第16話 落ち着く、大事!

 膝から地面に崩れ落ちた。

 それはもう見事に崩れ落ちた。

 ちょっと膝が痛かったけど……そんな事よりもっ!


「何で……」


 進化したのに何で! 種族の横にある〝幼体〟表記が消えてないんだよっ!?

 元公爵令嬢として、はしたないとは思うけど……四つん這いになって項垂れちゃうのも仕方ないと思う。


「私の魅惑悩殺ボディーが……」


「お嬢様……そうお気を落とさないでください。

 ほら、少し身長も伸びておりますよ?」


『そうそう。

 エネルギー量もさっきまでとは比較にならない程に上昇してるし、そう落ち込む事はないよ』


 ちょっと身長が伸びて、エネルギー量が増えたから何だというのか。



『ぴろん!

 進化に伴い、以下のスキル及び耐性を獲得。

 固有スキル・魂食、高速再生を獲得しました!

 スキル・魔力操作、魔力制御を獲得しました!

 耐性・魔法攻撃耐性、物理攻撃耐性、精神攻撃耐性を獲得しました!』



『ぴろん!

 スキル・解析の熟練値が上限に達しました!

 スキル・解析が、エクストラスキル・鑑定に進化しました!』



 ……うん。

 まぁ、新しくスキルを獲得して、解析スキルが鑑定に進化したのはいいんだよ?


 けどさ、こうして四つん這いになってまで嘆いてる時に、業務的な感じて通知されると……ね。

 不意に冷静になっちゃうっていうか何というか……ヤバイ、恥ずかしい!

 昨日のステータスオープン事件と同等に恥ずかしいっ!!


 と、とりあえず、この状況を脱さなければ!

 こういう時は変に意識したり、取り乱したら負け。

 何事もなかったように立ち上がって、ソファーに座り直す……よし、完璧かな!


「どうぞ、ホットミルクです」


「ん」


 流石はシルヴィア! 実にいいタイミングだわ。


「ふぅ〜」


 よし、落ち着いた。

 ええっと……悪魔についてと、エルダーリッチについてはもういいとして。

 後はこの部屋の事を聞いて、今後の方針を決めないと。


「進化の事は後にして、とりあえず、この部屋の事を、教えて欲しい」


「かしこまりました。

 先程もお伝えいたしましたが……お嬢様の専属メイドとして! お嬢様があの様な洞窟でご就寝なさるなど、到底許容できません!!

 ですので、ダンジョンマスターとしての権能をお借りし、サブマスターとして少し模様替えをさせていただきました次第です」


 さっきも思ったけど、この変化を模様替えって断言できちゃうシルヴィア……マジで凄いわ。

 しかし、サブマスターってなんぞや?

 ダンジョンマスター以外でも、ダンジョンマスターとしての権能を行使できるのか……


『それはシルヴィアが悪魔ちゃんの眷属だからだね。

 まぁいくら眷属でも、ダンジョンマスターの承認無しにサブマスターになる事は不可能。

 それを寝てる間に無意識で許可するなんてね……ふふふ』


 コノヤロウ……


「そ、それで、サブマスターって?」


『あはは、動揺しちゃって、可愛いねぇキミは!』


 ど、動揺なんてしてないわっ!


「ふふふ、お嬢様は甘えん坊さんですからね」


「うぅ……」


 シルヴィアまで……!


「こほん、サブマスターとはダンジョンマスターの権能を一部与えられた者の総称でございます」


「ふむ……」


 落ち着け私。

 さっきも見事な手腕で乗り切ったんだし、この程度で取り乱す私ではない!


 現にもう今の私を見て、成長が芳しくない事を気にしてるとは誰も思わないハズ!

 ここは冷静にポーカーフェイスを……


『まぁ、さっき悪魔ちゃんが冷静になったのは、精神攻撃耐性を獲得した事も影響してると思うけど。

 その容姿は可愛いと思うし、そんなに気にしなくていいんじゃない?』


「……」


 この邪神めぇ……本当に何言ってくれてんの?

 せっかく上手く乗り切ったと思ったのに……ちょっと恥ずかしくて顔を上げられないんですけど。


「大丈夫です! お嬢様は今のお姿でも、十分過ぎるほどに魅力的です!!

 それに……」


 やめてぇ!

 今はマジで恥ずかしいから、抱っこしないでください! お願いしますっ!!

 あっ、でも気持ちいいから、そのまま頭は撫でて欲しい。


「ふふふ、お顔を真っ赤にしたお嬢様も素敵ですよ」


「うぅ〜……」


 やっぱ下ろしてっ!

 って、そのまま座らないで! 頭を撫でながら私を膝の上に乗せないでぇっ!?

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