第12話 一に平穏、ニに堕落! ついでに復讐!!

「ん……んぅ……」


 ぼんやりする意識を、何とか覚醒させて目を開けると……知らない光景が広がっていた。

 豪奢で重厚感ある天蓋、私の身体を包み込むフカフカなマットレス。


「これはいったい……」


 いや、別にふざけているわけではない。

 ラノベ主人公達のように自分が転生した事を忘れて、あぁそう言えば転生したんだ……とかいうテンプレに陥っている訳では決してない。


 ただ本当に知らない光景が広がってるだけで……

 私はシルヴィアに抱き付いて寝たハズだ、それは間違いない。

 そして私が寝る前までは、こんなベッドはどこにも存在しなかったハズなんだけど……


「まぁ、いいや」


 ここが何処かなんて些事よりも、今はこの素晴らしいベッドを堪能しなければ!

 敢えて言おう、このベッドは素晴らしいと!!


 私の睡眠に関する情熱とこだわりは、自他共に認める程! まぁ、身近な人しか知らなかったけど……

 ともかく! そんな私が認めるのだから、このベッドは最高級品で間違いない。


「ん」


 そんな訳で、おやすみなさい……


「お嬢様、おはようございます」


「む、来たな、悪魔め」


 私の二度寝を邪魔しようとする悪魔シルヴィア

 強敵だけど……私は屈しない! ふっ、この暖かく最高のベッドで行う至高の行為!!

 なんかちょっと、表現が卑猥な気がしないでもないけど……この二度寝は誰にも邪魔させんっ!!


「ふふ、そうですね。

 私も、お嬢様も悪魔です」


 確かにシルヴィアの言う通りだけど、そういう事を言ってる訳では断じてない。

 というか、気づいたらシルヴィアに、幼子みたいに抱っこされてるんですけど……


 いやまぁ、今の私は本当に幼子な訳だけどさ。

 何せ昨日生まれたばかりだし、絶賛0歳な赤ちゃんだしね。

 とはいえ、前世と前前世の記憶を持つ身としては、結構恥ずかしいんだけど……まぁいいか。


 シルヴィアに抱っこされてると落ち着いて安心するし、何より自分で歩く必要がない!

 つまり! この状況であれば気兼ねなく、二度寝する事ができるのだ!!


『あはは、悪魔ちゃんにそんな一面があったなんてね。

 微笑ましくて可愛いよ!

 でもおかしいな、私には辛辣なのに……私にも甘えていいんだよ?』


 ……本当に、マジで死ね!

 いい気分だったのに、一気に最低の気分になったわ。

 おいコラ、クソ邪神! ナチュラルに人様の私生活を、覗き見しないでくれる!?


「邪神め、許すまじ!」


 この辱めは忘れない!


「またこうして、お嬢様にお仕えできる事に関しては感謝しますが……お嬢様に対する数々の無礼、万死に値します。

 今はまだ不可能ですが、いつの日か邪神めに鉄槌を落としてやりましょう」


 うんうん、全くもってシルヴィアの言う通り……てっ、え?

 これってもしかして、シルヴィアも邪神ボイス聞こえてる感じ?


『いやぁ、これは驚いた。

 まさか私と悪魔ちゃんの、プライベート回線に割り込むなんて……』


 おぉ、あの性悪クソ邪神がびっくりしてる。

 なんか知らんけど、ちょっとだけスカッとした。


「私はお嬢様の専属メイドですので、この程度はできて当然です」


 なんかシルヴィアがめっちゃイケメンに見える!

 いやまぁ、前世からシルヴィアは完璧超人だったけども……


『いやいや、おかしいよ!

 いくらSSR級でも、普通はそんな事できないからね!? いったいどうなって……』


「ふふ、邪神が困惑していますよ。

 流石はお嬢様です!」


 うん、ごめん。

 何の事か全くわからん。

 だって私何もしてないよ?


 シルヴィアを召喚する時に魔力が抜けた感覚はあったけど、それだけだし。

 てか、そんな事よりも……


「これは……」


 本当にどうなってんのコレ?

 あの天蓋付きのベッドもそうだけど、たった1日寝ただけであの殺風景な洞窟が豹変してるんですけど……


「僭越ながら、お嬢様がお眠りの間に、少し模様替えをさせていただきました」


 少しって……どこぞの匠も確実に脱帽して、弟子入りを願い出るだろう程に激変してるぞ、これ。


「如何でしょうか?」


 端的に言って素晴らしい。

 何がどうなって、こんな事になったのかは気になるけど、別に洞窟を魔改造されても困る事なんて全くない。

 むしろナイス! シルヴィア、よくやった!!


「気に入った!」


『この変化を普通に流せるなんて……』


 邪神が何か言ってるけど気にしない。

 大事なのはマイホームが、快適になったという事実のみ! その他の事は、ぶっちゃけどうでも良い。


「一に平穏、ニに堕落! ついでに復讐!!」


 うん、素晴らしきかな。

 我ながら良いモットーだわ!

 絶対に復讐はするけど、急ぐ必要は全くないしね。


「ふふ……」


 ゆっくりと、じわじわと確実に……物理的にも社会的にも追い詰めて復讐してやる!!

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