第十六章 初めての道
1 冷めたこころ
2学期が始まってすぐに、私の大学推薦が決まった。真斗とは夏休みのあの日以来、会う事はなかった。
夏休みの終わりに、茜と会って話をした。真斗と恋愛に対する考え方が違い、別れる事にした。茜に紹介してもらったのに、申し訳ないと話した。茜は熱心に耳を傾けてくれた。
「愛海、いろいろあったみたいだね。謝るのはこっちだよ。真ちゃんがあんな男だとは思わなかったよ。愛海を大事にするどころか、悩まして悲しい思いまでさせたんだもんね。愛海、後悔しているの?」
「私は後悔してないよ。真斗のことを好きだったし、恋愛のABCを知れたし、少し大人になれた気がする。」茜と話していて、心が落ち着いた。
「真斗はまだ子供だったね。恋の仕方を知らなかったんだよ。まあ、同年代の男の子は皆同じだけどね。自分の欲望を最優先して、女の子の事を考える余裕がないんだよ。真ちゃんに、恋愛を指南しないといけないな。」最後の方は、茜の独り言のように聞こえた。
「言おうかどうしようか迷っていたんだけど、別れたならいいかな。愛海は聞きたくない話かもしれないけど…」茜はもったいぶった言い方で話してきた。
「実は、真斗は他の女の子とも関係があったみたい。体育祭の打ち上げの話を前に話したよね。あの時は言い出せなかったけど、実はそこにいた女の子と遊んだみたい。あの藤森の知り合いで他校の子なんだけどね。真斗は藤森と付き合い出して、おかしくなったんだよ。」私はショックだったが、思い当たる
「知らなかった。だって、私が彼の家に行ったのは、体育祭の日のすぐ後だよ。前の日にそんな事をしておいて、私、許せないよ。真斗の様子が変わったのも、みんなそのせいだね。もっと早く教えてくれれば良かったのに。」
「ごめんね。愛海が可哀そうで、とても言えなかった。それに真斗は、藤森にいろいろ相談していて、愛海との事もすべて報告していたみたいだよ。」
「相談?報告?それじゃあ、私たちの事を藤森は全部知っているの?」私は恥ずかしさと怒りで、やるせない思いになった。茜は真斗をホローするように、
「でも真斗には、愛海の事をどう思っていたのかと問い
「真斗は、何て言っていたの?」
「愛海の事は好きだけど、なかなか会えないし、思うようにならないから遊んだ。黙っていてほしいと、その時に言われた。」
私はショックを隠せなかった。それに、私だけが知らなかった事が多すぎるのも、ショックだった。だが、今になっては、誰も責められないし、今さら恨んでも仕方がない。真斗が変わったのは、私のせいであったと思う事にした。真斗としっかりと向き合っていれば、こんな風にはならなかったかもしれないと、初めて後悔した。
10月には推薦が正式に通り、東京の大学への入学が決まった。茜は受験で大学を目指しており、勉強が大変そうだった。茜と真斗が図書館で、肩を並べて勉強している姿を何回か見掛けた。
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