第5話 振り返ったら、骸骨がいた

 しかし、これからどうすれば良いんだろう?

 ノアールやクソ聖女達に復讐するにしても、まずこの場所がどこなのかも。

 私がいた世界と、同じ世界なのかすらわからない。

 とりあえず、現状でわかってる事といえば……


 ・私は嵌められて殺された。


 ・2度目の転生を果たした。


 ・この場所が何処なのかは不明。


 わかる情報少な……

 てか、結局わかってるのって、私が殺されて転生したって事だけじゃん。


「そもそも、自分の種族も不明……」


 って、そうだ! せっかく解析スキルをゲットしたんだから、私自身を解析すれば万事解決。

 私って冴えてるっ!!

 という訳で早速……


「解析!」


 おぉ、何やら頭の中に情報が浮かんでくる……




 最下級悪魔ベビーデーモン・幼体

 名前:なし




 うん、まぁ予想は出来たよ。

 だって一度目の転生時に泣き虫な女神様から貰った祝福は、心の底から願った事を一度だけ叶えるってもの。


 そんでもって処刑される直前〝悪魔になっても〟って心から叫んだわけだし。

 まぁ、喉が潰されてたから声は出なかったけど……


 だからこの際、悪魔とか、名前がないとかは、とりあえず置いておくとして。

 ただ1つ言いたいのは……クオリティー低くね?


 前世の世界にもあったスキルとかと同じで、この世界のスキルも使い続ければマシになって行くかもしれないけど。

 それにしても情報が種族と名前だけって、それはないでしょう!


 てか私、転生者ボーナス消費してまで、この解析スキルを獲得したんだよ?

 それがこの程度ってどうなの? ナメてるんですか?


「はぁ」


 なんか悪魔に転生して、まだ10分も経ってないのに溜息ばっかしてる気がする。

 まぁ、解析の事は長〜い目で見るとして。


 名前が無いのは不便だよなぁ……でも転生した影響か、前世と前前世の名前は覚えてないし。

 まぁ後々考えれば良いかな。


 てか、やっぱり悪魔って、殆どの異世界ファンタジーみたいに魔物設定なのかな?

 う〜ん、わからん。


「さて……」


 とりあえず、これからどうしよう?

 結局、わかっているのは悪魔に転生して、地球で生きていた時の記憶を思い出したって事だけ。

 そんな現状で、思いつく選択肢は2つ。


 選択肢その1! この洞窟に光が差し込む穴、つまりは洞窟の入り口から外に出る。

 選択肢その2! この洞窟の中央に、台座と共に設置されている球体を調べる。


「……外を調べるか」


 こんなの実質、選択肢1つしかないじゃん!

 あんな、いかにも罠って雰囲気満載な球体……普通は触らないわ!

 という訳で! 生まれて初めてのお外へ、レッツゴー!!


「……」


 いや、まぁ薄々はわかってたよ?

 こんな洞窟が街中にあるわけないって事はさ……でも、でもさぁ……


「これは流石にないでしょ……」


 目の前に広がる暗く、厚い雲に覆われた空。

 荒れ果てて荒廃した荒野。

 所々に爆弾でも爆発したようなクレーターもあるし、まるで戦争でもあった跡地のようなこの光景。


 何この光景? いきなりこんな場所スタートとか、流石にちょっとどうかと思う。

 遠くに森らしき物が見える事だけが、唯一の救いかな?


 深窓の御令嬢だった私がこんな場所に転生って、既に若干詰んでる気がしなくもないけど……とりあえず森を目指す以外の選択肢が無い。

 歩きながら、自分の名前でも考えるか。


 と言うか、口調とか性格も殺される前とかなり変貌しちゃってる気がする。

 まぁ、あんな仕打ちを受けて殺されたら無理もない気もするけど……やっぱり地球の記憶と、悪魔になった事が原因なのかな?


「それにしても、名前すらないとか、どんなハードモード……」


「ふむ」


「っ!?」


 ため息と共に吐き出した独り言に、返ってくるはずのない返事が唐突に背後から返ってきた。

 え!? もしかして今の独り言聞かれてた?

 ヤバイ! 何かめっちゃ恥ずかしい!! だからかは、わからないけど……


「なぜ貴様のような矮小な存在が、この場にいるのだ?」


 何か全身の震えが止まらないんですけど。

 そう、まるで生まれたての子鹿のように!

 深呼吸だ私! ゆっくりと、ゆっくりと振り返るんだ……うん、悲鳴を上げなかった自分を褒めてあげたい。


 漆黒の衣を纏い、ぽっかりと空いた眼窩に浮かぶ赤い光。

 私を見下すように空中に浮かんでいる……骸骨。

 深窓の御令嬢なら悲鳴あげて気絶するわ!


  いやそれ以前に地球の記憶があろうと、こんなホラーなら気絶してもおかしくない。

 やっぱり色々と、悪魔になった影響が強い気がしてきた。

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