3人の夏祭り
「「本当にすいませんでした」」
俺と彩雪は結局雨乃の部屋で謝ることになっていた。
雨乃にさえ呆れられた表情を俺たちはされたうえで、この部屋に通された。ちなみに俺たち3人の母親もほぼ同じ時間にやってきた。何やっとんねん……
「……はぁ。『すいませんでした』って何のこと?」
「えっと、俺たちが仕事の事を隠していた事とか……?」
「『とか』? 他にも隠していることがあるの?」
「そ、そんなことありませんよ! いやマジで!」
いまの雨乃は下手なことを言うと危険すぎる。例えそれが本当だとしても嘘だったとしてもだ。
つまり、雨乃さんがブラックモードになったということだ。
「あ、雨乃? 私も本当に申し訳ないと思っているわ……」
そんな雨乃の目の前にして彩雪が話し始めた。
雨乃は俺を問い詰めようとしていたところを彩雪に止められ、彩雪の方の話を聞こうとし始めた。
「私は、私は何も持っていなかった。2人はいつも何かを持っていて、周りにはいろんな人がいた」
え? 俺の周りには誰もいないけど?
「まぁ…… 今はそうとは限らないかもしれないけど……」
おい彩雪。どうして俺の方を見るんだ。
それから彩雪は俺との時と同じ内容を話し始めた。
「そういうことだったんだ…… サユちゃんは意外と怖がりなところあるよねぇ~」
「私は本当にバカね…… 私たちのこの関係。それよりも大切なものは何もない。いまはそう思っているわ」
彩雪は本心からの言葉だったからなのか、瞳を少し潤わせながら言った。
その言葉と様子には雨乃も納得したらしい。雨乃は笑いながら彩雪を抱きしめた。絶景だな。あの間に挟まるなんてこと俺にはできないぞ。
それから2人は10分くらいの間だっただろうか。抱きしめ合いながらお互いを慰め合っていた。
普段から一緒に居るがゆえに、この数日間のケンカは辛かったのだろう。つまり10分の間放置されていた俺は別にいなくとも問題はないということですか…… 自分で言って悲しくなってきたわ。
そんなことを考えていたら、2人の話は終わったようだ。そうすると2人の矛先は俺に向いたようだ。
あれ? 俺の敵増えていないか……?
「さて、ハルちゃん。話を聞かせてもらうよ」
「お、おっす……」
終わったわ、俺。
それから俺は、雨乃にというよりかは2人に俺が作曲家を始めた経緯を話した。もちろん彩雪に話したのと同じ内容だ。そうだというのに、どうして彩雪まで真剣に聞いているんだろうか。
今は普通に考えているように見える俺だが、内心は怯えていた。どうしてかは分からないが雨乃はい俺に対してだけ厳しいところがある。
「……はぁ。なんか2人ともあれだね。バカだね」
「「っ……!」」
「ん? どうしたの2人とも?」
「お前には言われたくはないよ」
「本当にそうね」
「2人とも酷いなー!」
俺たちは雨乃の言う通りバカだったのかもしれない。俺たち3人は幼馴染だった。そして今も、これからもその関係は変わらない。だというのに、一生続くであろう関係を俺と彩雪は疑ってしまっていた。
そんな中でも雨乃だけはこの関係の事を信じ続けていた。
本当に俺の幼馴染には叶わないな。
「よっしゃ! 2人とも行くよ!」
「そうね。今なら花火にも間に合うわね」
「は? 今から行くの嫌なんだけど。普通に疲れた」
俺の言葉を聞いた2人は顔を見合わせて笑い合った。それから同時に立ち上がり俺の腕をつかんで同時にこう言った。
「「あの場所に行くよ!」」
あの人気声優は幼馴染だった 涼野 りょう @Ryo_Suzuno
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