-01.曙会

「あまり高額当選にすると数がそろえられませんからね。

 1等などは10組もあればいい方ですから。

 3等ぐらいが妥当なところでしょう。

 これなら数もありますしね。


 皆さん当たりくじが入っていたようですね。」


 開場はざわついていた。

 自分の手元にあるスクラッチくじももちろんのことながら、その前に話されたアメリカでの出来事。

 その真偽についていろいろと話し出しているが、もう少し話を続けさせてもらおう。


「議論の時間はあとで十分にお取りいたします。真偽が気になる方も当然いらっしゃいますが、どうか今しばらくおつきあいください。」


 俺は全員を見渡し、着席しているのを確認した。


「ありがとうございます。それでは続けます。私たちはようやく各国が認めた存在になれました。しかし、なぜと思われる方もおられるでしょう。それは私たちには特殊な力があるためです。そしてその力で学習し、今までは不可能と思われていたものを次々に作り出しました。それがこれです。」


 俺は前方上空を指さした。

 そこに一人乗り用のフライポットが忽然と現れた。

 その数20機。

 驚いて立ち上がろうとする人たちも出だした。


「落ち着いてください。今突然現れたように見えたのは光学迷彩で姿を隠していたからです。」


 俺は周りを見渡し少し落ち着くのを待った。

 その間に周りに着陸するように念話で指示を出した。

 フライポットから一人ずつ降りてきた。俺の母さんやしおりたちだ。


「もともとここに登場した21人で始めた会社がマジカル・ワールドという会社でした。私が授かった力で学習し、全員がMITの博士号を取得しています。それもたった3か月で。」


 俺の後ろでは全員のMITのIDと卒業証書が映し出されている。


「このほかに200名ほどの私が保護した女性たちがいます。」


 今度はそれぞれの横に姿を現した女性たちに会場の人たちは息をのんだ。


「この女性たちはもともと、やくざに騙されたりして、つらい経験をお持ちの方々です。しかし、今では私たちと同じようにMITの卒業資格まで取得されているそれぞれの分野のエキスパートでもあります。」


 俺がそう言うと女性たちはアイテムボックスから取り出した冷えたペットボトルのお茶を置いてまた消えていった。


「さて、皆さんにも少し体験していただこうと思います。私の力、ラーニングでまずは小学校から高校生までの知識を復習してもらいますね。ラーニング中は少し頭と体が重く感じますが、意識はありますのでご安心ください。それでは始めます。」


 俺は小学校から高校までの学校教育と外国語の知識、さらには日本の歴史を一通りラーニングしていった。

 約30分の間にテーブルの上に食事の用意をさせた。


「皆さんいかがでしたか?お腹が空いていることでしょう。頭と体がそれぞれ記憶するために動いていたのです。どうぞ召し上がってください。」

 いつものラーニング後の食事だ。


 俺はその後、いかに地球連邦政府を作るように考えたか、そして日本の政治を変えるためにどうしたらいいかを話していった。

 ラーニングを終了した後なので、理解は早い。

 俺は俺の特殊能力の一部を開示しただけで、今日は終わることにした。

 次に会うのはジャパン・ラボに招待してからだな。


 会の名称が決まった。

 日本を象徴する太陽から「曙会(あけぼのかい)」と命名された。

 日本の新しい夜明けを象徴する名前だ。

 それぞれのスマートフォンにアプリを導入して、株取引ができるように設定していった。

 これはホープ・マンションの人たちで手伝ってもらった。


 …この呼び方もどうにかしないとね。

 う~ん。単純にホープでいいか。

 タバコみたいだけど。


 俺が説明したことは多岐に渡った。


 能力のこと。

 これはラーニングの力を基本に組み立てて話した。

 魔法のことはまだ話していない。


 地球連邦軍のこと。

 アメリカと共同で組閣するためにも現在自衛隊の一部の有志と共に計画を練っていること。これにアメリカ宇宙軍も参加していると話した。

 言い訳のように聞こえるかもしれないがアメリカという巨大国家から命を狙われたら、立ち向かうためにはより巨大な力で攻めるしかなくなって現在に至っている。


 ああ、それと忘れちゃいけないのが、1,000人に及ぶ女性を保護していることも話した。

 彼女たちにも全員ラーニングで教育して、今年中にはアメリカで作られる移民管理センターで国籍取得のために動いてもらうことにしている。


 実は移民管理センター自体、彼女たちの国籍を取得するための方便だったわけで。


 選挙の際にも各陣営に3人ずつ程入ってもらい、鴬嬢などをやってもらおうと考えている。

 みんな美人ばかりなので受けはいいだろう。


 問題は国籍だよな。

 一応日本国籍は取得するように翼に投げかけている。

 曙会で所属先が決まれば自然にその出身地も出来上がっていくだろう。


 寺子屋として全国に拠点があるのでそこで寝泊まりしたもらうことになっている。

 寺子屋の現地スタッフも弁護士を含め、協力してくれることになっている。


 これで次の総選挙が夏か秋に開かれることになっても大丈夫だろう。


 全員無所属で立候補する予定だ。

 政策集団として曙会の名前は残る予定ではある。

 …そういえばそんな名前の力士がいたな…。


 まあいいか。


 俺はホープの人たちに後を任せた。

 それぞれが担当者を決めて補佐していくのだ。


 資金は手元に10億もあればいいだろう。

 それまではメールでひたすら売り買いを繰り返していく。

 もう慣れたものだ。


 後は今年の夏か秋に解散総選挙となるだろうから、それまでひたすらにラーニングで政治や日米関係、排除しなければないけない団体などを学習していってもらおう。


 俺たちは基本毎日MITに通い、授業を行い、ジャパン・ラボで教授たちとディスカッションする繰り返しの日々を送った。

 アメリカでは早速移民管理センターが発足して、その拠点建設の真っ最中だ。

 既に義男と源蔵さんが設計は済ませてある。


 アメリカの教育界はパニックに襲われている。


 俺たちが仕掛けたTERAKOYAが効力を発揮しだしたからだ。

 これは日本でも同じだ。

 アメリカでの登録者数はついに1億人を突破した。

 一人1講座見ただけでも100億円ほどの収入になる。

 このお金は移民管理センター運営資金として寄付することに正式に決まっている。


 一人が5教科50講座見ると250講座分、つまり2万5千円程の収入になる。

 これが一億人だと2兆5,000億円にも上る。

 これで当分移民管理センターの運営資金は安泰だろう。

 日本の寺子屋の売上金は子供たちの保護育成に使っている。

 こちらは3,000万人の登録を超えている。


 9月から始めて半年で1兆円近くの売り上げを上げている。

 これも驚異的な伸びだ。

 おかげで日本全国の拠点を用意できたし、弁護士もスタッフも雇えている。


 そうそう。

 行き場のなかった金塊は学長が大統領になってからFRBに返しておいた。

 それ以外はすべて俺のアイテムボックスに入っているから数千兆円の資産はあるけどね。

 それにつけてもこの行き場のない武器弾薬はどうしようか。

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