49.召喚魔法【3/3】
俺たちは結局日本の政治家に手を出すのはもう少し先送りにすることにした。
在日帰化人が悪いわけではない。
その後ろにいるであろう、権力を持つ大人たちを毛嫌いしているだけだ。
広告代理店、TV局、新聞社、雑誌社、パチンコ業界、土建業界、精肉業界、数え上げるときりがない。
ふ~。
別に俺たちが政治に関心がある訳ではない。
日本の政治をしっかりしないと、またアメリカに主導権を握られて終わる未来しかないからだ。
「社長。もしよろしければ私たちが立候補しましょうか?社長が政党を作ってください。日本の政治は私たちにお任せください。」
ホープ・マンションの代表者である田中霧子さんがそう申し出てきた。
「う~ん。みんなにはまだまだお願いしたい仕事があるからね。できればよその人たちでまかないたかったんだよ。むしろあなたたちが選挙参謀として戦えばどんな人でも当選させることはできるからね。政治だけに取り込まれてももったいないんだよな。俺たちの究極の目標は『のんびり楽しく暮らす』なんだけど、そこに行きつくまでがね。地球連邦政府の樹立にこそ、皆さんの力を借りたいんですよ。だから、どこかほかから連れてきて、政治はその人たちに任せた方がいいんだけどね。」
俺と田中さんがそう話しているとそれを聞きつけた白木1等空佐が話に入ってきた。
「玉田さん。日本の政治に切り込むおつもりですか?」
と聞いてきたのだ。
そっか、この人たちも国の中枢だよな。
「もしよろしければ防衛庁職員に何人か、それと退役自衛官で何人かご紹介できると思いますよ。」
「おぉ。なるほど。自衛官なら身元もしっかりしているし、思想的にも問題ないですね。あとは防衛相の方か。」
「防衛省の幹部たちも身元は保証できますよ。外務省と違って、生粋の日本人以外は入省できませんからね。」
「なるほどね。一度会合でも開いて皆さんにお会いできませんか?」
「何人ぐらい必要ですか?」
「そうですね。できれば次の衆議院の総選挙で全区で立候補者を立てたいですね。そうすると小選挙区で289人の半分で148人かな?」
「え?全選挙区で候補を擁立するんですか?どれだけお金がかかることやら。」
「お金なら心配いりませんよ。必要経費ならいくらでも出しますからね。これ如何によっては今後の日本の政治が変わってきますからね。」
「148人のうち何人の当選を望まれますか?」
「どうせなら全員通したいよね。」
「え?」
「そうなればいやでも日本の政治が変わろうとするよね。」
「え?それは本気でそう考えられているのですか?」
「え?もちろんですよ。それぐらいできないと地球連邦政府が絵に描いた餅になっちゃいますからね。」
俺はそう言ってから真剣にその構想に集中しだした。
与党も野党もだれ一人通さず、完全勝利する。
一人3億掛かるとしても450億で日本の第2党になれるか…。
政治資金規正法で政党の届け出を出すまでは個人資産で出さないといけないから、又株で個人資産を増やしてもらうか…。
いろいろと検討しているうちに、その日も夜中まで討論していた。
今日は水曜日。
今日のスキルは【召喚魔法】と出ている。
『仲間を召喚することができる。』
…これって悪魔か何かを償還するのかね?
それとも魔物か?
まあ、緊急事態にその人たちを呼び寄せれるのは大きいな。
これは使う機会がないといいけどね。
さて、退役自衛官と元防衛相の職員との会合が今日開かれる。
場合によっては全員をファミリーとして取り込んでしまおう。
さて、東京のある高級ホテルの大広間でその会合は持たれた。
防衛相OB、自衛官OB総勢200人からなる会合になる。
立候補者以外にも政党を取りまとめるための職員は必要だからね。
そのために若手職員や自衛隊幹部候補生も半分ほど混ざっている。
選挙前には各自が辞職する段取りになるらしい。
俺は壇上に上がり、あいさつがてらに構想をぶちまけた。
「皆さんお忙しい中お集まりいただき感謝します。
私がこの会合を主催した玉田紀夫です。
若干16歳の若造ですが、暫しおつきあいください。
私どもは現在地球連邦政府樹立に向けて奔走しています。
御覧のように先進国各国の代表の方に承認を得ています。」
俺の背後でプロジェクターは各国の代表者の署名入りの承認証を次々に映し出している。
「失礼ながらこの会場に足を踏み入れるまでに皆さんのことは調べさせていただいています。
皆さん純粋に日本国を憂いていらっしゃるとお見受けいたします。
自分が現役の時に果たせなかった日本を今から私たちと共に作り上げていただきたいと思っています。」
俺は全員を見回し、ヤジを警戒していたが、ヤジも出そうになかった。
…これはこのまましゃべり切ろう。
「何を若造がとお叱りの声を受けるものと思っておりましたが、その声も無い様なので説明を続けさせていただきます。
先日アメリカ大統領選挙が行われました。
立て続けに2人の大統領が暗殺されたからです。
驚かせて申し訳ないのですが、そう仕向けたのはこの私です。
私たちはMITで世界の最先端科学を勉強していました。
その途上で未来都市の構想を計画し、そのための資金作りや土地の確保のために動いておりました。
しかし、その動きを察知して近寄ってきた人たちがいました。
アメリカ宇宙軍司令のジョージ・レオナルド大将とアメリカ第45代大統領のマイク・スミスでした。
彼らは私にその発明した技術ごと計画を奪おうとしていました。
もちろん私は抵抗し、彼らとは袂を分かちました。
そして私たちファミリーを殺害しようとしたので、その報復としてアメリカを作った一族をこの世から抹消しました。
決して殺害してはいません。
しかし、死んだも同然にしておきました。
アメリカの国籍から彼らの名前と経歴などをすべて消し去ったのです。
私たちの命の代償です。
殺されなかっただけましだともいえるでしょう。
しかし、私たちが直接手を下さなくても彼らはそれまでこき使った人たちに、闇から闇に葬り去られてしまいました。
この時に少しでも話ができればと思っていたのですが、自由になった大統領はまた私たちを襲ってきました。
今度は大統領とその背後にいる軍産複合体と呼ばれるコンツェルンごと記録を抹消しました。
当然大統領は国籍を復活させていましたが、作った傍から消していきました。
話もできないで相手を殺そうとする人たちに生きる場所は与えませんでした。
その後、大統領から知らせが入り再度協議に入ろうとしたところ、その条件として私から日本に対しての謝罪を要求しました。
第二次世界大戦の戦争責任とGHQの占領策についての謝罪です。
これを記者会見を開いて謝罪していた席で大統領は記者とSPから打たれて亡くなりました。
その際、私は大統領が用意した私たちファミリーに手出しできないように先進国首脳と承諾書を交わしていたのです。
その承諾書は私と会うことで発動するもので、私は一人一人会いに行きました。
ただし、日本と中共は除いて18か国でしたが。
そしてその際、各国首脳と取り交わした承認書が先ほど皆様にお見せした地球連邦政府の承認書なのです。
その後、アメリカ大統領は皆さんご存じのようにMITの学長であるリチャード・ラファエルレイフが当選しました。
そうです。
これも私が仕掛けました。そしてMITの教授陣をも巻き込んで移民政策や教育問題を切り開いていったのです。
そうですね。
あと3年もしないうちにアメリカは大きく変わると思います。
そしてその盟友である日本も大きく変わらねばいけないのです。
なぜか。
それは先ほどの地球連邦政府の承認書に日米合同の軍隊がその主導権を握ると明記してあるからです。
そしてようやく私は日本の政治に介入することにしました。
ここにおられる200名で次の衆議院選挙に出ていただきたいと思います。
選挙費用をお渡しするのは簡単ですが、それでは法的に問題になりかねません。
そこで皆さんに株取引で儲けてもらいます。
その手順はあとでまたご説明しますが、今は取り急ぎスクラッチカードで私の運の良さを見ていただきたいと思います。」
用意していた200組のスクラッチカードが配られていく。
「そのスクラッチを削ってみてください。ここにいる200人全員が5万円の当たりくじを持って帰ることになると思います。まずは運だめしから。」
そう言うと、みんなが一斉にスクラッチカードを削りだした。
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