第21話 モーツアルトを弾く女性たち(ピレシュ/へブラー/ハスキル/内田/クラウス)

 モーツアルトのピアノ演奏者にとりわけ女性が目立つというのは多くのクラッシック音楽愛好家が認めることであろう。

 ピアニスト全体でいえば(少なくとも著名なピアニストの累計では、最近こういう男女差の比較をするときはかなり気を遣うのだけど)男性が多いし、モーツアルトの曲といえどもオーボエ、クラリネット、フルートなどの管楽器、バイオリンやビオラなどの弦楽器では、やはり男性の演奏者の方が多い。いや、すいません統計を取ったわけではない・・・。


 モーツアルトのピアノに女流が目立つ理由はやはり男女間に存在する肉体的形質の差によるのだろう。モーツアルトの、とりわけピアノ独奏曲は女性にとって弾きやすい。もちろんモーツアルトにだって難曲もあるわけで、それはある程度物理的要素に依存する(例えば手の大きさ、力の強さ)けれど、他の作曲家たち(例えばベートーベンやブラームス、或いはドビュッシー以降の近代作曲家)に比べれば困難さの程度は低い。

 それとともにモーツアルトの曲では、寧ろ「妙な力」が掛らないところが透明性を上げるのに役立つ。モーツアルトのピアノにある程度の強さは必要だが「強力さ」は不要だ。それはモーツアルトがピアノソナタや協奏曲を宛てた先に女性が多いという事実からもある程度確かなことだと思う。(ソナタ7番、14番 協奏曲7番、8番など)ああ・・でもリストはロ短調のソナタをクララシューマンに宛てたのだよなぁ。快く受け入れられはしなかったけど・・・うん、理屈は抜きにして認めてください。モーツアルトは女性ピアニストを惹き付けるのだと。


 とはいえ女性のピアニストにとってモーツアルト弾き、と言われるのは複雑な心境を引き起こすことがあるかもしれない。その言葉が「モーツアルト以外はどうも・・・」という反語の意味を帯びていることも少なくないからである。だがそんなことはどうでもいい。そうは思いませんか?だって彼女は神から愛された作曲家・アマデウスを愛し続けている訳なのだから。

 それでも女性のピアニストたちはやっぱり浮気をしたりなんかする。時にはベートーベン、別の時にはショパンやシューベルト・・・。

 ふふふ。残念だね、ヨハンネス クリュズストムス ヴォルフガングス テオフィールス・・・。よく知られているとおり君にはアマデウスという名前は、実は「存在しない」し、必ずしもアマービリス(愛されるもの)でもないようだ。


マリオ ジョアン ピレシュ(MARIA-JOAO PIRES)

 モーツアルトを得意とする女流ピアニストの中でもっとも僕がよく聴いているのはピレシュ(以前はピリスと記載されていることがよくあった)だ。ポルトガル生れの見るからに小柄なこのピアニストの演奏はエラートに属していた頃から良く耳にしていた。飾らない、とても率直で楽譜に素直に向き合った演奏が心地よかったからだと思う。

 アルミン ジョルダンやテオドール グシュルバウアーのバックで演奏されたピアノ協奏曲はもっと評価されても良い演奏で、今なお輝きを放つ演奏だと思っている。とても素直で伸びやかで、外連味けれんみのないピアノであるし、オーケストラも邪魔をしていない。・・・そういえば共演者の一人であるグシュルバウアーも一時期、しばしば来日して客演した嘱望される指揮者の一人だったのだけど、いつのまにか噂を耳にしなくなったのには何か理由があるのだろうか?

 あまり聞いたことの無いリスボンの管弦楽団は時折急いて突っ込みが早く感じられることもあるが、小ぶりなりに心地の演奏を彼の指揮の下で聴かせてくれる。腕のある指揮者だけに余りリンツやストラスブールに移ってからと言うもの、少なくとも録音の世界で活躍の場がなかったのは残念なことだ。

 ピレシュその人は余り目立つピアニストではなかったけど、後にDENONでも録音を行い、更にグラモフォンに移ってからはロマン派の曲もよく録音するようになりいつの間にかピアノ界の第一人者に数えられるようになった。

 そんな彼女は、アバドと共演したモーツアルトの17番/21番でも相も変わらず小気味の良い飾らないタッチの演奏スタイルのままで好感が持てる。


 彼女は何度かモーツアルトのソナタの録音をしていて、僕が所有しているのは1970年代DENONレーベルから発売された東京イイノホールでの録音の全集である。DENONのデジタル録音技術は今なお優れたものだとつくづく思わせる、クリアな臨場感溢れるもので彼女の演奏を際立たせている。

 ピレシュの魅力は細かい指の動きが切れよく、それでいながら強弱の表情が豊かでいかにもモーツアルトらしい、「繊細でありながら豊穣」な音楽を聞かせてくれることにある。その繊細さを捉えるためには録音の善し悪しは結構重要である。

 とりわけ長調の調性ではバックにチャーミングな妖精が踊るような演奏を聞かせてくれるので、聞く度に気持ちが新鮮になる。KV330(10番)など伸びやかで素敵な演奏であるし、KV 511のロンドなど冒頭から心を惹き付ける音色である。ピレシュの弾く長調の曲、取り分けハ長調の曲は本当に良い。(KV 279, KV309, KV330, KV545)

 ピレシュに関してはベートーベンのソナタの一枚とショパンの協奏曲(2番)にプレリュードを加えた一枚、モーツアルト以外の演奏を計二枚持っている(というか「しか」もっていないけどここに記した他の女流ピアニストはモーツアルト以外は持っていないので勘弁して欲しい)。ベートーベンに関しては別の項(ホロビッツの「月光」の演奏に関して)にも書いたのだが、この時代のピレシュにベートーベンのソナタはまだしっくりとこない。

 グラモフォンに移ってからは旦那さんとバイオリンソナタと協奏曲の録音をしたようである。ピアノソナタの録音から20年以上経った2002年の録音という事だからそれなりに期するものがあったのであろう。残念ながらまだ聴いていないが、恐らくずっと良い演奏になっているに違いあるまい。敢てピアノソナタを避けたというのも彼女の賢さの結果のように思える。(もし彼女があえてベートーベンのピアノソナタを演奏するならば「田園」とか「テンペスト」の方が似合うのではないかと個人的には感じていた)

 ちなみに協奏曲は3番を録音しているらしいが、彼女の選択なら1番か4番だと思っていただけにちょっと意外である。あえてハ短調を選んだのはどうしてなのだろう?先ず取りあえず機会があればバイオリンソナタの方から聴いてみることにしたい。ハ短調のコンチェルトはリヒテルのようなピアニストが似合うからなぁ。


 もう一枚、1994年録音のショパンに関して言えば、これは掛け値なしに名演奏である。

 協奏曲はのっけからオーケストラが素晴らしい。余りショパンの協奏曲でオーケストラ パートを褒めることは無いが、さすが才人と呼ばれるプレヴィンである。(オーケストラはロイヤルフィル、ビーチャム亡き後余り耳にしなくなったが実力は健在のようだ)この一事だけでも耳にする価値があるが、ピアノもまた素晴らしい。

 ピレシュのショパンはポリーニのように聴き手に情景を想像させたり、ホロビッツのように弾き手に引き込むようなタイプの演奏ではなく、ごくごく自然な情感に溢れた演奏である意味もっともショパンそのものを堪能できる演奏である。前奏曲集もとても良い。本当にショパンを聴きたいという人には間違えなくお勧めの一枚だ。(料理的には素材のうまさを活かした、という表現になる)録音されたが発売に至らなかったという1番も最近リリースされたらしいけれど、かなり気になる。

 

イングリッド へブラー(INGRID HAEBLER)

 今年(2024年)はポリーニ(82歳)が逝去した年であると共に、へブラーが天に召された年でもあった。へブラーはモノラルの時代に既にレコーディングを始めていたわけでポリーニよりも随分年上だろうと思って調べてみると1929年生れで今年で95歳、ポリーニより一回りとちょっと年上であった。随分と長寿のピアニストであった。

 所有しているへブラーのモーツアルトは(というより全ては)わずか1枚、それもレコードで買った1枚だから語る資格はないかもしれないけれど、その1枚は僕がクラッシック音楽を聴き始めた頃に手に入れた懐かしい1枚である。若い頃に聴いた演奏というのは別の価値があるから敢て取り上げさせて頂く。音楽というのは聴いた歴史の長さと回数によって理解されるものであるから、子供の頃聴いたと言うことにはそれなりの意味があるのだ。

 へブラーのピアノはふくよかで優しいタッチで一貫している。激しい音、不規則なリズムは一切ない。可憐なその音色を愛するモーツアルトの愛好家が多いのも納得できると今でも思う。ピレシュが(野生でも生きていく)野菊のような音色だとすれば、へブラーのはもう少し、柔らかで色の豊かな(庭園でしか咲かない)ガーベラのような音色といえばいいだろうか。同じ「可憐」という言葉でも表される音色はかなり異なる。

 コリン デービスはモーツアルトの協奏曲の伴奏者としてはもっとも優れた指揮者で、本当に独奏を際立たせてくれる。有名なのはグリュミオと共演したバイオリン協奏曲だけど、ヘブラーとのピアノ協奏曲も素晴らしい。

 併録されたソナタはモーツアルトのピアノソナタでは比較的少ない短調の曲だけど、へブラーが弾くともの悲しさの中にどこか艶めいた女性らしさが感じられて「なかなか良い」のである。ピレシュの演奏だともう少し中性的である。そこが好みの差を生むのだろうけど、どちらも素敵だと言って差し支えあるまい。

 いや、寧ろこの短調のソナタと幻想曲に限ってはへブラーの方が情感を感じて好ましいかな。モーツアルトはソナタについては長調が多いが、幻想曲ファンタジア輪舞曲ロンドと名付けたものは殆どが短調である。(長調はKV485のロンド1曲のみ、短調はKV397, KV475, KV511)不思議な気もするがファンタジアというタイトルが既にモーツアルトにとって短調のもの悲しい響きを想起させるものだったのかもしれない。へブラーの演奏はそうしたことを踏まえた上で演奏されているような気がして、彼女、意外にしたたかな性格なのかもしれない。


クララ ハスキル(CLARA HASKIL)

 モーツアルト弾きの女流ピアニストの中で、ある意味もっともオーソドックスな、スクエアなピアニストはクララ ハスキルではないか。内省的な性格と病気が災いして、戦後になるまで余り日の目をみることのなかった彼女ではあるけれど、女流のモーツアルト弾き、といえばやはり彼女がその嚆矢こうしとして名前が挙がるのは演奏を聴けば聴くほどもっともだと納得させられる。端正で、繊細で、少し神経質で、そういった表情が生のモーツアルトを感じさせるのだ。ピレシュやヘブラー、或いは(取り分けて)内田やクラウスと違うモーツアルト像が確かにそこに存在する。そして「それこそが真のモーツアルトではないか?」と感じさせる趣があるのだ。

 バウムガルトナーの指揮による協奏曲は比較的珍しい13番、小編成のオーケストラにしては少し音がもたつく感はあるけれどハスキルのピアノは軽快に楽譜を辿っていく。でも、この盤で僕が好きなのは「キラキラ星の主題による変奏曲(正確には"12 Variationen über ein französisches Lied "Ah, vous dirai-je, maman""(「ねえ、ママ聞いて」というフランス歌謡に基づく12の変奏曲」)の演奏で、今は余り演奏会やレコードに採り上げられないけど、彼女はとても生真面目に(このレベルに達したピアニストには少し退屈かもしれないこの曲を)演奏している。

 その姿がまるでこの世の人間とは思えないような気がするのだ。どこか触れてはいけないちょっと生臭い人間と別の世界の存在に思える。彼女自身とその奏でるピアノは若い頃の美貌も相俟あいまってどこかfairyというかjinn(jinnというのはアラブ世界の妖精だ。今、Salman Rushdieの”Two Years Eight Months and Twenty Eight Nights"を読んでいるので)というか、コロボックルというのか、そういうものを想起させる。たいていの妖精はいつのまにか人間くさく、オバさんになっていくのだけど不思議なことに彼女の場合は歳をとってもそうしたミステリアスな雰囲気は寧ろ増していったような気がする。

 グリュミオとの共演は数多く残っているのだろうけど、僕が保有しているのは僕自身の誕生日から3週間後、ブザンソンで開かれたコンサートのライブ録音(おそらくは非正規)のものだけだ。だが二人の演奏は、幾度となく彼らが同じ空気の中で同じように息をしながら演奏をしてきた歴史を窺わせる親密インティメットで心地よいものである。ベートーベンのソナタ (op.12 no.3) までを含めてモーツアルト的なcozyな音楽が心地よく響いていく。op.96の冒頭、バイオリンが語りかけるように弾くメロディをピアノが応えるかのように繰り返す、そのメロディが遙かに年若(26歳の差がある)の青年バイオリニストへの姉のような、とはいえ恋心に近いような(グリュミオの方だって心惹かれていたかも知れない)心情を感じてしまうのだ。

 ハスキルにとってグリュミオというバイオリニストは特別な存在だったに違いない。演奏会を翌日に控えた日、ブリュッセルの駅の階段から転げ落ちて急死する前、僅かに意識を取り戻し「グリュミオさんにお詫びしてね、明日の演奏会がだめになっちゃたこと」と呟きつつ「でもね、幸いなことに手だけは大丈夫だったの」としみじみと掲げた彼女にとって、手とグリュミオがいかに大切だったのか・・・。もし手で体をかばっていたら彼女は死なずに済んだのかも知れないけれど、体を庇って手を駄目にしたらやはり彼女は死んだに等しい存在になってしまったのだろうか?

 グリュミオとハスキルという世代も性別も超えたカップルのモーツアルトは永遠に残って行くに違いあるまい。

 

内田光子

 内田光子のモーツアルトは他の女流ピアニストよりもかなり男性的な音色がする。タッチも必要に応じて強くなるし、少し荒々しささえ感じる時もある(あくまで比較論であるけれど)しっかりとしたメリハリのある音を好む人にも、モーツアルトの演奏にはっきりとした主張を求める人にも好まれる演奏であろう。翻せばそうしたモーツアルトを求めない人には内田光子はやや刺激的過ぎると感じられる演奏家も知れない。

 僕の周辺の様子を見る限りに於いて、日本では「主張のはっきりしたモーツアルトは好まれにくい」傾向があり、そうした音楽愛好家はピアニストならばピレシュやハイドシェック、指揮者ならばワルターやスィットナー、ブリテンなどを好む傾向があるように思える。僕自身もそうした傾向がないとは言えないけれど、それが世界一般の見方かというとそれは違っていて、そうした多様性の中で演奏家は生きている。技術的には非常に卓越している彼女の演奏を好む人も世界には多いだろう。

 そんな彼女がロンドンで評価され世界的なピアニストの一人になったというのはとても素晴らしい事で、批判するわけではないが日本にいたらそういうことはなかったであろう。

 ただ、彼女が本当に「モーツアルト弾き」なのか、というとそれはどうかな、という気がしている。寧ろモーツアルト弾きであるという評価は彼女の場合、足枷あしかせになるのかもしれないし、彼女が到達すべき音楽の完成度や彼女としっくりくる「べき」曲との間を阻害そがいするのかも知れないな、と感じる。

 シューベルトの遺作(D958.960あたり)とか、ベートーベンのハンマークラヴィアとか、既に録音している曲にその地平が存在するのか(僕としてはそこらあたりに彼女の最適生存領域がありそうに思えるのだけど)、一度確かめてみたい気がするのだ。その意味で彼女についてはまだ生煮えのままのコメントである事を容赦して頂きたい。


リリー クラウス

 今回聴いたピアニストの中で唯一独奏曲ではなく、室内楽でしか聴いていないので「それだけで下す評価」が正しいとは思わないと最初に告白しておく。室内楽は構成する相手との組み合わせで雰囲気も、演奏の出力も変わってしまうのでピアニスト単独での評価というより「組み合わせ」全体の評価となり、その程度は協奏曲の場合より甚だしいと思えるのである。

 ただこの場合、合奏する相手がウィリー ボスコフスキー、ニコラウス ヒュブナーというウィーンの名手たちであるので、ピアニストにマイナスに働くとは全く思えない。

 クラウスのピアノは(少なくともこの時代、この演奏に於いては)非常に率直で力強い。男性の共演者と遜色ないどころか、彼女の確固としたピアノが、流麗なボスコフスキーのバイオリンと共に曲全体をリードしている。この組み合わせは思ったより骨太なモーツアルトを聴かせてくれるのだ。

 しかし単に男性的というわけではなく、メリハリもはっきりしていながら女性的な典雅さも備えている。女性のモーツアルト弾きといっても様々なタイプがあるわけで彼女のピアノが最も好きだという人も多いであろう。一音一音の粒立ちの良い演奏である。

 ちなみにこの演奏は1954年、ウィーンのムジークフェラインザールで録音されたもので、モノラル時代の録音にしては大変聞きやすく臨場感もある。(曲が終わった途端に急に音が消えるのには違和感があるけれど)ステレオ初期のぼんやりした録音よりだいぶマシであるといえよう。デュハメルというアーティステイック ディレクターが優秀なのかも知れない(存じ上げないけど)けど、スメタナSQのモノラル後期とか、ウィーンでバリリやウラッハが共演した室内管弦楽とか、あの時代の室内楽は演奏といい、録音といいレベルが高いものが多かった。

 演奏そのものに関して言えば、その他のクラウスを聴いていないのでなんとも言えないけれど結構晩年の演奏には批判もあるみたいだ。しかし、様々なところで書いているがピアニストが歳を取るほど技術的に衰えるのは仕方の無いことで、そこから何を読み取るのかは「聴き手」次第の事が多い。あのコルトーでさえ、晩年は批判されたが、別のところで書いた通りそんな批判をものともせず彼はシューベルトの協奏曲を弾くことで「音楽の神」を地上に降ろしていた。指周りなど、若い時の方が反射神経がいいに決まっているわけで、僕らは反射神経を聴くために音楽に耳を傾けているわけではない。

 とはいえ、ではクラウスの場合がどうであったか、というのは今のところ分らないのであり、世の中には分らないままにしておいた方が良いことも多いのもまた真実なのである。


 さて、そろそろ締めることにしよう。

 恐らくモーツアルトを弾く女性はもっとたくさんいる、という指摘もあるだろうし、せめて全員ピアノソナタ全集くらい聴いてからにしたら、というご意見もあるだろう。うん、その通りかも知れない。

 でも、モーツアルトのソナタの全集を更に集めてみたいかと言われると・・・。先日CDショップで最近亡くなったばかりのヘブラーの手による全集も、リリークラウスの演奏も、またピレシュによるドイツグラモフォンの新たな全集も手に取って見たのだけど・・・。ピレシュの旧盤とグールドの演奏を持っていればなんとなく「見るものは見つ」という気になってしまう自分がいる。

ベートーベンのピアノソナタはバックハウス・ポリーニ・グールド(グールドは全曲完成には至らなかったけれど)の他にもホロビッツ・ゼルキン・キーシン・ギレリス・リヒテルなど様々な演奏家に手を伸すのに・・・。なぜだろう。モーツアルトといっても交響曲や協奏曲でもかなりの種類を集めてしまうのに。いやモーツアルトのソナタは聴くより弾きたくなるのだ、と誤魔化しておこうか。


 久しぶりに彼女たちの演奏を聴いて、僕はハスキルとグリュミオのバイオリンソナタはもう少し買ってみようかな、という気になっているし、内田光子のベートーベンやシューベルトなんかも聴いてみたい気もしている。ピレシュはショパンの1番とシューマンの新しい録音が気になるし、クラウスのモーツアルトの協奏曲はソニーから出ていたはずだけどあれは誰が指揮していたんだっけ?なんて思っている。

 そんな具合である。僕にとってのモーツアルトの正妻はピレシュなのかもしれないけど・・・こうやってモーツアルトと女性ピアニストたちは聴き手と他の作曲家までを巻き込みながら浮気と多産を繰り返していくのだ。それこそが「ドン・ジュアン」の世界なのだ!・・・かな?


 「結局・・・モーツアルトを演奏する女流ピアニストというのは本当に幸せな存在なのだろうな。と改めて思いました」と纏めることできれいに終わらせてください。



マリオ ジョアン ピレシュ(MARIA-JOAO PIRES)

(CD)

*Wolfgang Amadeus MOZART

CONCERTO No.9 KV 271 pour piano & Orchestre mi bemol majeur

CONCERTO No.23 KV 488 pour piano & Orchestre la majeur

RONDO POUR PIANO ET ORCHESTRE KV386

ORCHSTRE DE CHAMBRE DE LA FONDATION GULBENKIAN DE LISBONNE

Direction: THEODRE GUSCHLBAUER

ERATO ECD 55005

*Wolfgang Amadeus MOZART

CONCERTO No.26 KV 537 pour piano & Orchestre re mineur

ORCHSTRE DE CHAMBRE DE LA FONDATION GULBENKIAN DE LISBONNE

Direction: THEODRE GUSCHLBAUER

CONCERTO No.27 K.595 pour piano & Orchestre Si bemol majeur

ORCHSTRE DE CHAMBRE DE LAUSANNE

Direction: ARMIN JORDAN

RONDO KV382 pour piano & Orchestre

ORCHSTRE DE CHAMBRE DE LA FONDATION GULBENKIAN DE LISBONNE

Direction: THEODRE GUSCHLBAUER

ERATO ECD 55004

*WOFGANG AMADEUS MOZART

Konzert fur Klavier und Orchester Nr.17 G-dur KV 453

Konzert fur Klavier und Orchester Nr.21 C-dur KV 467

The Chamber Orchestra of Europe/CLAUDIO ABBADO

Deutsche Grammophon 439 941-2

*W.A. MOZART: THE COMPLETE SONATAS FOR PIANO Vol.1

SONATA NO.1 IN C MAJOR, KV279(189d)

SONATA NO.2 IN F MAJOR, KV280(189e)

SONATA NO.3 IN B-FLAT MAJOR, KV281(189f)

SONATA NO.4 IN E-FLAT MAJOR, KV282(189g)

SONATA NO.5 G MAJOR, KV283(189h)

DENON DC-8071

*W.A. MOZART: THE COMPLETE SONATAS FOR PIANO Vol.2

SONATA NO.6 IN C MAJOR, KV284(205b)

SONATA NO.7 IN F MAJOR, KV309(284b)

SONATA NO.9 IN A MINOR, KV310(300d)

RONDO IN D MAJOR, KV485

DENON DC-8072

*W.A. MOZART: THE COMPLETE SONATAS FOR PIANO Vol.3

SONATA NO.8 IN D MAJOR, KV311(284c)

SONATA NO.10 IN C MAJOR, KV330(300b)

SONATA NO.11 IN A MINOR, KV331(300i)

RONDO IN A MAJOR, KV511

DENON DC-8073

*W.A. MOZART: THE COMPLETE SONATAS FOR PIANO Vol.4

SONATA NO.12 IN F MAJOR, KV323(300k)

SONATA NO.13 IN B-FLAT MAJOR, KV333(315c)

FANTASIA IN C MINOR, KV475

SONATA NO.14 IN C MINOR, KV457

DENON DC-8074

*W.A. MOZART: THE COMPLETE SONATAS FOR PIANO Vol.5

SONATA NO.15 IN F MAJOR, KV533 & 494

SONATA NO.16 IN C MAJOR, KV545

SONATA NO.17 IN B-FLAT MAJOR, KV570

SONATA NO.18 IN D MAJOR, KV576

FANTASIA IN D MINOR, KV397(385g)

DENON DC-8075

*Lutwig Van BEETHOVEN

SONATA QUASI UNA FANTASIA No.14 Opus 27 No.2 "CLAIR DE LUNE"

SONATA No.8 Opus 13 "PATHETIQUE"

SONATA No.17 Opus 31 No.2 "LA TEMPETE"

*FREDERIC CHOPIN

Concerto for Piano and Orchestra no.2 in F minor, op.21

Royal Philharmaonic Orchestra ANDRE PREVIN

24 Preludes op.28

Deutsche Grammophon 437 817-2


イングリッド へブラー(INGRID HAEBLER)

(レコード)

*モーツアルト

ピアノ協奏曲 第26番 ニ長調 K.537「戴冠式」

幻想曲 ハ短調 K.475/ピアノ・ソナタ 第14番 ハ短調 K.457

コーリン・ディヴィス指揮 ロンドン交響楽団

      fontana FG-103


クララ ハスキル(CLARA HASKIL)

(レコード)

*ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト

ピアノ協奏曲 第13番 ハ長調 K.415

ピアノ・ソナタ ヘ長調 K.280

キラキラ星の主題による変奏曲 ハ長調 K.265

ルツェルン祝祭管弦楽団 バウムガルトナーバウムガルトナー

      ドイツグラモフォン MH5057

(CD)

*WOLFGANG AMADEUS MOZART

Sonata per violino e pianoforte in si bemolle maggiore K454

Sonata per violino e pianoforte in mi minore K304

*LUDWIG VAN BEETHOVEN

Sonata per violino e pianoforte in mi bemolle maggiore op.12.n.3

Sonata per violino e pianoforte in sol maggiore op.96

Arthur Grumiaux(violino)

MELODRAM MEL 18001


内田光子(MITSUKO UCHIDA)

(CD)

*WOLFGANG AMADEUS MOZART

Sonata in C, KV 309

Sonata in D, KV 311

Sonata in A minor, KV 310

PHILIPS 412 741-2


リリー クラウス(LILI KRAUS)

(CD)

*MOZART

Trio en si bemol majeur(Divertimento), K.254

Trio en ut majeur, K.548

Trio en mi majeur, K.542

Trio en sol majeur, K.564

Trio en re mineur, K.442

Trio en sol majeur, K.496

Trio en si bemol majeur, K.502

WILLI BOSKOVSKI, violin NIKOLAUS HUBNER, violincello

EMI CHS 7 69796 2








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ピアニストに恋をして 西尾 諒 @RNishio

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