第7話
四人は街の食堂で腹ごしらえをした後、冒険者ギルドへ寄り魔石を買い取ってもらう。
そして次のダンジョンへ向かうのであった。
「えー、疲れたよ~」
「そんなことを言ってもダメです。もう一つダンジョン攻略へ行きますよ。次はBランクです。気合を入れてくださいね」
「シュウ…それは一気にランクを上げすぎではないですの?」
「そうですか?アイカなら大丈夫ですよ。もし危ないと思ったら魔法で助けてあげてくださいね」
「それは俺らがお前に言うセリフだっての。お前が補助魔法かけてやれよ」
「…必要になったら僕だって対処しますよ」
こいつ…助けるつもりはねぇな、とロイは思った。
シュウは本心でアイカとカロリーナとロイがいれば、シュウ自身の助けはいらないと思っているからであろう。
先ほどのアイカの戦いで何となく分かっている。おそらくBランク程度ならアイカ一人でも大丈夫だろう。戦い方はちょっとアレだけど。
しかし、いくら強さはあっても経験自体は少ない。その点がやはり心配である。
ロイはカロリーナと視線だけを絡めて頷きあう。危険と思ったら二人でアイカを助けよう、と。
そんな二人の思いは良い方に裏切られ、次のダンジョンは昆虫のような見た目の魔物以外は難なくアイカ一人で攻略したのであった。
「あー…気持ち悪かった…」
鳥肌のたちっぱなしだった両腕を、ずっとさすさすと擦りながらアイカはぽつりと呟いた。かと思えば突然喚きだした。
「何なのあれ?だんご虫?ムカデが迫ってくる?こわいこわい!でっかい虫いやー!」
「何言ってるんですか。魔物だからあんなの普通ですよ。人間と同じサイズのカマキリもどきとか普通にいますよ」
「うえー…やだ、勇者としてやっていける気がしない…」
「アイカ、虫系はわたくしが魔法で焼いてしまいますから!
それにしてもアイカはお強いのですわね。独特な剣?さばきですけれど、惚れ惚れしてしまいましたわ」
「えへへ、そうかなー?ありがとう、カロリーナ!」
褒められたからか、ぽっと頬を染めててへへと頭をぽりぽりするアイカを見てあまりの可愛さにカロリーナは思わず悶えた。
カロリーナは見た目に反して実は可愛いもの好きである。小柄で素直な…小動物のようなアイカをとても気に入ったようである。
そんな女性二人を眺めながら、男性二人は別の話をしていた。
「あんなちっこいのに強えな。やっぱり勇者なんだな」
「そうですね…いろんな意味で想像をはるかに超えていましたが。しかし、先程のダンジョンは明日の予定だったのですが。今日一日で終わってしまいました。
せっかくだから明日は依頼でも受けてみますかね」
「お前、それはただ単に儲けたいからだろ」
「いえいえ!あくまでも、勇者教育の一貫ですよ」
「…そういうことにしといてやるよ」
そんな男性二人の会話は女性二人の耳には一切入らないまま、アイカの異世界一日目は終了した。
その日は街の宿屋へ泊まったアイカ。シュウから城へ誘いがあったり、カロリーナから侯爵家へ誘いがあったりしたがアイカは何となく断った。何故かと問われるとアイカ自身も分からないが、何となく人の家に泊まる行為に慣れていなかったからかもしれない。ちなみにロイは『じゃ』と言って消えた。
一人ぼっちの異世界で一人きりになると寂しさを覚えるかと思いきや、能天気なアイカはやはりすぐに熟睡したのであった。
そして翌日、シュウが起こしに来るまで幸せそうにぐっすやと眠っていたのである。
「うーん…朝早いよぅ」
まだ眠いのか、アイカはふわわと大きなあくびをしながら目をこすっていた。
「何を言っているんですか。今日はギルドで依頼を受けますよ」
「うん?そういえば帰り際に言ってたね。みんなで行くの?」
「いえ、僕と二人です。アイカの週末二日目はそれぞれとの相性を見てもらうために、二人で行動することにします」
「おけおけー」
そうして想像通りのスパルタなシュウとの二日目は終了し、アイカは元の世界へ戻った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます