第11話 メイドは変態かも知れない

「お嬢様ぁー!!」


 あ、はい。

 やっぱそんな訳ないですよね。

 わかってたよそんな事。


「あぁ! 今日は何と素晴らしい日なのでしょう!!」


 ズボッと私を土の中から引き抜いたメイドさん。

 まるで子供のように、両脇を持ちあげられてるこの状況……うん薄々気づいていたさ。


「あぁ、こんなに小さくなってしまわれて……」


 そう、その通りなのだ。

 今まではなんか受け入れ難くて、あえて触れなかったけど……さっきエルダーリッチから逃げてる際についた土を払った時に、気づいてしまったのだ。


 その手が明らかに小さいという事に! それに、よくよく意識したら確かに視線も低いし!!

 いやまぁ、この際それはもうどうでもいいんだけどさ。


 だって私って転生直後で今は0歳児な訳だし、ステータスにも幼体ってあったし。

 私がリアル幼児体型になっているのは、謂わば当然の事なのだよ!


 そんな事より重要なのは、私が悪魔っぽい外見じゃないって事!

 手足が普通って事は、とりあえず私の外観は人間のそれって事だからね。

 にぎにぎ。


「うん」


 普通の手だ。

 まぁ、かつて王国の至宝とまで言われた艶やかな金髪は、受けた仕打ちによる重度のストレスで、色素が抜け落ちて真っ白になっちゃったけど。

 そんなのは私がちゃんと、人間の姿をしてるって事に比べたら些細な事!


 因みに私は現在、ワンピースを着ている。

 産まれたてのはずなのに、何で服なんか着てるのかは知らんけど……

 もしかしたら何処かにいるかもしれない、両親が着せてくれたのかもしれないし。


『あぁ、流石に幼女を全裸のままにしておくのは、倫理的に良くないからね。

 そのワンピースは私からのプレゼント。

 ちなみに、悪魔ちゃんに悪魔生での両親は存在しないよ』


 あ、はい、そうですか。

 まぁ何にせよ、裸よりは断然いいから服を着てるなら理由はどうでもいいや。


「もう大丈夫です!

 この私が、お嬢様をしっかりとお守り致します!!」


 まぁ何はともあれ……降ろして欲しい。

 両脇の下を持たれて、足がぷらーんってなってるこの状況は普通に恥ずい。


 あっ、下ろしてくれましたか、ありがとうございます。

 そしてたった今、重大な問題に気付いてしまっんだけど……とりあえず、目の前に立たないで欲しい。


「さぁ、お嬢様のメイドであるこの私に、何なりとお申し付け下さいませ」


 うん非常に絵になってるんだよ? なってるんだけどさぁー。

 どうしても目につくんだよね、あの程よい巨乳が……


「まずこのゴミの処分のために、ご挨拶が遅れてしまった事をお許しください」



 ペチン



 突如として現れた漆黒の空間の中に手を突き差し、胸を揺らしながら頭を下げるメイドさん。

 そして漆黒の空間から、使い古された雑巾でも捨てるかのように投げ捨てられたのは真っ黒な塊……


 じゃなくて、よく見るとさっきの骸骨! エルダーリッチさんじゃないですか!!

 てか、コレ生きてるのかな?

 あっ、今ピクって動いた。


「お側におりながら何もできず……申し訳ありません。

 これからは何があろうと、この命に代えてもお守りいたします」


 とても悲しそうに瞳に涙を浮かばせながら、再び抱きしめられる。

 お側に……ね。

 いやまぁ、薄々わかってはいたけど、やっぱりそういう事か。


 けど今はそれよりも……抱きしめられるって事は、勿論アノ豊満な胸も押し付けられるわけで……

 コレは宣戦布告と受け取っていいよね?


 前世ではまだあった。

 それでも貧って字が付属したレベルだったけど、まだあった……

 けど今は、今の私は言うなれば幼女のそれなわけですよ。


 そんな私にこれ見よがしに胸を押し付けるって……いいだろう、 受けてたってやる!

 そっちがそのつもりなら全面戦争じゃ!!


「取ってやる」


「はっ! ま、まさか…」


「その無駄にデカイ脂肪、むしり取ってやるっ!!」


 指を当てれば、むにゅぅっと沈み込む柔らかい胸を鷲掴みにする。


「あぅっ!」


 なんて弾力……小癪なぁ!!

 こうなれば捻り取るしか道はない。


「ひゃあん! んぅ…」


「このっ!」


「お嬢さ、あぅっん!!」


 もしかしてコイツ、ちょっと……と言うより普通に喜んでるんじゃ?

 声も何処となく熱を含んでる気がするし。

 まさか変態……!?


「はぁ、ん、お嬢様?」


「ふん……もういい」


「あぁ! そのツンデレな素っ気ない態度!!

 天真爛漫なお嬢様も良かったですが、そんなお嬢様も愛らしいっ!!」


 コイツにこんな一面があったなんて……いやまぁ、以前からその片鱗はあった様な気がしないでもないけど。

 まぁいいや、あの憎っくき巨乳も今はどうでもいい……そんな事はよりも今はただ……


「シルヴィア……」


「はい、何でしょうか?」


 目の前のメイドこと。

 前世から……公爵令嬢だった頃からの私の専属メイドである、シルヴィアに抱き付いて暖かく落ち着く匂いに包まれて目を閉じる。


「ふふ、やっぱり、お嬢様は甘えん坊さんですね」


「今日は疲れたから、もう寝る」


 優しく頭を撫でられながら、意識を手放した。

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