人狼ジャッジメント
@zero421
第1話 山か海か
「絶対山の方がいい」
「いいや絶対海だろ」
「おい!ロディ、お前はどっちにしたい? 海だろ?」
「いいや、ロデ君は山の方が好きだよね?」
二人の男が家の一室で喧騒な争いをしている中、余所目にしている少年がいた。
少年の名はロディ。 友達との計画決めに参加せずに、癖毛の金髪を触りながらテレビを見ていた。
山か、海か……
山は心癒される自然の緑が魅力的で、登山するなら登頂した時の達成も良いよなぁ。
海もビーチと全身を包み込んでくる海の水がたまらないよなぁ
「ッ!なにボーっとテレビ見てんだよ。せっかくの夏休みなんだから海いくんだろ?」
男はいつもの吊り目が一段と吊り上がって、ロディに迫る。
「だから、ロデ君は山だよ」
またもう一人も勧誘の追撃を忘れずに、つぶらな瞳をこちらに向け、迫ってくる。
そして、ロディが迫りくる二人から後ずさりながらだした結論は……
「どっちでもいいよ」
ロディは一番言われたらいやな言葉ランキング1位になりそうな言葉を
最適解のように口に出した。
「全くお前はいっつもそうだよな……」
「ほんと……今回は決めてくれないと困るよ」
二人が当然のように不満げにつぶやく。ロディは自分なりに考えに考え抜いた結果、一つのアイデアを思いつく。
「――コイントスで決めるのはどうかな」
ロディは自分が選択することを毛嫌いし、全てをコインに委ねることにした。
「おい!そんなもので決めて俺が納得すると思うか」
「僕はいいと思うけどね。そういうのには自信あるから」
「なんだよ。ただの運じゃねえかよ」
「あれえ。マイク君は自信ないのかな?まあ、僕にそれで勝てないから嫌がるのはわかるよ」
「あん?俺がフランクに怖気づいてるって?いいよやってやるよ」
「エリザベス女王の面なら山、植物の面なら海でいいね」
「おう、ぜってえ負けねえよ」
フランクの挑発にあっけなく乗ったマイクは財布から1ポンド硬貨を取り出し、ロディに手渡した。
「ほれ、ロディがやれよな」
「わかってるって」
ロディは少し捻れば折れてしまいそうな細く綺麗な手の人差し指に硬貨を乗せる。
それに親指を重ねて弾く態勢を取る。ロディはエリザベス女王がこちらを見て、自分自身の選択をあざ笑っているかのように感じた。
「じゃあ、いくよ」
「おう」
ロディは自分の選択を決めてくれるコインに感謝しながら、親指に力を入れ、思い切り弾いた。重力に引きずられながら不規則に回転して落ちていくコインを見るとロディは自分の選択に不安を覚えた。――これでいいのだろうか
ロディの思惑を振り切るかのように落ちる。三人の視線を集めながらコインはフローリングに甲高い音を立てながら着地した。コインは引力の勢いで床上でダンスを踊り、回り続ける。まるで三人の運命をコイン自身が決めるかのように段々勢いを緩める。
「頼む、海になってくれ!」
「女王様、どうか顔を御見せになって!」
コインは遂に静止し、正体を現した……
人狼ジャッジメント @zero421
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