2章 旅の相棒
2-1
旅立ちの日、リュカは自宅まで見送りに来てくれた。
「お前さんには、生きる術を可能な限り教えた。あとはお前次第だ」
「ありがとう、色々と教えてくれて」
礼を言うと、リュカは笑みを浮かべた。
「このオレが鍛えたんだ。そう簡単にくたばるんじゃねえぞ」
「大丈夫、そんなつもりはないよ」
「なら言うことはない。ここから先はお前さん自身の冒険だ。行ってこい!」
「うん、行ってきます!」
リュカと力強く握手を交わし、自分は新たな一歩を踏み出した。
冒険の旅がついに始まった。
リズの想いを引き継ぎ、「始まりの異界」を探す旅への挑戦が始まる。
目的地のヒントは何一つないが、不思議と心は高揚している。足取りもどんどん軽くなる。
「異界の笛」の謎、そして「始まりの異界」を探すこと。それも重要だが、まずは両親を探してみようと思う。
この世界に両親がいる可能性が出てきたのだ。
リュカからの話では、江戸川町だけでなく東京の他の地域もこの異界に巻き込まれたという。
もし両親の働いている場所が巻き込まれていれば、どこかにいる可能性がある。
とはいえ、この世界では場所の繋がりが異なるため、手がかりは少ない。
旅の途中で情報を集めつつ探していくしかないだろう。
両親のことを考えながら、一歩、また一歩と平原を進む。
しかし、本当に自分は別世界にいるのだと実感する。
江戸川町を出ると、目の前にはどこまでも続く広大な平原が広がっていた。
自分の世界にはなかった景色だ。この平原も別の世界の一部が組み合わさってできたのだろう。
リュカが独自に調べた地図を広げると、「エドガー平原」と書いてある。
江戸川町の近くだから「エドガー平原」と名付けたのかもしれない。
地図を広げた目的は、次の行き先を決めることだ。
「おっと、水江もこの異界に巻き込まれているみたいだな……」
水江は江戸川町の最寄り駅がある街だ。どうやら水江の街も異界化しているらしい。
「よし、まずは水江を目指してみよう」
知っている街なら、誰か知人がいるかもしれない。
少し浅はかな考えかもしれないが、まずは情報が欲しい。
この異界に巻き込まれた街が他にもどれだけあるのか、それを知ることで今後の目的地も定めやすくなる。
地図によれば、水江の街まで数キロは歩かなければならないようだ。
エドガー平原は想像以上に広い。歩く足音が、どこまでも続く青空に吸い込まれるようだった。
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