第4話星と過去

 まるで波に揺られているような浮遊感を覚えます。どこか懐かしくて、温かい。何かに包まれているようなそんな心地好さ。この時が永遠に続けば良いのに……

「…………な。………せ…な。……せいな。星奈!」

 名前を呼ばれ、私は目を覚ましました。目の前には心配そうに私の顔を覗き込む母様がいました。

「母様……? ここは?」

 そう言って辺りを見渡すと、自分がどこにいて、何をしていたのかを思い出しました。

「なかなか戻って来ないので心配したのですよ。無事で何よりです」

 母様は安堵の表情を見せました。

「すみません……」

「しかし、木箱を見つけたようならよかったです。……本当にあったのですね」

 母様の目線を追うと、お社のすぐ隣に木箱が置いてありました。母様の言うように、さっきまでは無かったような気もしますが記憶違いでしょうか。母様もなにか気になることがあったのか、木箱をじっと見つめています。

「母様?」

「いえ、わたしが母にその紙を渡された時に納屋の整理と合わせて探してみたことがあるんです。その時は無かったような気がして……。暗くてよく見えなかったのかも知れませんね。さ、戻りましょうか」

 母様に頷いてから私は木箱を手に取りました。思っていた以上に軽い箱でした。中には何が入っているのでしょう。

 夕食を済ませた後に、私は木箱を開けてみました。中には長さが大体360cm、畳2畳分程の絵巻物が入っていました。

 絵の側に書かれた文字は私の知らない文字のはずなのに、何故だか読み取ることが出来ます。

「星、降る、夜、神、帰る……巫女、役目、神、導く……?」

 接続語が無いせいか良く分かりません。自分で考えて接続語を入れてみた方が良いでしょうか。

「星の降る夜、に神は帰る。巫女の役目? が神を導く」

 こんなところでしょうか。星の降る夜は絵からして流星群でしょう。巫女は私達星神家のことでしょうか。だとしたら、分からないのは巫女の役目ですね。私はその答を期待して続きを読みます。

「巫女、神、糸、見つけ、導く……。巫女が? 神の糸を、見つけ導く?」

 神様に糸は無いはずです。それを見つけるなんて出来るはずが無いのでは?

「役目、果たされず、神、力、失う……」

 その近くの絵には神様が羽を失う絵が描かれています。これは、つまり……

「私が糸を見つけられなかったら神様は神様でいられなくなると言うことですか!?」

 なんて理不尽。しかもそれ私のせいになるじゃないですか! 一体私はどうすれば良いのでしょうか……。

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