!


「くっそぉ〜!」


 こうなったら進化の繭が展開される前にミルフィーユを食べて……あっ、ちょっと待って!

 飽和した魔力と急速に周囲の魔素が収束して! か、壁がっ! 繭が形成されてぇ!!


「ス、ストップ!」


 あぁ、なんて無情なんだろう。

 必死に伸ばしたフォークがミルフィーユに届くよりも早く、繭が完成してしまうなんて……ちくそう! 私のミルフィーユがっ!!


 そもそも私、今朝進化したばかりだよ?

 何で1日に2回目の進化なんてしちゃう訳? そんなのテンプレさんが許さないでしょ普通!?


 しかもこのタイミング! 何者かの意思が介在してるとしか思えない。

 そして、そんな事をするのも、できるのも私の知っている中ではただ1人……邪神めぇ! またしても貴様の仕業かっ!!



『ぴろん!

 対象の進化が完了しました!』



 さぁ、私を閉じ込めている進化の繭よ!

 魔力へと戻りて、私の中に吸収されるがいい! そして、私を解放するのだ!!

 よしよし、その調子……きたっ!


「ほっと」


 さよなら進化の繭。

 そして、ただいま愛しの地面!

 地面? おかしいな、椅子に座ってたハズなんだけど……まぁ、いいか、大かた危ないからシルヴィアが退けてくれたんだろう。

 そんな事よりも……


「天誅っ!」


「レフィーお嬢様?」


『天誅?』


「邪神! 貴様に天誅を下す!!」


『また、いきなりだね。

 何故、悪魔ちゃんが私に天誅を?』


 コノヤロウ、この期に及んでシラを切る気か……!

 いいだろう。

 なら、この場で直接言ってやる。


「1日に2回目の進化」


 これだけで、本来であれば異常と呼べる事態。

 そんな事が普通に起こるのなら、世の中はこの大陸と同じ化け物だらけの人外魔境と化す事は必至。


 でも、少なくとも私が知り得ている知識では、さっき始末したオークエンペラーどころか、オークキングですら目撃される事も稀な存在だし……


「何より、ミルフィーユを食べようとした瞬間に進化した」


 お前の意思が介在してるとしか考えられ無いんですけど?


『いやいや、それは悪魔ちゃんの勘違いだよ。

 本当に私は何もやってないよ?』


「何だと?」


 そんなウソが通じるとでも……


「ん……!」


「ふふ、私特製のミルフィーユですよ。

 美味しいですか?」


「美味しい」


 むふふ、幸せ!

 この美味しいスイーツを頬張る、これぞ至福の時間!


『餌付けされてる……』


「失礼ですよ」


 うまうま!

 邪神がなんか言ってるけど、全くもって気にならんわ。

 しかも、まだあんなにミルフィーユが……ふふふ、自然と頬が緩んじゃうね!


「さて邪神、どう言う訳か説明してもらいましょうか」


『私を呼び捨てにするなんて、キミも大概だね』


「私はレフィーお嬢様の専属メイドであり、レフィーお嬢様に仕えているのです。

 必要がなければレフィーお嬢様以外に敬称など付けません」


『あはは、他の神ですら、私の事は畏怖すると言うのに……本当にキミ達は面白い。

 いいよ、シルヴィア、キミの質問に答えてあげよう』


 じゃあ、私もミルフィーユを食べながら聞き耳を立てておこう。

 邪神が何もしてないって言うのなら、たった1日で2回も進化した理由は気になるし。


『と言っても、単純な事なんだけどね。

 生まれたて状態の悪魔ちゃんが、神話にすら語られるエルダーリッチの魂を食べたんだよ?

 普通ならその時点で2、3回進化しても不思議じゃ無いよ』


 なるほど、確かにそう言われたら納得だわ。

 ゲーム序盤のLV1の状態で、高レベルの敵を倒したら一気にレベルアップするのと同じって訳か。


「確かに……」


 シルヴィアを納得させるとは、やるな邪神。

 と言うか、今更だけど進化してからまだ一度もステータスを確認してなかったわ。

 まぁ、スキルの獲得通知とかも無いし、大した変化は無いんだろうけど……一応確認しとかないと。


「ん……ステータス」




 ステータス

 名前:レフィー

 種族:悪魔デーモン

 加護:なし

 称号:「原初の悪魔」「神の敵対者」

 眷属:シルヴィア


 ・ユニークスキル

「付与者」


 ・固有スキル

「魔力体」「魂食」「高速再生」


 ・エクストラスキル

「鑑定」


 ・特殊スキル

「ステータス」


 ・スキル

「魔力制御LV8」「魔力操作LV8」「魔力感知LV6」


 ・耐性

「魔法攻撃耐性」「物理攻撃耐性」「精神攻撃耐性」




「っ! これは……」


「レフィーお嬢様? 如何なさいましたか?」


「幼体表記が、消えてるっ!!」

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