21
「アシュリィ様、元気出してください~。」
いや、別に落ち込んでいる訳では。
アシュレイが去り、私はまだ混乱している。彼が私を…好き。
ブチギレ告白…ムードなんざありゃしない。以前聞いたお父様とお母さんの馴れ初め思い出すわ~。
何処からともなく現れたトレイシーも風のように去り、次に三人衆が。お父様達も…さては覗いてたな?
「ねえアシュリィ、君はアシュレイ好き?」
そりゃ、どっちかと言わなくても好きだ。ただ…恋愛としてはどうなんだ?
ぐるぐると同じ思考がループする。考えが纏まらない…。
ここで考えても仕方ない。お世話になってる屋敷に帰ろうと立ち上がった瞬間。
お父様が何かを察知、全員隠れるよう指示する。私を残して…。
原因はすぐ分かった。逃げたはずのアシュレイが戻ってきたのだ。
「アシュリィ!!」
「アシュ…レイ…。」
ハアハアと肩で息をして、私の両肩を掴む。
「…待ってくれ!!」
はっ?
「あの…さっきのはオレの本心だ!!けど、その…ちゃんと言いてえんだ!!」
もう聞いてるんですが。
「お前に相応しい男になったらもう一度言う!覚えてろ!!」
「あ…!」
なんと私に一切口を開かせずまた逃げた。
…それまでに私も、答えを出そう…。
「陛下、どう思われますか?」
「うーん…これは…早いとこ城を改装しなきゃ!」
「「「えー!?」」」
「勇者がウチのお姫様を攫いに来るよ!大人として全力で叩き潰さねば!」
大人気ねえ!と誰もが思った。
それからアシュレイは、私と目を合わすと赤くなって逸らすようになった。意識してるのがバレバレで…こっちまで照れるわい。
なんか…水着が恥ずかしくなってきたぞ…?海水浴はやめて、ディスター城でまったりお菓子パーティー。
「いやあ…ナイトリー嬢がいないだけで平和だなあ。」
確かに。ここなら凸される心配は万に一つも無い…そうだ。
「ねえ、スプリングフィールド嬢の事教えてよ。」
「ちゃんと言えるじゃないの…。」
もう1人の問題児。なんか私を避けてるけど、一部で威張り散らしてる侯爵令嬢。
放っておいても問題ないが、何が目的なのかハッキリさせたい。
…そういえばアルの事狙ってるんだっけ。リリーがいるから惑わされる事はなくても、ちょっと心配かな。
「そうだ。今年になってディーデリックと行動してたら、全然近寄って来ないんだ。」
「去年までは酷かったわよね…私達がお茶してるところに許可してないのに同席したり。」
「剣術の授業で、やたら差し入れされてたらしいね。」
「ちゃんと全部断ってたよ。」
「女性は追い出そうとしても、オレとかジェイド殿下には見向きもしなかったな。」
行動が分からん…情報班!!
「「はいっ!!」」
メディアはお任せ、トゥリン兄妹の出番だ!!
「では私からご報告を。お察しの通り、パメラ・スプリングフィールド令嬢は魔族を恐れていると思われます。」
「次はマルガレーテです!彼女の言動には、侯爵夫妻も困っているそうですわ。家は関係無く、彼女の暴走みたいです。」
「令嬢本人はアルバート殿下狙い。成績は良いけど周囲の評判は最悪。ちょくちょくマナーがなってません。」
「超常識な「下の者が親しくもない上の者に話し掛けてはいけない」すら守れていない。」
「ナイトリー令嬢は「人間は皆平等でしょ!?」な感じですけど…彼女はちょっと違うような。」
「「同じ世間知らずでも、ナイトリー令嬢は世間を知ろうとしない。スプリングフィールド令嬢は世間を知った上で無視している。」」
ふむ…分かるのはこれくらい。他の評判は全部似たり寄ったり。
やっぱ…直接問い詰めるしかないかあ。
これ以上考えても意味は無い。私達は海に山に森に…夏を満喫した。
ベイラーに帰る時、お父様が私に耳打ちをしてきた。
「冬も帰って来るよね?」
「うん!お迎えよろしく。」
「うん、それまでに改装しておくよ!」
…何を?
ベイラーでは友人とショッピングをして、課題をやって、鍛錬をして。中々に充実した夏期休暇だったのではあるまいか!?
私は毎晩寝る前にアシュレイの事を考えるようになった。彼をどう思っているのか、どうなりたいのか。…まだ答えは出ないや。
例えばディード。彼との結婚は考えられない。数百年後は分からないけど、今は無いと断言できる。
ではトレイシー。正直言って、彼は私のタイプだと思う。でも…パリスもいるし…分かんないなあ。
あー、恋愛とかガラじゃないのに!
モヤモヤを抱えたまま、休暇は終わりを告げた。
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