第7話星と神社
学校から徒歩10分。星神神社は今日も静かに健在します。私は今日、スマホの代わりをしました。
「……結構大きな神社なんだね」
私たちは鳥居をくぐり境内へと入ります。
「あら? お帰りなさい、星奈。あなたがこっちから来るのは珍しいですね」
「ただいま、母様。今日は案内をしたので」
私は普段神社の中を通らず、迂回して家に戻ります。それから手伝いをしにこちらへ来るのですが、今日は神様がいるので勝手が違います。母様はちらっと神様の方を見ました。
「初めまして、わたしは星奈の母です。これからもこの子と仲良くしてあげてくださいね」
神様に向かって丁寧にお辞儀しました。
「初めまして。僕は星奈さんの同級生の神月心です。引っ越して来て間もなくて、星奈さんには良くしてもらってます」
努めて丁寧な言葉遣いにしているのでしょうが、僕や星奈さんだなんて、なんだか耳慣れなくて変な感じがします。
「星奈、今日はお手伝いはいいですよ。彼の案内をしてあげなさい」
「はい。ありがとうございます」
母様と話が終わると、見計らったように母様が呼ばれました。星神神社は参拝に来る方も多いのです。
しかし、境内を案内と言われてもどうするべきでしょうか。
「おみくじ引いていきますか?」
「引いていいの?」
私は頷いて社務所へ向かいました。おみくじだけでなく、御守りも売っています。
「星奈も引けば?」
「私は良いですよ。いつだって引けますし」
「じゃあ今でいいじゃん。ほら、早く。一緒に見よう」
促されて、私もおみくじを引きました。引くのはお正月以来です。
「……吉です」
「俺は大吉」
……運の良さは神様の力が影響するのでしょうか。
「願い事、努力次第。待ち人、来るが少し遅し。失せ物、以外と近くに」
「なんかぱっとしないな。俺のほうは、願い事、必ず叶う。待ち人、すぐ近くに。失せ物、出る。結構凄い?」
結構どころかかなり凄いと思いますけど、癪なので言いません。
「こういうのってどうする?」
「大吉なので持ち帰ってはどうですか? 私は結んでおきますが」
「そっか。……俺、そろそろ帰るかな」
「もう良いんですか?」
まだおみくじしか引いていないのに。本当に読めない人です。
「うん。なんとなく分かったから」
一体何が分かったと言うのでしょうか。私は神様のことが全く分かりません。
「帰りは大丈夫ですか?」
「うん。大丈夫。今日はありがとう。また明日」
神様は手を振って帰って行きました。なんだか嵐のような人です。
「星奈」
呼ばれて振り替えると、母様がすぐ側に立っていました。
「彼があなたの言っていた神様ですか?」
「はい。そうですよ」
「では、一つ忠告です。彼とはあまり仲良くしない方がいい。仲良くすればするほど、別れが辛くなるだけなのですから」
母様は寂しげな表情を見せました。いつも笑顔の母様が時折見せる表情です。
「大丈夫ですよ。分かっていますから」
私は努めて明るく言いました。
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