転生した少年がSランク冒険者になる方法 ~前世が平凡だったボクは来世では自由に生きる~

須藤 レイジ

神との遭遇

まだ、身体を動かすことができる頃、孫が一緒にゲームをしたいとネットゲームを薦めてきた。始めたころは慣れない操作に四苦八苦していたものの丁寧に教えてもらううちに上達した。ゲームの中では職業を選択することができ、私は[賢者]を選択した。このゲーム内で賢者は初心者向けの職業として有名だった。


このゲームは5年以上運営されているが、未だにラスボスを倒せていない。ラスボスに限らず、レイドボスと呼ばれるモンスターは数千人規模のパーティでなければ討伐できないと言われている。


3千人のプレイヤーが集まってラスボスに挑戦してやっとの思いで倒すことができた。その時、私の攻撃が止めとなりラストアタックボーナスを貰えた。

 『邪龍 アトラスは倒されました。ラストアタックボーナス[異世界転生特典]を獲得しました。』


物心ついてからこれまで90年生きて来たが何かの事故に遭うことも、事件に巻き込まれることもなく、また、大きな事を成し遂げることもなかった。普通に就職して料理が得意な奥さんと結婚して子供、孫まで抱くことができた。長く使い続けてきて動かなくなった身体が今、心臓も停止しようとしていた。


「お父さん…、今まで長い間お疲れ様。」

「………じいちゃん。まだたくさん話したいし、一緒にゲームもしたいよ。」

「お義父さん、本当の娘みたいに接してくれてありがとうございました。」


(あぁ、もし次の人生があるのなら孫と一緒にやったゲームみたいなワクワクする冒険に満ちた生活というのもしてみたい。そういえば、あの特典は…なんだっ…たの…か……な)

私は薄れ行く意識の中、そんなことを思った。


 気が付くどこまでも真っ白で何もない空間が広がっていた。ここが何処なのか見渡していると、いきなり背後から声を掛けられた。

「君が山本 正勝じゃな。」


振り返るとそこには腰の位置まで白い髭を伸ばしたおじいさんが立っていた。

「はい。山本 正勝は私ですが、えっと...どこかでお会いしたことありましたっけ?」

「いや、初めてじゃよ。実は君がやっていたゲームを創ったのはわしなのじゃが、まさか倒されるとは思わなくて適当な特典を付けたのじゃ。」

「なるほど。そういえば、あなたはどなたですか?」

「わしはいろんな世界を創ってはそこを観察するのが趣味のただの創造神じゃよ。あっ、ちなみに地球もわしが46億年前になんとなく造ってみたのじゃ。」

「な、なんとなくですか?」

「うむ。造った当初は地球の近くに様々な惑星があったのじゃが、創りすぎてしまっての。邪魔になったから地球でいうビリヤードみたいに惑星同士をぶつけたらうまい具合に太陽の周りをぐるぐる回り始めたからそのままにしてみたのじゃ。」


この神様は遊び感覚で世界を創っては他の神にこっぴどく怒られるがすぐ忘れてまい、造っては壊してを繰り返していた。そんな創造神が地球を46億年もの間、壊さず観察してきたのは奇跡といても過言ではない。


「遅くなってしまったが、正勝くんには特別に転生をプレゼントするのじゃが。すまんが転生したら記憶をリセットする必要があるからの。」

「地球で生まれ変わることはできますか?」

「地球に関しては数億年この空間で待って順番が来れば可能じゃよ。じゃが、異世界ならすぐに可能じゃ。」

「分かりました、では異世界に転生をお願いします。ちなみに魔法が使える世界はありますか?」

「あるぞ。ステータスというものがあるのじゃが、お詫びとして努力しだいで一般人より強くなれるようにしおくからの。じゃあそろそろ転生を始めようかの。」


すると、いきなり魔法陣が広がったと思ったら足元に真っ黒な穴が開き内臓が浮き上がるような感覚があり、足元が何も無くなったことにより身体が落下し始めた。正勝の体が完全に穴の中へと消えて行き、黒い穴も無くなった。しかし、通常は魔法陣が発光するだけで異世界へと転生することが可能なのだが、白い空間で一人になった創造神は久々すぎてそのことを完全に忘れていた。


「今回のことが皆にばれないうちに戻ろうかの。そういえば、魔物について説明してない気が...まっよいか。」


 創造神が即席で造り上げたこの白い空間を立ち去ると崩壊を始めた。創造神は適当な設定で正勝を転生させていたことで前世の記憶を持つ状態で産まれることになる。いつそのことに気が付くは神のみ、いやこの創造神のみぞ知る。

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