第5話 洗濯よ、大歓迎!
問答無用で彼女の着ている服を脱がす。頭も服も一度、石鹸などで洗われたので大丈夫な筈だ。
「ぎゃあ、強姦魔あああ!」
「ギャアギャア騒ぐな、ここは裸が礼儀なんだ。そもそも他人の肌がどれだけ汚いと思ってるんだ、触りたくもない!」
「ええー、綺麗にしてるもん! お風呂大好きだし。自慢の毛並みなのに……」
「毛がある時点でアウトだな。全て剃ってから出直してこい。とにかく、勝手についてきたんだから、流儀には従ってもらうぞ。リュイ、床に落ちている服を洗濯だ」
『カシコマリマシタ』
壁に向かって名を呼べば、不自然ながらも女性の声が返事をした。
「だ、誰?!」
「リュイはこのラボのAIだよ。人工知能だ。掃除から洗濯、空調管理に、監視までありとあらゆる雑事を請け負ってくれる。リュイとなら俺は結婚してもいい」
『アリガトウゴザイマス、ウレシイデス』
ユーモアもあって簡単な日常会話なら応じてくれる。時々話しかけてくださいと声をかけられるくらいには、気まぐれだ。
「この声の人って生きてるの? 姿が見えないけど」
「ロボットならあるが、機械っと……人形だからな。生きてるのとは違うかもな」
「なるほど、変わり者のオトナリさんだったか」
「うるさい、とにかく動くな」
二人分の体を洗い終えた頃に、シャワー室を出ればリュイが新しい着替えを用意してくれていた。下着にシャツにスラックス、ついでに白衣だ。
猫獣人の分もある。彼女のはスカートだ。
「あれ、私の装備は?」
「さっき洗濯に出したの聞いてただろ。今頃、リュイが洗ってる」
リュイはAIだが、別システムに動く自動ロボットとも繋がっていて、掃除や食料の補充をしてくれるのだ。
もちろん、洗濯機は業務用で、サイズ違いに十機備えられている。
きちんと服の材質に分けて、きちんと洗ってくれているだろう。
「え、カースシリーズを洗濯しちゃったの?!」
「なんだそりゃ。よくわからんが、今頃、すべての汚れが落ちてピカピカの新品仕様になってるだろ。なんだ、色落ちが心配なのか? 大丈夫だぞ、リュイは賢いから本来の服の色を損なわずに、汚れだけを落としてくれ――」
「五大竜の一、蒼炎のカースの血を塗り込めた自慢の一品、時価数千億タスの、特級装備品だよおおお!!!」
深刻な時ほど、にゃあって鳴かないんだな、とタカヨシは場違いなことを考えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます