28.魔力増加【10/7】
今週も水曜日が来た。
今日授かったのは【魔力増加】というスキルだ。
『個人の持つ魔力量を増大させる。』というもの。
この記述で各個人が持つ魔力量というものが違うのだとわかった。
しかし、実際にはどんな魔法が使えるわけでもないので、義男が一気に取り寄せられる本が増えたと喜んでいた程度だ。
まあ、あんまり使い道はないよね。
俺たちはボストンに来てから、かなり忙しい日々を過ごしていた。
それがプロジェクト・ラボを作ってからようやく終息したように見え、俺たちは拠点でここ数日は心地よい眠りについている。
そこに日本から美智さんたちがやってきた。
「ようやく捕まえたわ。今日本でどんな状況になってるか。のり君知らないわよね。」
「…ええ。なるべく日本のニュースは見ないようにしていましたから。」
「でしょうね。この10月から、あなたたちのアニメが放映されたのよ。先週が第1回目。で、今週が2回目。」
「……(聞くのが怖いな…)で、どうでした?」
「すごい反響よ。特にBrainmenの人気がすごいわね。急遽アニメの主題歌をシングルカットして販売が決定したわ。」
「そうですか。」
「月間売り上げもあなたたちの各バンドが上位3位までを独占してるわ。」
「まあ、それは予想がついていましたが…。」
「で、その当事者が日本にいない。私のところにどれだけマスコミが押し掛けてきたと思ってるのよ。おそらくいくつかのメディアは私たちのことを追いかけてボストンにまで来てるわよ。」
「まあ、MITのキャンパスはそういうのを一切排除してるんで大丈夫だと思いますけどね。」
「それもそうよね。MITの広報担当からも正式にあなたたちがMITの学生として研究に入っているということが発表されていたわ。来年は日本からの留学生も多くなるかもね。」
「まあ、相当優秀じゃないと入学することはできませんからね。」
「そこなのよ。あなた、あのアニメで日本の教育体制の打破を狙ったでしょう?今たった2話ですでにそのことに気づいて考察している連中がいるわよ。」
「俺たちが歩いてきた道ですからね。あのアニメは。早々に気づいてもらわないと。」
「今、あなたたちがいた南高は渦中になってるわよ。」
「え?」
「あの、悪役として描かれた教頭は近いうちに辞職するそうよ。それとあなたたちが配信を始めた教育動画サイトがすごく人気で、各局で取り上げだしているのよ。」
これはその兆候を翼から聞いていた。
既に登録者数は100万人を超えているそうだ。
その人たちが1講座見ただけでも1億円に上る売り上げになる。
先月の1日から始めてちょうど1か月で2億円程の売り上げを稼ぎ出しているようだ。
最近翼から相談を受けていたので、この講座のアメリカ版として始めるために各州の教科書を取り寄せているところだ。
これらの情報の取りまとめと、口座のカリキュラムは愛美のお母さんの美紀さんが取りまとめてくれている。
彼女はMITのSchool of Humanities, Arts, and Social Sciencesで教育のための研究を行っている。
ここでの彼女のテーマは『GHQによる再洗脳プログラムから日本を脱却させるための目的と方法についての考察』というものだ。
まず、日本とアメリカの教育の制度比較や内容比較を行っているところに、翼のアメリカでの動画講座というのがかっちり嵌った。
これらのアメリカでの動画配信プログラムは来年春から行われることになるだろう。
そうだ、教頭の話だった。
「う~ん。教頭はある意味自業自得ですよ。俺たちがテストで満点とっても疑うことしかしませんでしたからね。」
「まあ、そうではあるんだろうけどね。私は別に教頭の話をしたかったんじゃないの。すでに第2弾のオファーも来てるのよ。その説得を今回の渡米に合わせて、私に委ねられたのよ。」
俺はしばらく考えて、どういうアニメにするべきかを悩んでいた。
「う~ん。あのアニメはあれで完結しちゃうと思うんですよね。もっともアメリカに渡った俺たちのことを書けば続編にはなるんでしょうが、難しいですね。世間にまだ公表できない極秘の資料や技術がてんこ盛りですから。」
そこまで話してふと思いついた。
「それならいっそ、Brainmenが活躍するスーパーヒーローアクションなんてどうです?」
「私にはよくわからないからプロットなり、シナリオなり書いてよね。」
俺はそうやって第二弾アニメの構想をゆだねられてしまった。
「いやいや、俺はもう関わらないですよ。ただでさえ忙しいのに。」
「構想だけでもメモしといて。日本に帰ってそれでごまかすから。」
まあ、それぐらいでよければ書きますけどね。
「それと、今回来た一番の目的は彼女よ。」
さっきから気にはなっていたが、美智さんの後ろにカメラやマイクを持った取材クルーがいた。
「初めまして。SETVの柴田洋子です。美智とは大学時代からの腐れ縁で、この度独占インタビューのために渡米してきました。よろしくお願いします。」
と、頭を下げた。
「ご存じかもしれませんが玉田紀夫です。今俺たちはいろんなプロジェクトを抱えてて、なかなか時間が取れないと思いますが、それでもよろしいですか?」
「はい。できれば密着取材をさせていただきたいのですが、いかがでしょうか?」
「う~ん。俺だけならいいですよ。でも、かなりハードになると思うし、どこまでを番組にするかによっては、かなり長期滞在しないと無理だと思いますよ。」
「そこはすでにある程度許可を取ってきています。」
「じゃあ、まずそのあたりから話会いましょうか。」
俺たちはそれから、夜遅くになるまで撮影スケジュールやテーマについて話し合った。
結局、ホテルの一室を借りて独占インタビューは撮影され、その後の密着取材については柴田さん一人がボストンに残り、取材を続行することになった。
しかし、長期滞在のためのビザの取得もしていないので、今回の撮影クルーと共に一度全員が日本に帰国することになった。
「これで私の肩の荷がやっと下りたわ。」
「何言ってるんですか。美智さんの本番はこれからですよ。俺たちの全米デビューの話をしたいとMITのプレジデントがお待ちなんです。」
「ああ、その話があったわね。それって本当なの?」
「そっちにデモテープの中の曲から数曲許可くれって電話は入ってますよね。」
「そうね。各バンド3曲ずつほどをピックアップして許可を出しておいたわ。」
「それ、今ではボストンのラジオ局でもすでに掛かってますよ。」
「え?」
「プレジデントが全米デビュー用のアルバムを作りたいと張り切っていますからね。あとは美智さんの方でうまくコントロールしてくださいよ。」
「いやいや。私は2ndアルバムのための打ち合わせがしたかったんだけど。」
「同時並行でやるしかないでしょうね。PVで出せるものは出さなきゃいけないし、やることはいろいろありますよ。ここの拠点の一室を美智さんに提供しますので、活用してくださいね。」
俺はそう言って拠点の2部屋を美智さんに明け渡した。
一部屋は就寝用。もう一部屋は仕事用に打ち合わせのソファなどを置いてベッドは置いていない。
その日から美智さんは拠点を中心に動き回ることになった。
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