第20話 試験休み突入!!
「答案の返却は以上だ、今回50点以下の科目があった奴はさっき話したように夏休み中に補習が有るから心して受けろよ……もし受けに来なかったら、夏休みの課題が倍になると思っとけ」
そう言ってクラス担任のザック先生が告げながら、何人かの生徒の眼をジッと見る。
「後、今週1週間試験休みだからって問題を起こすなよ……特にセン! テメェは周りに迷惑かけるんじゃねぇぞ!」
「いや、何で俺だけ名指し!?」
「そりゃテメェが1学期にやって来た事を思えば、自明だろうがよ!」
そんなバカなと思い周囲を見回してみると、クラスメイト全員が頷いていた!
――えー……
「ともかく節度を持って、それなりに楽しめ。後、何か事件や事故に巻き込まれたら速やかに学園へ連絡しろ! 俺からは以上だ。くれぐれも来週の終業式に出るの忘れんなよ」
ザック先生が話し終わって部屋を出ると同時、教室の中で音が弾けた。
友人に話しかける者、女子生徒に休み中の誘いをかける奴、恋人に話しかける野郎……アイツら爆発しねぇかな。
「……センはん」
「うおっ……って、ティガースか」
突然どんよりとした声を背後からかけられ驚くと、振り返った先には肩を落としたティガースとショータが立って居た。
「点数……どないやった?」
テスト用紙を握りしめ聞いて来るティガースに、俺は満面の笑みを返してやる。
「コイツを見て驚け!」
「こっ……これは!」
目を見開いて驚くティガースに対し、ショータが微妙な顔をする。
「60点、58点、67点、56点……あっでも、雷魔法入門の86点は凄いね」
「…………なんでや」
俺のテスト用紙を強く握りしめて、ティガースがボソリと呟いた……ってか、俺の回答用紙ぐしゃぐしゃにするなって。
「なんで小テストの時はワイと同じ点位だったセンはんが、一個も赤点無いんや!」
そうティガースが叫ぶと、クラス内で俺やティガースの点数についてヒソヒソと話している声が聞こえて来る……ヤメロ、俺が点数悪かったのばらすな。
「ジ、ジークはんはどないだったんや?」
恐る恐ると言った様子でティガースが問いかけると、ジークが嫌そうな顔をしながらもテストを突き出してくる。
「どうせコイツもそんな点数良く……って、72点、65点、69点、63点、88点?」
……。
…………よし。
「破っていいか?」
「ざけんな」
悪態をつかれながら、テスト用紙をぶんどられる。まさかジークがそんなに点数いいなんて……そう思ったが、意外とコイツ部屋で勉強してたような気がする。
「……はぁ、アンタら何をどんぐりの背比べしてんのよ」
ジークが俺より高い点数だったことに未だショックを受けていると、クラスメイト達と話し終えたシャーロットに呆れられた。
「おいシャーロット、俺をティガースと一緒にするな! 俺は赤点一個も無いぞ!」
「だから、それがどんぐりの背比べだって言ってんの!」
そういがみ合っていたところで、横からユフィが冷めた声をあげる。
「……あれだけ私が教えたのにその点数なら、大差ないと思うけど?」
「……はい、すいません。次からは頑張ります」
「……はぁ、俺は先に行ってるぞ」
ユフィに誠心誠意謝罪していると、ジークが鞄を手に席から立ち上がって廊下へ出て行こうとする。
「おい待てって、シャインさんの所へは皆で見舞いに行くって言っただろ」
「チッ」
ジークが露骨に嫌そうな顔をして舌打ちするが、それを無視してまだクラスの女生徒達と話してたリーフィアを急かす。
「おーいリーフィア、もうジークがシャインさんの見舞いに行きたくてしょうがないってさ」
「誰がっ」
声をかけるとリーフィアがクラスメイト達と話を終えて、こちらへと歩いて来た。
「それじゃあ俺らはシャインさんの見舞い行くけど、ショータ達はどうする?」
未だに項垂れているティガースを眺めながらショータに聞いてみると、苦笑いが返ってくる。
「誘ってくれるのは凄く嬉しいんだけど、僕はティガース君の来週からの補習に向けての勉強を手伝うよ……なんせ3科目あるからね」
「了解……まぁ、頑張ってくれ」
「……センはんにも、ジークはんにも負けた……」
うつろな目でブツブツ呟いているティガースを視界の端に追いやり、まだ殆ど残っているクラスメイト達に別れの挨拶をしておく。
「じゃあな皆、終業式にまた会おう! ……後、くれぐれも問題起こすんじゃねえぞ」
「お前が言うな!」
そんなクラスメイト達の叫び声を背に受けながら、廊下へと出る。
既に夏休みや、この試験休みの過ごし方で盛り上がってるユフィ達を横目に、先を歩くジークへ話かける。
「シャインさん最近学院都市の病院に転院したって言ってたよな。学院からどの位の時間かかるんだ?」
「大体歩きで10……いや、20分てとこか」
10分と言おうとした所で、ワイワイ喋りながらゆっくり歩く皆を見てジークが言いなおす。
「そう言えばシャインさんには、俺達が来るってのは伝えたんだよな?」
「まぁな。ただ、俺が人を連れて行くなんて、まるで信用してない様子だったがな」
そうジークに言われて、そりゃそうだろうなと妙に納得しながら、ナナやミヨコ姉が待つ学園の正面口に向けて歩き始めた。
◇
ミヨコ姉達と合流した後、学院都市内にある病院に到着したのは丁度20分経ったところだった。
そこから受付をしてシャインさんの病室へと行こうとしたのだが……受付の人に、ジークが俺達を連れて来たことに驚かれた。まぁ、これまで1度も無かったんだろうからな。
魔石を使った昇降機に乗り込み4階へと上がると、目的の403号室の扉を開けた所で、素っ頓狂な声が部屋の中から帰ってきた。
「本当にジークが人を連れて来たっ!」
声がした方を見てみれば、直前まで傍らにある雑誌を読んでいたのか、ベッドから上半身を起こし目を見張っている少女がいた。快活そうな若草色の短髪や、血色の良い顔色からは入院患者であると言う事をまるで感じさせない。
「昨日散々説明しただろうがバカ」
「いやだって、ジークみたいなのと話しようとする変人なんて私以外に居ると思ってなかったから、思わずびっくりしちゃった」
言葉通り本当に驚いているのか、まだ目を見開いている。
「驚いてるところなんだが、自己紹介させて貰うと俺がジークと同室のセン・アステリオスだ。よろしくシャインさん」
そう言って挨拶すると、シャインさんが手を横に振った。
「シャインさんとかムズムズするからヤメテー、名前のアリアで良いよ。君がセン君か……噂はジークから聞いてるよ! とすると、右からナナちゃん、ユフィさん、シャーロットさん、リーフィア様、ミヨコ先輩であってる?」
そう問いかけられて、今度はこっちが驚きで目を見開いた。
「えっと、何ですぐ分かったのかな?」
ミヨコ姉がそう尋ねると、アリアはニヤッと笑った。
「それはですね……なんででしょう?」
「事前に特徴を聞いてたから?」
ナナがそう問いかけると、アリアが左右の指を交差させて「ブブー」っと答えた。
「正解だけど、間違ってます……残り10秒、9、8」
勝手にカウントを始めたアリアの質問に皆で首を捻ってると、ジークが口を開く。
「全員髪の色が違うからだろ?」
「あっ、ジーク! アンタが答えちゃったら、つまんないじゃん!」
「うるせぇバカ、取り合えず今回の試験の解答持ってきてやったぞ」
そう言ってジークがカバンから取り出した模範解答の用紙を、ベッド脇のサイドボードにきちんと置いたアリアは、俺達に改めて向き直る。
「ありがと……だけど、折角みんなが来たんだから、学院の話を色々聞きたいな! なんかすごーく面白いことやってたみたいだし?」
そう言ってアリアにニヤニヤ見られた俺が肩をすくめると、皆は1学期に起こった出来事を我先にと語り始めた。
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