第10話 また土に埋まった
『さぁ、まずは腕を片方前に突き出して』
邪神の指示に従うのは癪だが……やり方知らないし、仕方ない。
これも全ては今日の! そして明日以降の安眠のためっ!!
「ん」
『そうそう、良い感じだよ。
それで次は、ダンジョンマスター権限発動! って叫ぶんだ!』
「ダンジョンマスター権限発動!」
おぉ! なんか半透明なプレートみたいなのが出てきたっ!!
ステータスプレートがないのに、何でこんなのはあるの? って思わなくもないけど、不覚にもちょっとテンション上がって興奮するわ!
『とまぁ、今回は声に出してもらったけど、実際にはダンジョンにちょっと意識を集中すればそれで問題ないよ』
なん、だと……?
つまりは何ですか? 本当はする必要もないのに、あんな恥ずかしい事をさせられたと……マジでウザい。
「死ね」
『あはは、まぁそう怒らない、怒らない。
右手を突き出して、ダンジョンマスター権限発動! って言ってる悪魔ちゃん、微笑ましくて結構可愛かったよ?』
この邪神、本当に死ねばいいのに。
と言うか邪神なんだから、滅んだ方が世界のためになるのでは?
ヤバイ、閃いてしまった。
これはいつの日か、責任を持って実行せねば!
『怖い事考えるね……まぁ細かい事はいいとして、眷属召喚って念じてごらん』
「チッ」
絶対にいつか泣かせてやる……おぉ! なんかゲームのガチャ画面みたいのになった。
選択肢は3つ。
1つは眷属召喚、もう1つは魔物創造、そして最後の1つがギフト版・眷属召喚か。
ふむふむ、なるほど。
眷属召喚・魔物創造共に魔力とダンジョンポイント、略してDPが必要になる訳か。
魔力は当然ダンジョンマスターたる私の魔力、DPはラノベとかでよく見るのと一緒の感じだな。
まっ、細かい確認は後でやるとして! 今は……
「ほい、ポチッと」
おぉ、なんかダンジョンコアが眩く輝き出した。
ふっ、さっきは突然の事で取り乱したけど、もうこの程度で取り乱す私ではない!
何故なら、この光は安眠への光明なのだからっ!!
とは言え、邪神曰く召喚されるSSR以上の眷属は、あのエルダーリッチに勝てる程の存在。
お前を主とは認めない! 的な展開になっちゃったりして……ヤバイ、ちょっと不安になって来た!!
眷属に後ろからグサっと、やられたりしないよね!?
『……』
いや、何とか言えやクソ邪神っ!!
ちょっ、嘘だよね? そんな事ないよねぇ!?
あぁ、もう召喚されそうじゃんっ!!
ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ! これってマジでヤバイやつなのでは!?
不安と焦りが募ってるっていうのに、私の不安と焦りなんてまるで関係ないといわんばかりに!
ダンジョンコアが一際強く光り輝き……何かがもの凄いスピードで外に出て行った。
「……え?」
どういう事ですか?
もうダンジョンコアは光ってないし、召喚が完了した事は間違いない。
でも……召喚されたハズの眷属が、出て行っちゃったんですけど。
えっと……この場合はどうすれば良いのかな?
いやまぁ、懸念してたお前を主人とは認めないって、感じの展開にはなってないけど……とりあえず、邪神にキレていいかな?
だって、確かに懸念した展開は回避されて、無事に眷属は召喚されたけど! その眷属の姿すら見れてないし!!
これでキレずして、いつキレるっ!!
うん、私には邪神に対してキレる正当な権利がある。
『まぁまぁ、落ち着いて。
眷属召喚はしっかりと成功してるからさ』
これの何処をどう見れば、成功とほざけるのか?
『とりあえず、外に出てみると良いよ』
チィッ、偉そうに指図しやがって! 邪神のくせにっ!!
『とか言いつつ、しっかり外に出るんだから案外可愛げがあるよね、キミ』
この邪神、本当にいつか絶対ぶん殴って泣かせてやる。
そもそも、外に出たってここ周辺には何も……
ズドォォォオン!!!!
うわー綺麗だなぁ……って何これ?
かなり遠いけど、私の推測があってればアレって雷だよね?
それも、横幅が数百メートルはあろうかという、ちょっと地球では考えられない程の超特大サイズ……
「いやー、凄いなー、この世界の、イジョウキショウ……」
いやまぁ、あんなの今と同じ世界のはずの、前世でも見た事ないけど。
「って、ん?」
何だろう?
この感じ、真上? 真上に何か変な感じがするんですけど。
「うん、曇天だ」
見事なまでの黒い雲しか見えない。
まぁあんな異常気象がまかり通ってる世界……と言うより大陸だしね。
私も色々と疲れてるって訳か。
あっ、ほら、何か黒い点みたいなのが見えるし……え?
「…じ……ぁ!!」
ま、まさかね。
幻覚見るほど疲れてるのかな?
まぁ確かに今日一日で殺されて、転生して、エルダーリッチに追いかけられてって……うん、幻覚見るのも頷けるわ。
よし、今回の謝礼って事で、邪神に最高級の寝具をたかって寝ると……
「おじょ…ま! ごぶ……か!? 」
やっぱり幻覚じゃないっ! アレ人じゃん!?
ん? よく見るとメイド服を着た金髪の……って、物凄いスピードで、こっちに向かって落下してくるんですけど!?
「お嬢様ぁー!!」
うん、まぁとりあえず……避けるか。
だってこのまま落下されると私に直撃するコースだし、直撃されたら多分と言うか確実に私死ぬし。
という訳で、大股で右に一歩。
その直後……
ズドォォン!!
わースゴイなー。
ぐへっ!
いや、まぁ一歩避けたぐらいじゃあ、そりゃ吹き飛ばされるよ。
てか、また土に埋まったんですけど……
「はっ!?
お嬢様どちらに!」
出来上がった見事なクレーターの中央で、メイド服のスカートを揺らしながらキョロキョロと周囲を見渡してるけど。
まさか、お嬢様って私のことじゃないよね?
「お嬢……」
「あっ」
マズイぞ、目が合ってしまった。
うーん、よし! とりあえず視線を逸らしておこう。
そしたらどっか行ってくれるかもしれないし……
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