ミルシャ

 三人に王族としての教育を学ばせるため、三人のためだけに近衛団から教師を選出し、特別教育を施すことになった。


 王国歴八八一年五月、三人が六歳になった時から教育が始まった。


 教師に選ばれたのは近衛団の中でも魔術院からマスターの称号を得ている異色の天才少女であった。


 魔術院は五大魔法のうち、一つの系統について一つの術式が唱えられるものをテイマー、三つ以上の術式を唱えられる者をマジシャン、五つ以上であればマスターと認定していた。


 魔術院からマスターと認定されるのは一年に一名出るか出ないかであり、マスターの認定を受けたものはたいてい、魔導士として生きることになる。


 しかし、この少女ミルシャは水系統のマスターとして認められながらも、近衛団に入団した。


 たしかに、近衛団に入団するには少なくともテイマーでなければならないが、現在在籍している三千人の近衛団の中でもマスタークラスの者は教官職を除けば皆無である。


 ミルシャについては、十五歳でテイマー、十六歳のうちにマスターまで登りつめ、天才少女は魔導士として生きると誰もが思っていたが、魔術院からの推薦もあり近衛団に入団していた。  


 この人事については疑問の声が多々あったが、十八歳にして王家の教師になるのを見て、周囲もこのための人事であったかと納得した。


 王女や皇太子を守るのは近衛団の仕事であったし、今回に関しては王女には防御結界についての教育が必要である。


 さらに、年齢的にも若い人からというものも考慮されたであろう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る