1-8
リズは再び男に向かって攻撃を仕掛けた。
自分も手持ちの拳銃を男に向けて発砲する。
勢いで引き金を引いてしまったが、この拳銃は自分と相性がいいらしい。まるで以前から使い慣れている武器のように、自然に扱えている。
そういえば、ジョブを手に入れた時に「本人に適性のある武器が現れる」と聞いた気がする。これがその適性というわけか。これなら、自分も戦えるかもしれない。もっとも、こんな形で初めての実戦を迎えることになるとは思わなかったが。
「おや、まさか貴方も攻撃してくるとは。レベルIだから傍観者だと思っていましたが。」
「自分でも驚いてるよ。まさかこんな行動を取るなんてね。でも、何もしないよりはマシだと思っただけさ。」
普段の自分なら、こんな積極的な行動はあり得なかった。子供の頃から前に出るタイプではなく、どちらかといえば控えめな性格だったからだ。
だが、今になってようやく気づいた。もっと色々なことに積極的に取り組んでいれば、こんな自分でも変わっていけたのかもしれない。遅すぎる気づきではあるが、今ここで行動することに意味があるはずだ。
「だが、残念なことに経験が足りないですね。」
男がこちらに向かって魔法を放ってくる。
「うわっ・・・!」
反射的に身をすくめた瞬間、ジュンの手元から小さく透明なシールドが現れた。そのシールドが、男の魔法攻撃を見事に防ぐ。
「ん?」
男は攻撃を防がれたことに驚いているようだ。しかし、それ以上に驚いているのは自分だった。どうやって防いだのか、自分自身よく分からない。
「これは驚きましたね。まさか魔法攻撃を防ぐとは。将来、脅威になり得る存在かもしれません。今のうちに潰しておくのが良さそうですね。」
男がさらに攻撃を放とうと構える。
さっきのように防げればいいが、それができる保証はない。逃げ出そうと考えたが、来た道は一本道で簡単に狙われてしまう。
(これは・・・)
状況を打破する方法が見つからない。このままだと待っているのは“死”だけかもしれない。
諦めかけたその瞬間、リズが男に向かって強力な火の魔法を放った。
「がはっ・・・!」
男が大きなダメージを受け、苦しそうに膝をつく。
「私から目を外してくれてありがとう。そのおかげで、さっきより強力な魔法を放てたわ。」
「この威力・・・まさか通常魔法の上位――火の魔法だと!?」
「わずかでもジュンに気を取られたのが失敗ね。上位魔法は詠唱に時間がかかるけど、その隙を与えてくれたのはあなた自身よ。」
「き、貴様・・・!」
男の言葉遣いが荒々しく変わる。
「ただの小娘と、戦いの経験もない若造に負けるなど、あり得ない・・・!どうやらお前たちには手加減する必要はなさそうだな。」
「ジュン!」
リズが咄嗟に防御魔法を張り、自分を守ってくれる。
「リズ!」
だが、その代償として、リズ自身の防御が間に合わなかったらしい。
「だ、大丈夫よ・・・。」
「なんで庇ったんだ!君の方が奴を倒せる可能性は高いのに!」
「違うわ、ジュン。勝てる可能性が高いのは、あなたの方よ。さっき、あの魔法を防いだ時、思ったの。あなたにはそれだけの素質があるって。」
「お喋りはそこまでだ。」
男――ギガロが、リズの背後に忍び寄る。
「これほどまでに追い詰められるとはな・・・。敬意を表して名乗っておこう。俺の名はギガロ。お前たちを葬る者だ。」
ギガロが攻撃の構えを取る。その視線は完全にリズに向けられている。
(このままじゃ、リズが殺される!)
ジュンは覚悟を決め、拳銃をギガロに向けて引き金を引く。
「やめろーっ!」
銃弾は真っ直ぐ飛び、ギガロの胸を撃ち抜いた。
「な・・・に・・・!?」
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