第6話星と神

「星奈はずっとこの町に住んでるの?」

「そうですね。あまりこの町から出たこともありません。海とかいろいろなところへ行ってみたいものです」

 星神家は代々続く名家だと聞いています。祖父母は私が小さい頃に亡くなってしまいましたが、一緒に暮らしていたので町を出ることが少なかったのです。父方の方はあまり詳しくは知りません。

「じゃあ、この町のこと詳しいんだ?」

「どうでしょう。それなりですよ。最近は区画整備とかされていますし」

 最近はこの町も都市化が進んでいます。駅前に大型スーパーが出来たり、オシャレなお店が出来たり。昔の感覚で歩いていたら迷子になってしまいそうです。もっとも、家の手伝いもあるのであまり出歩くことは無いのですが。

「そうじゃなくて、伝承とか」

 伝承……言伝えのことでしょうか。あまり聞いたことは無いですね。強いて言うなら星神家に伝わるものですが、あれは他人は知らないはずです。

「私はそう言うのには詳しくないですね。友達にそういう話が好きな子もいませんし」

「そっか。残念」

 神様……心君は何か知っているのでしょうか。

「好きなんですか? そういうの」

 私の言葉に心君は考えるような素振りをしました。やがて、笑ってこう言いました。

「さぁ。どうだろう」

 自分の事なのに分からないなんておかしな話です。それとも、はぐらかしているのでしょうか。しかし、言いたくない事を無理に聞き出すのは趣味ではありません。触れないでおくべきなのでしょうね。

「一通り回り終わったので、今日はもう帰りましょうか。明日からの日常生活で分からない事があれば私に……。あなたならそれも必要ないかも知れませんね」

 どうせ一緒に行動したいと言う人は多いでしょうし。私が出る幕は無いでしょう。

「ありがとう。困ったら星奈を頼るよ」

 一体何を考えているのか、なかなか読めない人です。それも神としての記憶が無い故なのでしょうか。

「星奈の家はどこ?」

 昇降口まで来たところでそう訪ねられました。出会って間もない人に自宅を教えるのはあまり気乗りしませんが、私の場合は隠しても仕方がないことです。

「神社の方です。星神神社のすぐ側」

 今は母様が神主さんです。母様は着物が良く似合います。

「案内してよ。俺、神社に興味あるからさ」

「何か用があるんですか?」

「いや? 言ったでしょ。興味があるって」

 やはり、読めません。大体、今日ではなく暇な時にでもいけば良いものを。今はスマホが道を教えてくれる便利な時代なのですから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る