第26話 邪神、テメェは有罪だ

 と言うか、本当に今まで何処行ってたの?

 私は発情したオーク共との戦闘訓練を頑張ってたって言うのに……


 あんな汚物を見せつけられた、私の心の叫び文句を無視した罪は非常に重い。

 もし仮に、しょうもない理由だったとしたら……わかってるよね?


『いや、ちょっとお腹が空いてね。

 ちょうど友人から誘われたから外食に行ってたんだ』


 外食……友人と外食……


『あぁ、悪魔ちゃんの勇姿はしっかりと録画してるから心配しないで。

 後でちゃんと見るからね!』


 えっと、つまりは何ですか?

 このクソ邪神は私が思い出すのも憚られる格好をしたオーク共と戦ってる時に、呑気に友達とご飯を食べてたと……


『あはは、悪魔ちゃん、私が友人とご飯に行ったから嫉妬してるの?

 全く本当に悪魔ちゃんは可愛いね』


「黙れ邪神」


 被告人クソ邪神、貴様に判決を言い渡す。

 ジャッジ……イッツ、ギルティー!!


『ギルティーって、キミね』


「黙れ」


 仮にも神のくせに言い訳するんじゃない。

 私が頑張ってオークと戦ってるにも関わらず、そんな私に見せつけるようにお友達と楽しくご飯なんて!

 なんて羨ま……じゃなくて、有罪だ!!


『傲慢にして嫉妬深いとは。

 悪魔ちゃん、キミ結構罪深いね』


 嫉妬がどうのってのは絶対に認めないけど、私が罪深いのなんて当然じゃん。

 だって、私は悪魔だよ?

 七つの大罪にもそれぞれ対応する悪魔が存在する程なのに、モノホンの悪魔である私が罪深くないはずないじゃん。


 傲慢に振る舞おうと、嫉妬に狂おうと、それこそが悪魔という種族の本質!

 つまり私が怠惰に過ごそうが、暴食に走ろうが、悪魔だから仕方のない事なのだ!!

 ふっ、我ながら完璧な理論武装だぜ!


『その理論はちょっとおかしいと思うんだけど』


「シャラップ」


 黙れと言っている。

 今この場に置いて、貴様に発言権なんてものは存在しないのだよ。

 さて被告クソ邪神。


 信賞必罰とは世の常。

 有罪となったからには罰が必要だとは思わない? 思うよね?

 という訳で、貴様には賠償金を請求する。


『賠償金?』


 そう、賠償金です。

 具体的にはDPダンジョンポイントを100万ポイントほど支払え。


『100万は流石に多くないかな?』


 何言ってるの?

 私は虫唾が走る思いをしながらも頑張って初戦闘をこなし、オークエンペラーが率いる群れを壊滅させたんだよ?

 本当ならご褒美としてもっと請求したいくらいなんだけど。


『傲慢にして嫉妬深く、強欲か……この私を相手に強請るなんて、流石は原初の悪魔だね』


 当然だ。

 そもそも、こんな人外魔境に転生させられたんだ。

 生活基盤を整える程度の出資はしてもらわないと困る。

 そういう訳だから、さっさとDPを寄越せ。


『はぁ、仕方ないね。

 今キミに死なれても困るし、チュートリアル報酬としてお望み通りDPを100万ポイント進呈しよう』



『ぴろん!

 管理者・邪神(笑)よりチュートリアル報酬(DP100万ポイント)が進呈されました!』



 まさか本当に言い値を支払うとは。

 邪神さん、結構ちょろい?

 よし、これからもちょくちょく強請っていこう。


『本当にキミは……』


 邪神が呆れたような空気を醸し出してるけど気にしない。

 生き残り、強くなって復讐を果たし、私の目標を達成するためには何だろうと……例え神でも邪神でも利用してやる。


『可愛いのに、怖いね。

 まぁ、だからこそ面白いんだけど』


「レフィーお嬢様、デザートの準備が完了致しましたよ」


「デザート!」


 なんて甘美で素晴らしい響き!


『この豹変具合とか、特に面白いね』


 煩い! 魂を使ったデザートを前にテンションが上がらない悪魔が何処にいる!?

 しかも、このデザートに使われてる魂はただの魂じゃなくて、オークエンペラーとその側近であるオークキング達の魂!!


「こ、これは……!」


「普通にケーキ等にしてもよかったのですが、今回はミルフィーユにしてみました」


 ヤバイ、めっちゃ美味しそう。

 はしたなくもゴクリって唾液を飲み込んじゃったけど、こればっかりは仕方ない。

 目の前にサーブされたミルフィーユが光り輝いて見える!


「さぁ、どうぞお召し上がり下さいませ」


「いただきます! ……んっ!!」


 うんまぁ〜い!!

 もう語彙力が無くなるほどに美味しい!


「ふふ、お気に召して頂けたようで何よりです」


「ん、流石はシルヴィア」


「っ! あ、ありがとうございますっ!!」


 オークエンペラー共の魂は当然として、シルヴィアの腕が凄まじい。

 もう王宮のシェフ達と比べても遜色ないレベルで凄まじい。

 これならどれだけでも食べれそうだわ!!



『ぴろん!

 対象の総魔素エネルギー量が限界を突破しました!

 これより、対象の進化が開始されます』



 再びミルフィーユにフォークを刺そうとした瞬間、そんな声が鳴り響いた。

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