冒険者登録

道中ワイバーンに遭遇するというハプニングがあったものの何とか冒険者登録が可能な隣の町にたどり着いた。僕は町に入ると冒険者ギルドの建物を探して歩き出したがその建物には剣が交差するマークの看板が掲げられており、他の建物よりも大きいためすぐに発見することができた。


「ここが冒険者ギルドかやっと冒険者になれるぞ!」


 ギルドの建物に入ると大勢の人達でごった返しており気後れをしてしまったが僕は受付を見つけると急いで行列にならぶ。


「ボウズ、見ない顔だな。今日この町についたのか?」


前に並んでいたとても怖い顔の冒険者さんが振り向く。


「はい、先ほど町に到着しました。」

「初仕事はうまくいったか?やけに荷物が少ないな。もしかしてお前こんな遅い時間帯に冒険者登録をするのか?」

「はい、僕の町には冒険者ギルドが無いので山を越えてこの町に来たので遅くなってしまいました。」

「そうか、なら疲れただろ。登録が終わったらすぐに休めよ。」

「ありがとうございます。あっ、前空いたみたいですよ」

「おお、じゃあお先」

「はい」


 顔が怖い冒険者の人と話をしていたおかげでいい暇つぶしになったし優しい人で良かった。前にいた人が終わり僕の番になった。


「冒険者ギルドにようこそ。受付のアリサと申します。ご用件は冒険者登録ですね」

「はい! でもなんで分かったんですか?」

「ふふ、だって貴方、さっき大きな声で話をしてたじゃない。バッチリ聞こえてたわよ。それでは登録を行いますね。」

「よ、よろしくお願いします。」

「ではこちらの書類に記入をお願いします」

「はい!」


 僕は差し出された書類に名前や年齢、出身地を書き込んでいき、アリサさんは受け取った書類を見ると満足そうにうなずく。


「確認しました。とてもきれいな字ですね。ギルド職員の募集はいつでもやってるから考えてみてください。」

「いえ、冒険者でお願いします!」

「ふふ、分かりました。でも引退した時にまた考えてくださいね。でも大怪我だけは気を付けてください。」


 僕は回復魔法が使えるから簡単に引退する事はないけど頭の隅にでも留めておこう。


「では次に実技試験を受けていただきます」

「実技って一体何をするんですか?」

「実力のある冒険者と実際に戦ってみて冒険者としてやっていけるのかを確認していもらいます。...あっエドガーさん、今お時間よろしいでしょうか。」

 

 後ろを振り向けば、30代くらいで髭は生えているものの、きちんとそろえられているので、不潔な感じはしない。また、何よりこの人の佇まいはこの建物に居る冒険者の中で一番芯が通った姿勢をしていた。一目でこの人が強いと分かる。


「アリサちゃんどうした。なるほど、このボウズの実技試験かそれくらいならいいぞ。」

「「「「「ええっ!?」」」」」


周囲に居る冒険者の人達も驚きの声をあげる。


「ありがとうございます。Aランクの冒険者であるエドガーさんなら安心して任せられます。」

「よろしくお願いしますエドガーさん!」

「おうおう、元気がいいねぇ。おじさんそういう元気な若者好きだよ。」

「ありがとうございます!あっ、そうだ。エドガーさん、試験の前に今日の宿代と食費が無いので魔物の素材の買取をお願いしてからでもいいですか?」

「いいぞ、町に来るまでに魔物でも狩ったのか?」

「はははっ、なるほどな。登録前に魔物を狩るなんて将来有望だな。試験をしている間に査定は終わるだろうから先にいいぞ。」


エドガーさんが優しい人でよかったー。

「ありがとうございます!アリサさん買取お願いします。」

「はい、買取ですね。ではこちらの買取台に素材を置いてください」

「はい!」


 僕は魔法の袋からワイバーンの頭を取り出して買取台の上に置くとミシッという音と共に買取台がきしむ。アリサさんはキョトンとした目になる。僕はそんなアリサさんに気付くことなく魔法の袋からワイバーンの体を取り出してギルドの床にそっと置く。


「このワイバーンの買取をお願いします!お待たせしました!それでは試験よろしくお願いします!!」

「ちょっとまった。このワイバーンは一人で狩ったのか?」

「はい、ワイバーンに人が襲われそうになってたので、気を取られている間に剣で首を真っ二つに切断しました!」

「そっかー」


 なぜかエドガーさんは遠い目をしていおり引きつった笑顔で、なんだか汗をかいてるみたいだ。


「では試験をお願いします。」

「ボウズ...」

「はい!」

「合格だ。自力で魔物を倒せる君に試験をする必要などなし! 合格! 超合格! おめでとう新人冒険者君!」

「えーっと、アリサさん、合格との事ですが、これで良いんですか?」

「そ、そうですね。試験官が合格を出したので合格で良いのではないでしょうか?」

「……やったぁぁぁぁぁ!!」


 無事冒険者になった僕は、ワイバーンの買取鑑定が終わるまでの間に残りの冒険者登録を終えた。アリサさんの説明によると冒険者ギルドの登録カードは依頼を受ける際と達成した場合に窓口でこのカードを提示するそうだ。冒険者は最初Fランクから始まり、実績を積むことでランクが上がって仕事の種類が増えるそうだ。説明が終了したので買取金額を聞いてみるとなぜかアリサさんは申し訳なさそうな目で僕を見つめて言った。


「実はウチではこのワイバーンを買い取る事が出来ないんです!!」

「ど、どういうことですか!?」

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