ルナ・ラヴ
ゴマだれ
第1話 いつもの朝
「朝姫(あさひ)、夕姫(ゆうひ)、起きろー!」
と、廊下から呼びかける。が、返事はない。
毎度のことだから、やれやれとため息をついてドアを開ける。と、そこにはスヤスヤと気持ちよさそうに寝息をたてている2人の少女がいた。
「ほら、起きろー。新学期から遅刻するぞ!」
布団を引っ剥がして、2人の少女を揺さぶる。すると、モゾモゾと動き出し、起き上がった。起き上がるのはよかったが、お気に入りのクマさんパジャマは肩からずり落ちており、発育途中のふっくらした胸が視界に入る。
しかし、起こしに来た少年は、特に動揺した様子も見せずに華麗な動作で2人のパジャマを整える。
「結にぃ、おはよーand 抱っこー」
「お兄ちゃん、おはよーand ちゅー」
と、甘えてくる。
結にぃと呼んだ、黒髪を肩のあたりで揃えており、二重で目がぱっちりなのが双子の妹で長女の五十嵐朝姫、お兄ちゃんと呼んだ、黒髪が背中まで伸ばしており、これまた二重のぱっちりなのが次女の五十嵐夕姫である。
「おはよーさん、朝ごはんできてるから早く着替えちゃえ」
と、双子の頭を撫でて部屋から出ていく。部屋に取り残された双子は
「「結にぃ(お兄ちゃん)のばか」
と不満そうに頬を膨らませつつも着替えるのであった。
「結城、ありがとね〜」
と、ほわほわした笑顔で朝食をテーブルに並べているのは兄妹たちの母親である。結城と呼ばれた青年は今年の4月から県立高校の1年生になったばかりである。
「これくらい大丈夫だよ。何か手伝うことある?」
「そうねー、じゃあパパにご飯お願いしていい?」
「おっけー、分かったよ」
仏壇の前に結城はご飯を持っていき、自分の亡き父に手を合わせる。5年前の家族旅行の帰りに交通事故にあい父親だけがこの世を去った。
父さんへの挨拶を終えたところで朝姫と夕姫も2階から降りてきた。
4人で一緒に朝食をとるのが五十嵐家のルールであり、これを無断で破るとほわほわした母さんの逆鱗に触れる。
「そっかぁ〜、なら、もうご飯はいらないよね〜。まま悲しいな。」
その時のハイライトの消えた母さんの目は、思い出すだけで身震いがした…。
五十嵐家の朝食の会話は賑やかである。
「お兄ちゃん、今日から高校1年生だね。制服似合ってるよ!」
「結にぃと学校離れるのいやだぁー」
と、今どき珍しいブラコン双子だが、兄から見ても2人の容姿は整っており、かわいい。
「朝姫も夕姫もそろそろ兄離れの時期だな!」
と、ニヤニヤしながら冗談を言ったつもりが、
「「え……?何言ってるの?」」
真顔で切り返され、そんな兄妹のやり取りをほわほわした母さんが見守っていた。
登校時間になったので、3人で一緒に出る。もちろん父さんへの挨拶は忘れずに。
「「「行ってきます!」」」
と元気よく、玄関を飛び出す。
外は晴天、新学期の始まりにふさわしく、これが五十嵐結城のにちじょうなのであった。
ルナ・ラヴ ゴマだれ @DANTE18
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