第1話 崩壊
あの日、ぼくたちの世界は崩れ去った。とある人物らのたった一言によって。
その日は特に何の変哲のない、いつもと同じ平凡な一日になる……はずだった。
事の発端は、一週間前。科学の発展している某国のとある研究チームによる、とある予言についての研究結果が、科学的な根拠とともに大々的に発表された。
彼らは言った。「一週間後、地球は滅亡する」と。
僕は、それまでの世界とは、日常とは何だったのかと思い、振り返ってみたのだが、実にくだらない日々だったと記憶している。
皆がみんな社会の何等かに不満を抱いて、愚痴を言ったり、中身のない話で盛り上がったり、なんとなく嫌なことがあったからと死にたいなんて口走ったり。
やりたいことより、押し付けられた事を優先させられ、自分の好きなことは何一つ余裕をもって自由にできない日々。世間体ばかりを気にして、『私』より『公』を優先させるのが美徳とされ、仮に自分のこと優先すると後ろ指をさされる。生きるというよりも、ただただこなすだけの人生。自分の人生というより他者のために消耗するだけの人生。
そんな日々はまるで果てのない道をただただ必死になって回り続けるモルモットのようで、機械的で何の面白みのない日々を繰り返すだけの救いようのない日常だった。
月曜から金曜日までなんとなく過ごし、ゲームのように決まっている選択肢をとって、人に同調し続ければゲームクリア、人に刃向かったらゲームオーバー。無責任な正義感を振りかざし、人を攻撃する免罪符と成し、中途半端な優しさで弱っている人の心をえぐる。それを繰り返し、騙し騙されの上辺だけのやり取りをする。
そんなふうに永遠に正解を答え続けるだけの単純なゲーム。
……そう。ただそれだけの日々。かつては憎んでさえいた日常の光景。それなのになぜ、失うとわかってからこんなにも愛おしく感じてしまうのだろう。
夢であってほしい。こんなのはきっと悪い夢を見ているだけなんだ。僕には夢という都合のいい世界に縋ることしかできなくて、浅い眠りに落ちた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます