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 来た時同様、リュウオウに4人並んでお空の旅。アシュレイ、私、ミーナ(withジェーン)、ランスの順でな。ただ違うのは…。



「きゃっ。」


「どうした、ミーナ?」


「ランス様…。大丈夫です、小鳥とぶつかりそうになっちゃっただけですから!」


「そうか…やっぱり俺が前に行こうか?」


「ううん、いいんです。だってこの方が…ランス様が、後ろから抱き締めてくれるから…。」


「ミーナ…!」


「ランス様…♡」


「「『………………。』」」



 後ろで…超イチャついてる…。見えないけど、ハートが飛び交ってる気がする…。



「小鳥じゃなくて…デケエ鳥来ねえかな…。」


「昔あったな…。美味かったんだっけ…オレも食いたかった…。」


『お2人共、どうどうです。でも自分も彼氏欲しいです~!ミーナ様がご結婚されたら探すです。』


 そういやジェーンは結婚後、一緒にベンガルドに行くらしい。でも影に入るのは卒業、普通にメイド&護衛をするって。

 ちなみにだけど、今だって四六時中入っている訳ではない。外出時だけで、寮の部屋とかは屋根裏にいるって。


『だってー。影に入ったままうっかり…夫婦の営みとか聞いちゃったら、流石に申し訳ないですし♡』


「ぶっっっ!!!!」


「アシュリィ?」


 変な想像させんなっ!今度生身で会ったら覚えてろ!!

 全く……目の前には、大きな背中。



「………っ!?アシュリィ…?」


「何さ。」


「いや…別に…。」


 決して後ろのカップルに感化された訳ではないが。なんとな~くね?アシュレイにぴったりくっ付いてお腹に腕を回す。


「(ありがとう…ランス、ミーナ…!!)」


 なんか震えてない?風邪引くなよ。




 彼らをブラウ寮まで送り、私達もどこか…内緒話できる場所無いかな?


「あ、そうだ。あそこ…鳳凰会のサロン行かねえか?休日でもメンバーは入れるんだ。」


 お、いいね!案内されるがままに移動する。

 ……ねえアシュレイ。なんで…手を繋いでいる?多分だけど、無意識に。まあ…いいんだけどさ…。



 鍵は?と思ったら、魔力を登録してない人は部屋に入れないんだって。私は編入時に登録済みらしく、難なく通過。

 警備が万全な代わりに、給仕もいない。まあ貴族はお茶を淹れるのもマナーのうちだから、不便は無いけどね。


「へえ…素敵な所…。」


「だよな。前はよく集まってたんだ。」


 パメラが暴走する前ね…。

 サロンはとても広く、調度品も最高級。テラスにもテーブルがあり、季節の景色を楽しむ事が出来る。



 さて…念の為遮音をしてから、話し合いをスタートする。


「あのね。シャリオン伯爵が…。」


 私は彼の言葉を、一言一句違えず復唱した。それに対する私の思いも。アシュレイは目を丸くした。



「……そっか。オレも…何か力になれるかな。」


「なれるよ。」


 だってアシュレイは…どんな時も全力だもの。リリーを護る!と決意した私を支えてくれたり。スラムの家族を探したり。自分の為じゃなくて…誰かの為に、必死になれる人だもの。

 アシュレイはその言葉に顔を赤くした。


「そんなん、じゃ、ねーし…。結局は…自分の為だし…。」


 それでいいよ。あんたに救われる誰かがいる…それが全てだ。




「それよりデメトリアスだね!伯爵とアルの発言を照らし合わせると…。

 結論から言えば。デメトリアスは女帝…キャンシー陛下の子供ではない…かな。」


「だよな…。」


 それは…ちょっと話が重すぎるんじゃないかねえ…?

 ただアルと血が繋がっていないと言うのなら。キャンシー陛下と王妃殿下は実のご姉妹ではない。という説もある。でも王妃殿下が以前「キャンシーは姉」って言ってたし…。


「何より未だ立太子でないのが大きい。それがきっと、彼を苦しめているんだろうね。」


「…強さを、求めるのは。家族や民に自分の力を知らしめたい…なのかな。」



 いいや、それは違う。

 デメトリアスは確かに言った。ただ…ティモを守りたかっただけだって。


「だから、ティモが鍵だと思うんだけどね。」


「そっか…。」


 思えば彼も不思議というか…謎の多い人だな。

 私達は彼らの力になりたいとは思うが、踏み込み過ぎると拒絶されるだろう。なので徐々に…という結論に至りこの日は終了。



「そういやティモってさ。実は結構美形なんだよな。」


 え、そうなの?彼いっつも大きな黒縁眼鏡で顔隠してるから、全然知らんかった。


「寮の大浴場でたまーに会うんだけど、そん時チラッとな。すぐ殿下が遠ざけるんだけどな。」


 ふーん…?







 月曜日、ランスとミーナはいつものメンバーに婚約の報告をした。ディーデリック以外は「知ってた」って感じだった。魔族鈍すぎん?

 でだ。そうなりゃ自称ランスの恋人である…が黙ってるわっきゃねーよな。


「ランス様!?私という者がありながら…!なんでそんな女と!?」


「いや、最初から俺はミーナしか見てないし。条件満たした男なら誰でもいい、なんて女性はお断りだ。」


 ランスはズバッとナイトリーを拒絶。だが!その程度で引き下がるなら苦労せん!!



「なんて可哀想なランス様…!きっとあの女に脅されてるんだわ、私が助けてあげなきゃ!」



 もう好きにしてくれ。






 秋も深まってきた今日この頃。劇の練習も順調だが…。

 寄宿学校では近日、魔法イベントが開催されるのであーる!そこでデメトリアスともっと仲良くなるぞ!

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