第2話 動き出す歯車
芳野の言ったことがよくわからなかった。
「んとね、今マイルドセブンの名前のタバコはなくて、全てメビウスの名称になってるんやけど、」
流石にそれはわかる、喫煙者をなめるな。
「それが公にされたのが2012年、発売が2013年。流石にわかるのよな?」
呆れ顔の芳野はそういった。
「本当やん、オーパーツやん」
水俣はややずれた感想を漏らす、
「よかったな、タイムスリップ友達がおるやん。」
しかも可愛い、と付け加えてややにやついた顔で芳野はこちらをみる。
「これはどっかの映画みたいな、展開をきたいしてもいいか?」
「水俣くん、世の中映画みたいにはいかないよ、それにお前仮に震災関連の未来変えたらペナルティ受けるのでは?」
「そうやったわ、忘れてたわ。」
おどけた様子で言っているが、彼には震災の歴史どころか目の前の未来も変えられない男だ。さっきからタバコを吸いたそうにライターで遊んでいる。
「まあでも、その女の子の正体は気になるから僕も協力する。」
「そうか、じゃあまずどうしたら会えると思う?」
至極短絡的な意見を僕にを飛ばしてきたが、痛い所をついてくる。
「シンプルだけどお前が離れた直後の喫煙所に戻ればまだタバコを吸っているのでは?」
すまん水俣。それしか思い付かない。
「残りの4回でもう1回いってこいと?」
「そういうことだ。」
もったいないと考えたがそれしかない。
「どうせもったいないてかおもってんだろ。」
芳野にバレた。
「顔にでてんのさ、行ってこい。」
「はいはい」
そう言って彼はもう一度闇の中へ消えた。
「2度目のとうちゃくっと。」
時間を少しずらしたため、ちょうど入れ変わりだろう。
早足で喫煙所に向かう。正直いるとは思えない。
しかし、その考えは裏切られる。喫煙所に1人、彼女はまだいた。
「ねぇ!」
すかさず声をかける。
「はい、どうかされました?」
彼女の第一声はそれだった。不思議そうな顔でみてくる。手に持ってるタバコはさっきとビデオで見たものは違うが銘柄はメビウスだった。
「そのタバコこの時代のものじゃないでしょう。」
いきなりぶつけるのは如何かと思ったが、特にいい方法も思い付かない。だが、彼女の顔に驚きが見られた。
「何言ってるのお兄さん!コンビニで買ったんだよ!」「そのタバコの初販は5年後だ。」
芳野の受け売りだが、きっとどや顔だっただろう。それを聞いて彼女は仕方ないと思ったようだ。
「観念したよ。目敏いんだねお兄さん。」
「何しに来たの?この時代に。」
「笑わないできいてくれる?」
「もちろん」
「ラブ&ベリーやりたくて....」
俺と同類だった。しかも笑った。だが、聞きたいことはそれではないため話を続ける。
「君もタイムスリップできるの?」
「うん、夢に白い男が出て来て5回まで、さらに一回に月72時間。そしてペナルティもあると言われました。」
まるっきり俺と一緒だった。
「ってことは今回は試運転?」
「そうなんですよ。でもこれでタイムスリップが本物だとわかりました。さらに他にも出来る人がいることも。」
「なるほどね。」
「お兄さんは何でこの時代に来たんですか?」
「えとね、ムシキングしたかったから。」
この瞬間心なしか目の前から冷たい視線を感じたきがした。そりゃ、同類を笑ったからね。
「まあいいや、できたらもう少し話が聞きたい。この後時間ある?」
場の空気を切り裂きたいがために、提案をした。
「大丈夫ですよ。ちょうど下の階に喫茶店があったのでそこでどうですか?」
「そうしようか。」
何とか話をそらせたことにほっとした。
残り僅かのタバコを消して俺たちは外に出た。
芳野彼方は困惑していた。それはまさに目の前でタイムスリップを二度もする友人を送り出したからではなく、また女絡みの面倒事を持ってくるのではないかと思ったからだ。
以前も元カノと別れるまで死ぬほど苦戦したり、幼馴染みの女の子と拗れる様子をみてきているからだ。
「まったく、少しは学習してるのかね。」
そう呟いた僕は、黙ってマンガをとじて次の巻に手を伸ばした。
空だけは青い。 真昼 @iabamamo
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