第一話 ソロでモンスターと戦闘!
クローバー・オンライン――略して【クロオン】
先月発売されたフルダイブ型のオンラインゲーム。課金要素はまったくなく、リセマラも不可。それでも重厚な世界観から、多くのプレイヤーが絶賛していた。
私はゲーム好き友人のミキから勧められ、ひとまず始めて見たんだけど……。
「うぅ、いきなり災難だったなぁ……」
さっそく、壁にぶち当たっていた。
というのもゲームのシステムだとか、そういうところではなくて。
「ミキ、今日は一緒にできないなんて。私どうすれば良いんだろう……」
件の友人に急用が入り、ソロでクロオンを進めることになったこと、だった。
一通りの説明は学校で受けてきたのだけれど、一人でプレイするのはどうにも怖い。普段ゲームなんてしないから、なおのこと。
私は半分、涙目になりながらクロオンの世界を歩いていた。
「でも、いつまでも泣いていられないよね! とりあえず街の中を探索しよう! そうしよう!」
しかし気持ちを切り替える。
両拳を胸の前で握りしめ、大きく頷いた。
そして改めて、自分の周囲にある光景を目に焼き付ける。
「昨日も思ったけど、本当に実物みたい……」
えぬぴーしー、という人の造形。
その他にも建物や、生い茂る草木の質感。
昨夜はよく確認できなかったけれど、改めて息が漏れた。現代の技術も、ついにここまできたんだなぁ、とか。そんな感慨にふけってみた。
とはいっても、私は初心者も初心者なのだけれど。
「えっと、ここは始まりの町――スターリー、だよね?」
そこまで考えてから自分の現在地を確認した。
私がいまいるのは、すべてのプレイヤーが最初に訪れる町。基本的にいるのはえぬぴーしーで、売っているアイテムも最低限のものばかりだった。
町の外にいるモンスターも弱いらしく、本当に慣れるための場所。
「……うん! ひとまず、モンスターを倒しに行ってみよう!」
しばし悩んでから、私はそう決断した。
ミキも言っていたのだけれど、最初はとにかくレベルを上げるのが良いらしい! そのためにも、町の外に出てモンスターを倒すんだ。
そんなこんなで、私は小さな剣を購入して外へと出向くのだった。
◆
町の外に出ると、すぐにモンスターが現れた。
だけど……。
「うぅ、すごい罪悪感が……」
剣を構える私の目の前にいたのは、一匹の猫。
正確には尻尾が三つある、不思議な猫だった。
「一応、あの子もモンスターなんだよね? ――三尾猫、か」
データを確認してから、もう一度視線を送る。
すると三尾猫は、愛くるしい瞳で私のことを見つめてきた。どう考えても、ペットの類だと思うんですけど。アレを倒せって言うの……?
モンスターっていうから、てっきり怖いのかと思っていた。
これはこれで想定外。ある意味で、一番の恐怖だった。
「ご、ごめんね。猫さん……!」
だけど、ここで立ち止まってはいられない。
私は剣を振りかぶって、三尾猫を思い切り攻撃した。すると猫の上に表示された体力ゲージが減少する。
あ、よかった。
血とかは出ないんだ。
「こ、これなら戦える、かも……?」
そう思っていると、すぐに相手からの反撃がきた。
こっちに飛び掛かってきた三尾猫は、やんわりと私の腕を甘噛みする。ちくりと針で刺されたような感触があって、ほんの少しだけこちらの体力が減少。
ゼロになったらダメ、くらいの知識しかないけれど。
とりあえず、この程度なら倒れることはなさそうだった。
「えい、えいっ!」
私はとりあえず、三尾猫と格闘。
数分が経過すると相手は目を回して倒れるのだった。
【レベルアップしました♪】
そのすぐ後に、軽快な音と共にそんな表示が出る。
どうやらこれがレベルアップというもの、らしいけれど……。
「えっと、新スキル取得。火属性、水属性、風属性……? あれ、でもスキルは一人一つって、ミキが言っていたような気がするけど」
なにやら、たくさんの言葉が羅列していた。
たぶん魔法の類なんだけれど、初心者なので理解ができない。
「とりあえず、こんどミキに相談してみよう! それじゃ――」
ひとまず町に戻ろう。
そう思って、回れ右しようとした。その時だった。
「へ……?」
目の前に、大きな熊が現れたのは。
【ビッグベア】――それは、私に訪れた最初の危機だった。
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