転生と旅立ち

「バ、バブ?(あれ、前世の記憶があるな。)」


とある農民の家に生まれた赤ん坊のマルクだがなぜか自我を持ってた。天寿を全うした私いや僕は生まれ変わった。しかし、あの創造神は転生すると記憶が消えると言っていたもののなぜか地球にいたころの記憶があることに気が付いた。二度目の人生をどう生きるかを僕は母親の腕の中で考えていた。


「バブァ(今度はあのゲームみたいにワクワクするような人生にするぞ。)」


小さな拳を握り締め、僕は決意を胸に秘める。


「バブー!(そして僕は冒険者になるんだ!)」


 冒険者、それは平凡な人生だった僕にとって憧れで何もかも自己責任な存在なのだ。

 

時は流れて僕はこの世界で成人とみなされる15歳になった。大抵は親の仕事を継ぐが、僕は町を出て憧れの冒険者を志すことにした。


「父さん母さん、行ってきます。今までありがとうございました。」

僕は今日まで自分を育ててくれた両親に別れの挨拶を告げる。


「ああ、行ってこい。辛くなったらいつでも帰ってきていいからな。おまえは私達の誇りだ。」

「そうよ。帰ってきたらマルクの好物を作るわね。」


 まだ僕が小さい頃から冒険者になると公言しており、父さんの知り合いと一緒に魔物狩りを手伝っていたので両親は僕が冒険者になる事を反対したりはしなかった。この村の住民達にも僕の旅立ちを祝福してくれ、その声を背に僕は意気揚々と村を出るのだった。


一般的な成人でも走っても半日といった所に一番近い町がある。僕は両足に魔力を練りこみ地面を勢い良く蹴り走り出した。瞬く間に山を二つ越え、その先にある町の姿を確認するが町まであと数分という所で魔物を発見した。


「あれはワイバーンか。ドラゴンの中では亜種だけどこれからの生活費にちょうど良いよね。」


 通常の新人が狩るのは不可能ではあるが、ワイバーンくらいで丁度良いと思うくらいにはマルクは強かった。僕は村にいる鍛冶師の人と作ったブロードソードを抜刀して構える。見た目はただのブロードソードのため誰もその真価には気付けないがぶっ飛んだ性能をしており、永続エンチャント魔法で耐久性、耐腐食性、切れ味、各種属性付与、不死殺しと様々な効果を付けているから、ワイバーン程度なら楽勝だ。


 僕は飛行魔法で自分の体を浮かせた後ワイバーンに矢よりも速い速度で突撃する。地上から迫り来る僕の姿にワイバーンは未だ気付かない。人間が地上から襲ってくるなんて考えもしていないんだろうな。ワイバーンは何か別のことに気をとられてるが僕はワイバーンの視界の外から切りかかる。ワイバーンが僕の存在に気付がその時には遅すぎ、既に僕の剣はワイバーンの首を真っ二つに切り裂いていた。


「おっと、収納しないと。」


 僕は懐から魔法で空間を拡張して、見た目よりもはるかに大量に荷物が入る小さな袋を取り出すとその中にワイバーンの頭を放り込む。大きなワイバーンの頭が手のひらほどの大きさしかない袋の中にするりと入る。


「こっちも入れないと。」


 ついで5m以上あるワイバーンの巨体もするりと魔法の袋に入った。


「よし、討伐完了! それじゃあ暗くなる前に行きますか!」


 僕は早く冒険者ギルドにいって冒険者登録をしたいと思い再び両足に魔力を練りこみ走り出そうとしたその時、ワイバーンが気を取られていた人物から声をかけられたのでこけそうになった。


「待ってくれ!!助けてくれた君にお礼をしたいのだが。」


 彼の話では旅の最中に運悪くワイバーンに襲われた。空を飛べない人間にとって強敵という言葉すら生ぬるい恐ろしい魔物だ。同行していた馬車の中にいるあるお方を先に行かせ、隊長である私を残してすべての部下を馬車の護衛につけた。


「こっちだ!」


 私は決死の覚悟でワイバーンの意識を自分の馬に向かせ、私が足止めをする。そう思った時だった。突然見た事もない少年が現れ単身で戦おうしていることが分かり、無謀なことを止めようとしたその時にはすでに終わっていたそうだ。


「お礼だなんて僕は今後のお金のために倒しただけですから。それに、横取りすることになってしまいましたから。申し訳ありませんが先を急いでいるので失礼します。」


そう返事をすると再び魔力を練りその場から走り出し一瞬でその場を離れた。目の前で起こったことに呆然としていた彼は我に返った。


「一体何者だったのだあの少年は、それに姫様はご無事だろうか。」

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