3人でソフトクリーム
今日は天気も良く絶好のキャンプ日和だ。俺たち3家族、合計9名は車で移動している最中だ。
俺の乗っている車には彩雪のお母さんであり、俺と雨乃が綾おばさんと呼ぶ冬和綾香さんが運転手で、彩雪と雨乃が乗っている。
そして残りに1台に残った4人が乗っている。親軍団いわく俺の父さんは人数に含まらないらしい。うん。まぁ、父さん頑張って……
「2人とも次のサービスエリアで休憩するからな~」
「ご飯買っていい!?」
「おう、勝手にしろ~」
「綾おばさん大好き!」
綾おばさんの休憩はあるとの一言に大げさな反応を見せたのは雨乃だ。雨乃は楽しそうだからという小学生顔負けの理由で助手席で騒いでいる。
綾おばさんもそれに悪乗りしていて2人して騒いでいるので残りの俺と彩雪がどんなに静かであろうとも車内は常にカオスな状態だ。
それにしても前の席の2人が眼福すぎるのだが…… 雨乃は言うまでもなく、綾おばさんもかなりスタイルが良いので学生時代からかなりモテているらしい。同じ遺伝子を持っているハズの彩雪。いったい何があったのだろうか……
それからサービスエリアについた俺たちは時間まで、とは言っても30分もいないが自由行動を取ることとなった。
「サユちゃん! あれ食べよ!」
車から降りるや否や雨乃は走るように建物に向かっていった。
それから食べたいものを見つけたようでその店、とは言っても露店なのだが雨乃はそこに向かって走り出した。
「ハルちゃんも行くよ!」
「俺も確定かよ……」
雨乃はそう言って露店、ソフトクリームを売っている店に俺の腕を引っ張って行く。
それから雨乃は店の前で何を買うのか迷いながら「あれも食べたいし…… これもいいかも……」と言っている。
「そうだ! みんなで分けて食べようよ! 私は……っとストロベリーにする!」
「それなら私はバニラにしようかしら……」
「俺は…… ス、スイカ? こんなのあんのか…… 俺は普通にチョコにしようかな……」
「分かった! 3人分頼んでくるね!」
雨乃はソフトクリーム屋さんの売り子の人に注文して、渡された商品を持ってくる。3人分同時にだ…… どうやって持ってんだ……?
「じゃあ、食べよっか! いただきまーす!」
「バニラ、美味しいわよ。雨乃も食べる?」
「食べる! う~ん! バニラも美味しいね! ハルちゃんのチョコもちょーだい!」
そう言われた俺は雨乃の口にアイスクリームを差し出す。そしてそれを雨乃が舐めた。
雨乃は彩雪のバニラを食べた時と同じように顔を綻ばせながら「おいしい!」という。
……あれ? いま俺は雨乃に『あーん』をしたのか!? この前は彩雪に対して物怖じしたというのに……
そんなことを考えていたら、彩雪の顔が俺の近くまで近づいていた。肩にかかった髪を手で押さえながら俺の持つチョコアイスクリームを舐めた。どうして彩雪も気にせず食べれるんだ……
結局俺1人だけしかアイスクリームのシェアは気にしていないようだった。そんなことをしていたら俺たちは彩おばさんに呼ばれてキャンプ場へと移動することになった。
「やっと着いたー!」
雨乃は車から降りて伸びながらそう言った。そうすると天乃の豊富な胸が強調されるので、どこに目をやればいいのか分からなくなる。
「よっし! とりあえず昼ご飯にするかー!」
彩おばさんの一声で親軍団は同時に動き出す。俺も貴重な男手であるので父さんが運転してきた車から荷物を取りに行く。
そこには1人だけサービスエリアに行くのを忘れていたため数時間も運転し続けた父さんの姿があった。父さんは親指でトランクを指しながら「持ってけ」とだけ言う。本当にお疲れさまです……
彩雪と雨乃がバーベキューで使うコンロの準備をするらしいので先にそれを持って行くことにしよう。
それから父親軍団とテントの設営に移ることにする。彩雪の為にもドラムセットを持って行くのはギリギリまで伸ばすことにしよう。
「それじゃあバーベキュー始めるよー!」
彩おばさんがバーベキューの開始の合図を出して肉や野菜が網の上に乗せられた。
すでにテントや机、椅子といったキャンプ用品は組み立てられている。焚火のような夜の準備まではさすがにされていないのだが…… それでもキャンプ特有の雰囲気は醸し出されている。
バーベキューが終わり、片付けも一通り終わった後。俺は彩雪と雨乃の3人で散策をしている。
このキャンプ場には散策やハイキング専用のコースがあり、その中には川といった水辺もあり家族連れにも人気がある、らしい。
「ハルちゃん! 川で泳ごう!」
「水着とか持ってきてないからパスで。っていうかお前はどうすんだよ……?」
「う~ん…… ハダカとか?」
「お願いだからやめなさい」
バカなことを口走る雨乃に彩雪が思わず素で返す。うん、俺の気持ちも代弁してくれてありがとう……
「え~ でもすっごく気持ちよさそうだよ? なんかもったいなくない?」
「何ももったいなく感じないけど…… でもそんなに言うなら足だけでも浸かっていきましょう」
彩雪の提案で雨乃がバカなことをしなくて済んだ。当の雨乃はただただ水に足を付ける事ができるということに喜んでいるようだった。
「冷たっ」
「ホントだー!」
冷たい川の水に思わず声を出した俺に何が面白かったのか雨乃は笑いながら返す。
雨乃は冷たい水に触れて笑っていたかと思うといきなりニヤリと笑いながら足を振り上げた。
「ちょっと!?」
悲鳴に似た疑問の声をあげたのは彩雪だ。彩雪を見ると黒色のロングスカートは水気を帯びていて、彩雪の足にピタリとくっついている。
「サユちゃーん! そーれ!」
それからしばらくの間俺たち、というよりかは雨乃の一方的な水をかける攻撃は続いた。それはそれは一方的で理不尽な攻撃だった。
もちろん俺もそれに巻き込まれた。彩雪の被害はロングスカートくらいなので大した問題はないだろう。それに比べて俺はどうして頭まで濡れているんですかね……? ね、雨乃さん。おかしくない……?
まぁ、これも毎年同じようなことが起こっているので特に何とも思わなくなってきたが……
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