第1章 王立近衛団第一軍特任兵団

王宮

 王宮では、現ラ・カーム国王ラ・ヌカ一世に祝辞を述べる王族・貴族たちが溢れかえっていた。


 「陛下おめでとうございます。」


 「この後千年の王家の繁栄まちがいありませぬ」


 ラ・ヌカ国王に対して賛辞の声が止むことがなかった。


 国王は三つ子の場合についても王国魔術院から助言を受けており、双子の場合と同様であり、伝承通りにどちらかの女児と結婚させればいいということは聞いていた。


 ・・・あの子は苦労するだろうな


 あの子とは、長男である、ラ・カーム四世のことを指していた。


 三つ子は、長女の名前を「ラァ」、長男の名前を「ラ・カーム四世」、次女の名前を「ラナ」と名付けられた。


 これも、国王や王妃の意思とは関わりなく王家の伝承に基づいて決められたものだ。


 ラ・ヌカ国王は特に違和感はなかったらしいが、王妃であるナスタシャは王家ではなく、貴族の出身であるため、やや抵抗があった。


 ・・・なんで子供の名前も決められないの。


 ナスタシャはまだ二十歳であったし、そう思ったが、婚姻の儀式の前に父親から王家のしきたりには絶対に逆らうなときつく言われており、これもその一つなのだろうと諦めていた。


 千年伝承の子供を産んだことを誇るよりも、ただ、母親としてこの子たちが愛おしかった。


 「ラァ」「ラ・カーム」「ラナ」


 気が付くと何回も子どもたちの名前を呼んでいた。


 「三人が元気であればそれでいいから、喧嘩をしても辛い思いをしてもママが三人を守るからね」


 「ラ・カーム、あなたは十三歳までにお姉ちゃんか妹かどちらかを選ばなきゃいけないのよね」


 「ママがついているから、選ばれた子もそうじゃなかった子も」


 王家の伝承によれば、双子が生まれた場合、その二人を十三歳までに結婚させることで、新皇太子妃に皇太子と自身を守る特別な力が宿るとされている。


 たしかに、これまで兄妹や姉弟が結婚した場合に特殊な能力が発現されており、双子の場合はさらに大きな能力の発現が期待された。


 ただ、伝承は双子の場合のみを想定していたので、王宮内ではラナ姫を養子に出してはどうかなどという意見もあった。


 しかし、そこはラ・ヌカ国王や王妃の反対もあり、なにより王国魔術院が養子案に反対していたので三人は兄妹として育てられることになった。

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