第3話星と歴史
私は納屋へ入ったことがありません。幼い頃、納屋へ入ってはいけないときつく言われていたからです。初めは何故入っていけないのかと不思議に思っていたのですが、今ではそれが当たり前みたいになっていました。
しかし、今なら分かります。母様が口をすっぱくして納屋へ入ってはいけないと言っていた理由が。
私は期待と高揚感を胸に納屋の扉を開きました。中はあまり陽が入って来ないのか、少し暗く感じました。
目が慣れてくると、ようやく物の区別がつくようになりました。そして、私は驚きました。納屋には沢山の物が整然と並べられているのです。少し古めかしい本や巻物。何に使うか分からない道具たち。それらは一日では到底見切れないほど沢山ありました。子供の頃にここへ入っていたら毎日のように探索をしていたでしょう。
見たい。手にとって見てみたいです。
私がふらっとそれらが置かれている方へ足を向けると、ぱさっと乾いた音が響きました。見ると、一枚の紙が落ちていました。
「あ、母様から頂いた紙です」
いけない。私としたことが目的を見失うところでした。非常に興味深くはありますが、今日は母様に言われた通りのものを探さなくては。母様に呆れられたくはありません。
紙にはなにやら文字が書かれた木箱の絵が載っています。これを探せば良いのでしょうか。と言ってもこの場所には木箱なんていくらでもあります。今日中に探し出せるのでしょうか? もしかしたら探しているうちに興味が他の物へと移ってしまうかも知れません。前途多難です。
しかし、見たところ書物は書物、巻物は巻物といったように分けられているようです。木箱が置かれているところを重点的に探せばすぐに見つかるでしょう。
なんて、そんな考えが甘かったのはすぐに分かりました。いくら探しても目的の木箱があないのです。文字が書かれた木箱はいくつかあったのですが、紙と同じ文字が書かれた物は一向に見つかりません。
「どうしましょう……」
もしかしたら木箱が置かれた場所には置いてないのかもしれません。これは他の場所も探す必要が……
「階段?」
先程は気付きませんでしたが、奥の方に階段があったようです。どうやらこの納屋は2階建てのようです。一段一段上がるごとにギシギシと音が響きます。壊れないか心配なくらいです。
「お社……?」
2階には小さなお社が中央に置かれていました。何か書かれているようですが、あまり手入れされていないのか、全体的にホコリを被っていて見えません。
私は文字を読むためにお社に手を触れました。
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