第15話 進化!

「ふぅ」


 あぁ、美味しかった!

 そりゃもう、憎っくき勇者共の事を一瞬忘れる程に至高の一時!! まぁ、あくまでも一瞬だけど。


 とにかく! 口の中に広がる芳醇な甘みと、柑橘系の果物のような爽やかな後味。

 公爵令嬢として、この世界では最高峰の料理を食してきた前世。

 この世界よりも遥かに発展した文明を築いていた地球の中でも、特に平和で豊かだった日本に住んでいた前前世。


 その両方の記憶を合わせても、過去一で美味しかった。

 何かちょっと悔しいけど、これは認めざるを得んな。

 あんな外見だけど……リアルホラーな骸骨のエルダーリッチだけど! その魂は非常に美味であったと!!


 うん満足だわ。

 魂、美味し! 好物決定っ!!

 さて、食後の余韻に浸るのはこのくらいにしてっと……


「何これ?」


 目を瞑って美味しいご飯の余韻に浸り、目を開けると黒い壁が広がってるって……

 果たしてこれは、どうなってるのか? 全く意味がわかんないんですけど。


 確か天の声が何か言ってたような気がするけど……ヤバイ、食後の余韻に浸ってて何も聞いてなかったわ。

 まぁでも、今更そんなことを気にしても仕方ない。

 とりあえず、今重要なのは現状把握! てな訳で……


「はい、解析っ!」



 名称 : 進化の繭

 悪魔族デーモンが進化する際にその魂と肉体を包み込む事によって保護する、高密度な魔力で形成された壁。

 悪魔族の進化を安定化させる効果を持つ、特に害はない。



 進化の繭……そういえば、天の声も進化がどうのって言ってたような気がしないでもない。

 けど進化って人間でも、亜人でも、魔人でも、魔物でも、かなり稀な現象だった気がするんだけど。


 まぁ、神話生物であるエルダーリッチの全てを、文字通り食べた訳だし。

 さらには私って生まれて間もないベイビーだし、成長率が高いのも当然かな。


「うん、納得した」


 しかし、転生して2日目にして進化かぁ。

 これで一歩、クソ勇者達を筆頭とする、人間共への復讐に近づいた訳だ……感慨深いな〜。


 まぁ、この喜びは後でシルヴィアと共有するとして、問題なのは私の四方を囲んでるこの球体状の黒い壁。

 さて、どうしたものか……



『ぴろん!

 対象の進化が完了しました!』



「っ!」


 ついに……ついにこの瞬間が来たっ!

 進化という事は、私が成長するという事と同義!

 つまり! 私は今日をもって幼体を……この絶壁幼女ボディーを脱するのだ!!


 目指せ巨乳! 出でよ我がおっぱいっ!!

 さようなら、絶壁な幼女ボディーよ。

 そして、こんにちは! 妖艶な悩殺グラマスボディー!!


 周囲を取り囲んでいた進化の繭が、溶けるように魔力へと戻って私に吸収される。

 そして私を囲っていた進化の繭という名の折から、見る者全てを魅了する傾国の美女がむん〜っ!?

 一瞬にして視界を奪われて、息もできない! いったい何がっ!?



 むにゅぅっ



 こ、この感触は、まさか……


「あぁっ! お嬢様の香しい香りを嗅ぐだけで、濡れてしまいそうなのに……こんなっ……」



 ぷにぷに。

 たぷたぷ。


 

「んっ! あっ、あぅ!!」


 この弾力。

 それにこの熱のこもった、色っぽいシルヴィアの声……間違いない、これは……


 い、いや、落ち着け私。

 別にシルヴィアが私の視界を埋め尽くす程の破壊力を誇っていようとも、それが何だというのか。


 私は進化して幼女ボディーとはお別れしたのだ。

 今の私はシルヴィアにも引けを取らないスーパー美少女! この自慢の体で堂々と横に……ん? あれ??

 なら何で私の顔にシルヴィアのおっぱいが……?


「あぁ! お嬢様! 何と可憐なお姿っ!!」


「むぅー! んぅー!!」


 ま、まさか、ね。

 だって私は進化した訳だし! そんな事あるはずが……


『悪魔ちゃんが窒息してるよ?』


「はっ!? 申し訳ございません、お嬢様!!」


 やっと解放されたけど、そんな事はどうでもいい!!


「か、鑑定っ!!」



 下位悪魔レッサーデーモン・幼体

 名前:なし

 加護:なし

 眷属:シルヴィア



「そ、そんな、バカな……」

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