第18話 期末試験終了!
「……やっと終わったー」
回答用紙を前の席――ジークへ渡した所で、机へと倒れ伏した。
俺は勉強会と言う名の拷問を乗り越え、連日睡眠時間1時間と言う中で執り行われた極限状態の期末試験を乗り越え、何とか全科目の試験を受け終わった。
――正直、今後は毎日ちょっとずつ勉強しようと思うくらいにはキツかった……まぁ、やらないけどな!!
「よし、回答全員分集まったな。それじゃあ今日で試験は終わりだ、この週末はあんまハメ外し過ぎるんじゃねえぞ」
そう言ってクラス担任であるザック先生が居なくなると同時、各所から歓声が上がった。
「セン、大丈夫?」
グデッてる俺を見てユフィが心配そうな声を上げるが、その前に座ったシャーロットが興奮した様な声を上げる。
「ユフィ、そんな倒れてる奴の事はいいから、早く打ち上げに行きましょ!」
「シャルはちょっと張り切り過ぎじゃない? 私も楽しみだけど、結局何時もやってる事と変わらないでしょ?」
リーフィアがそう尋ねると、シャーロットが大きく首を振った。
「リーフィア、貴方の考えは甘いわ。打ち上げって言う物はねぇ……」
そんな語り出しでシャーロットが自身の打ち上げ論を語り出した所で、ジークが席を立った。
「お疲れ、お前は寮に帰るのか?」
そう尋ねると、ジークが一瞬嫌そうな顔をしたが応える。
「一応病院へ行って来る。来学期からアイツもこのクラスに来るから、試験問題を寄こせって言われてんだよ……ったく、めんどくせぇ」
口ではめんどくせぇと言いながらも、どこか普段より楽し気なジークに肩を
「ほいほい、また後でな」
そう言って教室から出ていくジークを見送ると、また別の奴から肩を叩かれ振り返った先には、真剣な顔したティガースと苦笑いしたショータが立っていた。
「ん? どうかしたか?」
「……センはんは、これからユフィちゃん達と打ち上げでっか?」
「まぁ、その予定だが。お前らはこれからクラスの男連中と打ち上げだっけ?」
そう聞いた瞬間、ティガースに拝まれる。
「後生やから、ワイらにもその打ち上げ参加させて貰えへんか?」
ティガースがそう言うと同時、クラスの男どもまで俺を拝んできた。
「いやいや、俺の一存でどうにかなる話でも無いし、ユフィ達に直接聞いてみれば……」
そう言った所で、ティガースが半泣きの表情で訴えかけて来る。
「それが出来れば苦労は無いんや! ウチらだってユフィちゃん達と話はしたい……せやけど、アノ子らに下手に話かけて嫌われたら生きていけへんやろ! そのてんセンはんなら、アノ子らに何言っても許されるやろ?」
「いや、何言ってもは許されないだろ……てか、ユフィなんか他の奴への対応よりぜってー当たりがきついぞ」
シャーロットやリーフィアと違ってユフィは基本的にクラスメイトに対し、常に敬語だ。その容姿も相まって取っ付きにくい所も有るが、割と丁寧にクラスメイト接していたように思う。
――俺に対しては、割と口さがないからなぁ……
「それは、そんだけセンはんの事を信頼してるってことやろ。一生のお願いや、彼女たちと打ち上げを……」
そうティガースが言った所で、シャーロットが割って入って来る。
「セン、ソイツと何の話してるの?」
「あー、それがこいつ等が俺達と……「あー、一緒に打ち上げしたいって事? 嫌よ、汗臭くなりそうだし、そもそもお店6人で予約しちゃったし」」
そうシャーロットが言った瞬間、クラスの男子のほとんどがその場で泣き崩れた。
――いや、お前ら息合いすぎだろ
「センも、そんな連中の相手なんてしてないで、サッさとミヨコさんやナナちゃんと合流しましょ」
そう言われて廊下の方を見てみれば、既にユフィとリーフィアが待っていた。
「……その、悪いな」
頭を掻きながら言い残すと、背中に怨念を感じたような気がした。
◇
ミヨコ姉やナナと校舎の外で合流すると、俺達は街に向けて歩き出した。
時刻は午後3時。周囲には俺達同様に打ち上げを行う予定の生徒達で賑わいを見せている。
「そう言えば、ナナはテストどうだったんだ?」
楽しそうに先頭を歩くナナに問いかけると、ナナの足が一瞬止まった後ジト目で睨まれる。
「折角試験のことを忘れて打ち上げしようとしてるのに、お兄ちゃんてばデリカシー無い!」
頬を膨らませながらナナに、そう言われてしまう。
「いや、皆であれだけ勉強したからな。どうなったかなって思って……ごめんな」
軽く手を合わせて謝ると、ナナは元の弾んだ足取りに戻ったが、そこで話題を振り返してきた。
「そう言うお兄ちゃんは試験の感触どうだったの? ずっとユフィお姉ちゃんに付きっ切りで勉強教わってたけど」
「俺は……まぁ、ボチボチだったかな」
「ボチボチは、聞き捨てならないんだけど?」
言葉を濁した所で、ユフィが話に割って入って来た。
「いや、これでもすげぇ頑張ったんだって!」
「勉強会初日の夜から大騒ぎしてたのに?」
「ぐっ……でも、それ以外の日は頑張ったからな!」
そう言って胸を張ると、ユフィがため息を吐いた。
「まぁまぁユフィ、文句はセンが赤点取った場合にしましょう」
リーフィアがそう取り成し、ミヨコ姉が街中にある一つのお店を指さした。
「今日の予約していたお店ってあそこだよね? 喫茶マリエールって書いてあるし」
ミヨコ姉の視線の先を見てみれば、ソコにはテラスと解放された扉から覗くシックな店内が印象的な喫茶店があった。そして今テラスには数多くの女生徒達が、話に花を咲かせている。
――男、俺以外居ないじゃん
思わず心の中でそう叫びながら、店へと近づくと店員の一人が弱った顔をしながら寄って来た。
「すいません、本日は既に予約のお客様で満席となってしまっているのですが……」
「本日6名で午後3時から予約していたヘイズです」
そうシャーロットが応えると、店員が確認してきますと言って店内に下がり、駆け足で戻って来た。
「すいません、確認がとれましたのでご案内いたします」
そう促した店員はどこか恐縮している様子で……恐らく、店長か何かにシャーロットの身分を聞いたのだろう。
「こちらへどうぞ」
案内された先は、店の最も奥まった場所であり、半個室となっている落ち着いた席だった。
適当にそれぞれ席に着くと水と手拭きを渡され、店員が一礼する。
「お決まりになりましたら、お呼びください」
そう言って店員が立ち去った所で、皆でメニュー表を眺め始める。
ああでもない、こうでもないとメニューを決めあぐねている様は、完全に只の女学生のもので、色々なモノを背負っている彼女たちの、そんな姿を眺めていると思わず口の端が上がってしまう。
「皆は決まったけれど、センはどれにするのかしら?」
「ん? ああ、俺はカフェオレとサンドイッチで」
ボーっとしていた所でリーフィアにそう尋ねられて、思わず目に付いたメニューを適当に口にした。
「えー、お兄ちゃん折角このお店来たのに甘い物食べないんだ。まぁいいや、すいませーん」
俺が甘い物を選ばなかった事に不服を示したナナだったが、直ぐに気持ちを切り替えると元気よくナナが店員を呼んだ。
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