入学
王国の五月は暖かく、特にこの年は過ごしやすい天候であった。
そんな五月、皇太子たちの学校が始まった。
学校の正式名称は王立近衛団第一軍特任兵団であり、かつ王国魔術院特別認定学校であった。
つまり、三人は十二歳までの教育を受けることにより、士官学校を卒業し、なおかつ、魔術師としての認定も受けられることになっている。
校舎は宮殿内部の公園の敷地内にあり、三年かけて建設したもので、座学教室が三つ、剣術道場が一つ、魔法講義用の施設が系統ごと(炎、水、雷、土、風)に五つあり、皇太子たちの宿舎も学校内部に建てられていた。
さらに公園にも開放されていたので、散歩や散策などもできるようになっている。
入学式の教室で、ミルシャと三人の初めての対面となった。
「初めまして、殿下たちの教育担当を務めさせて頂くミルシャ・デ・ヤルです。よろしくお願いします」やや、緊張した面持ちでミルシャが話した。
ミルシャはエルフ族の血が入っているらしく、金色の髪に青色の瞳、ややとがった耳を持つ細見の少女である。
外見からはマスターの称号を得たとは思えないくらい細く、同世代の男性からはさぞ人気があろう。
「ラァと申します、よろしくおねがいします」ラァは元気よく話した。
「ラ・カームです、お願いします」ラ・カームも引っ張られるように話す。
「あ・・・えっと、ラナです」ようやく聞こえるような声でラナも自己紹介ができた。
皇太子たちは、みな少し紫色の入った白髪でそれは王家独特の髪色であった。
瞳はエメラルドグリーンであり、肌も驚くほど白かった。
これから六年間、千年伝承の皇太子たちを教育していくのは、ミルシャにも重圧を感じさせたが、三人を見るとミルシャは少しほっとした。
王族といっても、まだ普通の子どもであったし、魔術の潜在能力が魔術院のどの魔術師よりも高く思えたが、教師として考えれば、これ以上ないほどの素材でありこのような子どもたちを受け持つことはめったにあることではないと思えた。
少し息を吸ってから、
「これから六年間、殿下たちの教育については私が責任を持ちます。何卒よろしくお願いします」と語った。
ミルシャの声は、よどみがない張りのあるものだった。
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