第7話 誘


 ――ふざけるなよすめらぎ!!


 今まで見たこともない剣幕で怒鳴り出した猫先生を、「皇」と呼ばれた金髪は殴り返した。それでも猫先生は倒れなかったから他の職員も来て大騒ぎ。


 気づけば私は先生達と離され、一人真っ白な談話室に座らされていた。


 壁も床も清潔な白さを保たれている部屋。あるのは低い高さの四角い机と向かい合わせに置かれたソファ。私の手当てをした職員は直ぐに出て行き、嫌に無機質な空間と静けさだけが部屋を満たしていた。


 点滴スタンドにかかったメディシンを見上げる。ヤマイの緩和だけではなく、傷の治りなどを促進する効果があるので使われているのだろう。抜いたカテーテルは無言で刺し直された。


 そんなことはどうでも良いのだが。


 ――流海はもう……長くない


 浮かぶのはベッドで眠る流海の姿。


 その姿を見たことは初めてではない。


 流海の方が大きな怪我を沢山してきたから。


 あの子は何度も酸素マスクをつけて、体中にギプスと包帯を巻いて、輸血をされるんだ。


 知ってる、知ってる、知ってる。見てきた、見てきたんだ。何回も、何回も、何回も。


 それでも流海はいつも「大丈夫だよ」って言うから。笑うのを堪えて私の頬を撫でてくれるから。


 悔しくて堪らない。


 私達は何を間違えて、どんな悪いことをしたと言うのだ。


 考えていれば扉をノックする音が響いて意識を向ける。


「どうぞ」


 その一言を無機質に返せば、入って来たのは見たことのない少女だった。


 紫がかった黒髪に視線が行く。緩くウェーブがかかった短髪で、涼やかな目元は凛々しい雰囲気を出している。


 彼女の見た目を一言で表すならば「綺麗」だ。その単語が一番しっくりくる。


 彼女は隣の地区にあるお嬢様学校の制服を着ており、空気まで清らかな気がした。私と同じ生物だよな、この子。


 膝丈のフレアスカートを整えて正面のソファに座った彼女は、どことなく緊張した色を顔に浮かべる。


 私は黙って彼女を見つめ、少女は一瞬だけ視線を下げた。


 恐らく同い年が、彼女の方が一つ年上くらいだろう。


 咳ばらいをした彼女は、膝の上で重ねた手を握り直した。その左手には手袋が付けられている。


「はじめまして、私は朝凪あさなぎいばらと申します。空穂さんへの説明のために参りました。よろしくお願い致します」


「はじめまして、空穂うつほるいです。よろしくお願いします」


 偉く真面目な喋り方をする子だと思った。目を引く綺麗さを纏っているのに、態度は正反対に低い姿勢を取っているから。


 私は必要最低限の敬語を使い、朝凪を見つめた。


空穂うつほ流海るかさんについて説明を始める前に、お二人が出会われたペストマスクについて話す必要があるます。その為、先に空穂さん……ぃや、その、涙さん……の、方が良いですかね」


「好きに呼んでいただいて大丈夫です。区別をつける為にも名前の方がよろしければ、そちらで」


「あ、りがとうございます。ぇっと、はい、では先に涙さんがペストマスクとおこなったやりとりについてお伺いしても良いですか?」


 朝凪が一瞬だけ委縮しかけた姿を見る。やはりその姿は見た目に反して自信がなさそうだから、私の肩の力は抜けていくのだ。


 思い出した光景には流海がいる。それが黒い上着に掻き消されて、「皇」と呼ばれた男が笑うから。


 私の中で苛立ちがくすぶった。


「ビルの屋上、柵の外でうずくまるペストマスクを見たのが最初です。飛び降り自殺をしたいのかどうなのか判断がつかなかった為、流海と一緒にゴミ袋やネットを積んでクッションを作りました。そこに落ちたペストマスクは特に死にたがっている訳ではなさそうだったので応急手当てをしました。その後は救急車を呼ぼうとしましたが、ペストマスクがナイフを持っており、救急車も知らなかったので、取り敢えず家に連れ帰って看病を。そしたらペストマスクが砂時計を探す素振りを見せたので、私は路地へ向かいました。白い砂時計を見つけたので帰ったら金髪の方がおられて、家の中は半壊。流海も怪我をしていた為に金髪の方と殴り合っていればペストマスクが弟を連れて消えました。以上です」


 頭の中に浮かぶ映像をなぞって言葉を並べていく。見たことをそのまま口にするのは余りにも平坦な作業だったが、脚色を足して無いことを在るように語る性格はしていない。そのままの状況と、どうしてその判断をしたのかについてだけ伝えておこう。


 朝凪の重ねられた手を見ながら話を終わる。基本的に人の顔を見て話はしない。表情を見るのは必要最低限だ。それは結果的にヤマイを発症させない予防になるから。


 だから今回も話を終えてから朝凪の顔を見る。


 そこには目を瞬かせている彼女がいるから、私は彼女を凝視しておいた。深い紫の瞳だ。綺麗だこと。


「ペストマスクに関しては以上ですが、まだ何か話しましょうか」


「ぁ、いや、だ、大丈夫です。ありがとうございます」


 朝凪は慌てたように手を振って下を向く。私の顔はそんなに怖いのだろうか。聞かないけど。


 前髪を触って深呼吸をした朝凪は、背筋を伸ばし直していた。


「そう……ですね……はい、まず、涙さん達が出会ったペストマスクについてですが、彼らは異世界の者です」


「あ?」


 気分が急転直下する。


 私の頬には青筋が浮かんだ自信があり、朝凪の顔からは一気に血の気が引いた。


 ペストマスクが異世界から来た者だ? 外国人ではなく異世界人? コスプレイヤーではなく異世界の奴? 


 ふざけるのも大概にしろよ。


 こちとら弟が瀕死の重傷食らわされて頭に来てんですけどマジで。


 口にしなかった私の考えは空気で朝凪に伝わったらしい。彼女は綺麗な顔に冷や汗を浮かべ、必死に言葉を探している様子だった。


 私は一度息を吐き、朝凪の表情を確認した。


「……すみません、怖がらせました」


「い、ぃえ、だ、大丈夫です」


「良かったです。貴方の事を朝凪と呼ばせていただいて良いですか。朝凪さんの方がいいですか。そして貴方の敬語が気を使ってのものならば普通に話して頂いて大丈夫ですよ」


「あ、ぁ、えっと、朝凪で大丈夫です。敬語はちゃんとした話し合いだったので気を付けてて……その、ありがとうございます。ごめんなさい。そう言って頂けるなら多分、徐々に砕けていくかと……」


「ありがとうございます。別に悪くないと思うので謝らないでください。初対面の状態で敬語を使えない方が私は苛立つ質なので。皇とか言う金髪の何倍も、朝凪の方が話しやすい」


 素直な言葉を口にすれば朝凪は頬を軽く染めた。それから手で顔を扇ぐ姿は可愛いものだ。本当に気を遣ってくれていたらしい。


 だからこそ、そんな気を遣える子がここで冗談を言うとは思えなかった。恐らく説明役がパナケイアの職員だったならば「馬鹿にしているのか」とキレただろうし、「皇」が来ていたら沸点大爆発だった自信があるが。


 それでもこの子は、たぶん真面目な子だ。印象的にそう言う子。こちらに気を遣えない冗談を言う感じではない気がする。会って数分なので本当に「気がする」の範囲でしかないが、自分の感覚を疑い始めたら終わりだ。


 自分が何を信じるかは自分で決める。


 だから今は、朝凪の言葉を信じて話を進めていよう。


 今ここで怒ることこそ話が進まなくて邪魔だ。


「嫌な態度とった私の方が悪いです。ごめんなさい。あのペストマスクは異世界人ってことですね」


「そ、そうなります……こんな話、信じられないでしょうけど」


「面白い発想だとは思います。正直半信半疑ですけど。朝凪の真面目な態度と、自分が見た光景から嘘だとは思わないようにします。そうしないと話が進みませんし」


 左腕に刺し直された点滴の管を触ってみる。そこから体に入れられているメディシンは、きっと流海も入れられているのだろう。


 朝凪に軽く視線を戻せば、彼女はやはり驚いたような顔をしていた。表情豊かだな。


「……夢や幻だとは思われないんですね」


「都市伝説とかは信じるようにしてるだけです。それに、今自分達が住んでいる世界しかないなんて言う考え方は傲慢なのではないですか? 例えるなら……そう、宇宙に散らばる惑星の中で、生物が地球にしかいないと思うのと同じかと」


 例えを口にし、朝凪と自分自身を納得させようと試みる。


 本当は異世界なんて夢物語のようなのだから。信じようとしてはみるが真に受けることはそう容易くできない。


 しかし、現に流海はペストマスクと共に目の前から消えて、戻って来たと思ったら余命宣告されたのだ。


 それを夢か幻覚かと拒絶できればどれだけ良いか。それでも、流海の余命を口にしたのは私達をずっと見て来てくれた先生達だから疑う余地がない。二人が言ったから私は信じる。自分が信じるものは自分で決める。


 だから私は異世界の存在を信じてやろう。


 朝凪は一度深呼吸をすると、私の目を再び見てくれた。


「そうです。宇宙に数多の星々が存在するように、世界だって無限に存在している。ただ自分達がいる場所を基準にして外を知らないから、誰もが「ない」と笑うんです」


「理解しました。それで、その異世界人は何者ですか」


「黒いペストマスクをつけた彼らは実働部隊です。向こうの世界――アテナから来る存在」


 ――アテナ


 それが異世界の呼び名だと勝手に理解する。


 朝凪は膝に置いた手を不安そうに握り合わせていた。


「彼らの目的は一つだけ――ヤマイを殺すことです」


 ヤマイを殺しに来る。


 私達を殺しに来る。


 ――流海を殺しに来る。


「は?」


 また低い声が出た。


 自然と零れた。


 朝凪が反射的に二の腕を摩る動作をし、私はその一挙一動を見つめる。


 冷えていた頭に血が上っていく気がした。沸々と、沸々と。


「アテナとこっちの関係って悪いんですか?」


「……悪いです、とても……最悪と言っても過言ではない程に」


 朝凪は腕を再び摩る。彼女の視線は斜め下に送られ、重たそうな口を開いていた。


「アテナとペストマスクについて話すより先に、流海さんの話をさせてくださいね……その方がきっと、分かりやすいから」


「……どうぞ」


 背中を軽くソファの背もたれに預ける。そうすれば朝凪も肩から緊張を解き、居住まいを正していた。


「涙さんと流海さんが手当したペストマスクはアテナの実働部隊員でした。そして、そいつに流海さんは連れて行かれた。無理やり……アテナに」


 心臓が強めに鼓動を刻む。


 掌に嫌な汗をかく。


「アテナの空気はこちらの空気とは違うんです。吸い込めば体を蝕み、肌に触れるだけで痣が浮かぶ」


 ――空気が違う。


 その言葉だけで納得させられた。納得せざるを得なかった。


 流海は無理やり違う世界に連れて行かれて、異物を吸い込んだのだと。だから体は拒否反応を起こすし、命だって削られる。


 私の中にある熱が増加していく。


 耳の奥で木霊こだましたのは、鳥頭の最後の台詞だ。


 ――災いたる……ヤマイの、者はみな――死なねば、ならない


 あの、クソ鳥頭ッ


 私は奥歯に力を込め、カテーテルを止めるテープを引っ掻いた。


「……流海は、毒の中に身を浸けていたわけですね」


「はい、それが一分以上続いていたようだから、こちらで発見された彼の体は……」


 朝凪が言い澱む。


 私はもう一度テープを強く掻き、熱に侵されそうな頭で考えた。


「毒を抜く方法はないんですか」


「……その方法は発見されてないんです。出来るのは、メディシンを投与し続けて毒の進行を遅らせることだけ。その投与も三ヶ月に一度では、間に合わないかと」


 ――流海はもう……長くない


 また柘榴先生の言葉が蘇る。


 私は自分に打たれているメディシンを見上げて、荒くなりそうな呼吸を整えようと努めた。


 瓦礫の下で繋いでいた手を思い出す。


 声をあげて泣いていた幼少期が浮かび上がる。


 どれだけ怪我をしても、どれだけ痛くても、流海と手が繋げていればよかった。


 どれだけ周りが引き剥がしにかかっても、私にすがってくれたあの子を離したくなくて。同じように縋りたいと思った私は正しいのだと思えて。


 どれだけ体が痛くても心には安堵があった。流海の体温が背中にあって、繋いだ手の感触があれば頑張れた。


 双子だとか男女だとか、そんなことは全てどうでもいい。体の作りが違ったって、声変わりが私になくたって、身長に差ができて顔つきが似ていなくなったって。


 あの子は私の唯一の片割れだ。


 あの子は私の、愛すべき弟だ。


「私は何をしたらいいんですか」


 口をつぐんでいた朝凪に先を促す。


 目が合った彼女が息を吸った音を過敏な神経が聞き取り、朝凪が生唾を飲み込んだ姿も見逃さなかった。


 メディシンの定期的な投与。


 それをパナケイアは、きっと無償では行わない。


 パナケイアはヘルスの味方であって、ヤマイの味方ではないのだから。


「アテナの実働部隊に対抗する部隊が、私達の世界――アレスにもあります。統括はパナケイアが行い、その特徴は白いペストマスクと白い装束」


 私達の世界は――アレス。


 そこに作られた、黒に対抗する白。


 私は静かに朝凪の目を見つめ、言葉を聞いていた。


「アレスの実働部隊の役割は二つ。一つはアレスにやって来たアテナの部隊を倒すこと。相手の思う通りにヤマイを殺させない為に」


「へぇ……二つ目は?」


 朝凪が少しだけ言葉を選ぶ素振りをする。自信がなさそうな目で私を見てくる彼女は、何度も膝の上で手を握り直していた。


「……涙さんは、メディシンの材料が何か知ってますか?」


「知りません」


 メディシンはヤマイを緩和し、傷の治りを早くする薬。


 それが知っていることだ。それ以外など知らないし知る由もない。


「メディシンの材料は――アテナにある植物なんです」


 頬が痙攣する。


 自分達が嫌々検査を受けて投与されていた薬の材料が、なんだって?


 私はいぶかしんだ顔をした自覚があり、朝凪は唇を軽く噛む仕草をした。


「……アテナにある木の実や植物、それらを合わせて作り出されるのがメディシンです」


「私達に入れられてたのは……異世界の薬だったってことですか」


「元を辿ればそうなります」


 朝凪は否定しない。私はメディシンのパックを見上げて、点滴スタンドを軽く揺らした。


「体に害はないから使われてるんですよね?」


「そこは大丈夫です。害あるものを投与はされないので」


「なら良いです」


 メディシンはヤマイを緩和させる薬。その原料は異世界アテナで取ることが出来る。


 だが、朝凪は言った筈だ。


「アテナとアレスの関係は最悪なんですよね?」


「えぇ……アテナは私達を毛嫌いしています。一歩あちらへ踏み込めば殺しにくる。でも私達もヤマイを緩和ないし、いつかは完治させる為にアテナにある材料が欲しいんです」


「アテナからすれば、私達は侵略者か奪略者認定されてるってことですか? 行き来できるなら話し合いでもすればいいのに」


「……ですよね。でも、話し合いの場さえ設けてもらえないんです。だからこちらも強行的に材料を採りに乗り込み、殺されかける。白のペストマスクは守護者であると同時に、戦闘員の役割も兼ねています」


 守護者であり、戦闘員。


 守る為に戦う。誰も知らない所でヤマイを守り、治す為。


 ここで知るべきは、一体どちらが先だったかと言うことだ。


「アテナから戦闘員が送り込まれるのと、アレスから材料を採りに赴いたの。先に始めたのはどちらですか?」


 朝凪の肩が揺れる。俯き加減の彼女は「涙さんは聡い方ですね」と小さな言葉をくれた。


「……アテナです」


 あぁ、最低な相手だこと。


 説明を聞いていく毎に苛立ちが募っていく。


 アテナにはヤマイを緩和させる為の材料がある。


 それでも取りに足を踏み込めば殺されかける。しかも話し合いの場は作ってもらえない。嫌われているから殺されかける。


 アテナから送られてくる黒い戦闘員は、こちらが足を踏み入れる前からヤマイを殺しに来ている。緩和させる材料を譲ってくれるわけでもなく、殺しに来て根絶やしに。


 まるで殺菌でもするみたいだな、反吐が出る。


 脳裏に浮かんだ黒い衣装の鳥頭。


 滑稽だな。私は自分達を殺しに来ていたかもしれない相手を気にかけたんだ。


 流海はそいつにアテナに連れ込まれ、毒の中に浸された。


 知らずに愚かなことをした私自身への苛立ちが募る。


 聞いただけではあるが、アテナの印象がマイナスから始まった。


 私は朝凪に確認する。


「私がアレスの実働部隊に入れば、流海はメディシンを投与し続けてもらえますか?」


「……正確に言えば、流海さんに投与するメディシンの材料を涙さんが集めてくればいいの」


 朝凪の声は言いづらい言葉を絞り出したようなものだった。


 スカートの上で握り締められた彼女の手を見る。


 流海にメディシンを投与したければ、その材料を集めてこい。


 集めて来ないなら投与は出来ない。


 投与出来ないならば、流海の命は短くなるだけ。


「へぇ」


 点滴スタンドを握り締めて朝凪を見つめる。


 私の苛立ちはパナケイアに向き、アテナに向き、鳥頭に向かった。


「メディシンはまだ緩和薬でしかないけど、パナケイアはそれ以上のことだって研究してますよね?」


「はい。ヤマイを完治させる薬を探すことがパナケイアの目標ですから。その前進がメディシンであり、アテナの毒素などを研究することも続けています」


「なら私が多くの材料を集めれば、パナケイアは流海を治せる薬も作ってくれますよね」


「……直ぐにでは難しいでしょうけど。きっと全力は尽くしてくれるかと」


 私は朝凪の瞳を凝視する。最初は揺れていた紫の瞳は、それでも私から逸らされることだけはなかった。


 私を見つめ返して、前のめりの私に応えるように彼女も上体を傾けてくれる。


 私は息を吐き、朝凪に向けるべきではない感情を仕舞い込んだ。


「ごめんなさい。今詰め寄ったって朝凪にだけ負荷をかける話でした。私は貴方に怒っているわけではないのに」


 朝凪が目を見開く。彼女の紫の瞳にはやっと光が射した気がした。そろそろ緊張も解けてきたかい。


「話してくれてありがとうございます。それから、改めてよろしくお願いします。私は流海の為ならアテナに行くし、材料を集めてきます」


 例え向こうの世界が毒の海だろうとも。


 例えアテナにいる奴らが私達を嫌いだろうと。


 例え自分が殺される対象に入っているとしても。


 流海の為なら、私はどこにだって飛び込んでやる。


 息を吸った朝凪は肩に力を入れ、静かに言葉を吐き出した。


「……ようこそ、空穂涙さん。私達はアテナに対抗するアレスの実働部隊――ワイルドハントです」


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