26.金属探知【9/23】

 それから俺たちはステージを繰り返した。


 3日連続にしなくてよかった。


 そして俺たちは最終日27日のメンバー紹介でBrainmenとDropのメンバーも紹介し、ステージに挙げた。

 そこで重大発表をする。

 このためだけに今回のコンサートを用意したといっても過言じゃない。


「ありがとう。連日たくさんの人が見に来てくれて本当に感謝しています。これで俺たちは心置きなく日本を旅立てます。」

 開場中がどよめきで埋まった。


「俺たちは全員来月からMITの学生になります。専攻はみんなバラバラですが、この夏にようやく入学を勝ち取ってきました。皆さんから見て俺がいくつに見えるかわかりませんが、今16です。日本の教育ではなかなか出る杭は打たれる様で、住みにくいんです。またいつか帰ってきます。その時は温かく迎えてください。」


 これを最後にWitch、Drop、Brainmenの活動はいったん休止した。

 ようやくボストンに向かえる。

 いや、ここんとこ連日教授からの電話で毎晩起こされてたんだ。

 明日成田から飛行機に乗ってボストンに向かえる。

 ここまで長かった。


 後はホープマンションの住人に任せていくことになる。

 彼女たちは11月の高校卒業検定を受けてからの渡米になった。

 どちらにせよパスポートやトーフルのスコアが届かないからね。

 その間業務の遂行はもちろん、各人が自分の研究テーマを見つけて論文を書くことになっている。

 俺たちは手分けしてそれを採点することになる。

 どんな論文が出てくるのか今から楽しみでもある。


 翌日、TVでは昨日行われた3バンドの解散コンサートともとれる発言で物議を醸しだしていた。

 サングラスで全員顔がわからない。

 いきなり出てきて活動期間3か月のみ。


 コンサート動員数ライブハウス3千人、ドーム45万人。


 アルバムを各一枚残し、コンサート当日にはその英語バージョンの発売、日本語バージョン220万枚、英語バージョン10万枚(限定発売)。


 アルバムだけで80億円を売り上げ。関連グッズも含めると売り上げは100億を超える。


 そして彼らの行き先がMITというから日本中が驚いた。


 日本のメディアからの取材依頼で事務局は混乱しているらしい。

 ユリウスから苦情の電話があったので知っている。

 俺たちが飛行機に乗ったころ、美智さんが今回のコンサートのライブDVDをそれぞれのバンドごとに3デイズ分まとめて発売することを発表した。

 さらに、英語バージョンの再販を希望している人たちに全米発売がすでに決定していることを発表すると、人気はさらに上がった。


 ボストンについて翌朝から俺たちは研究室に戻るためにまず事務局を訪れた。

「ハイ、Norio。待ってたぞ。」

 とプレジデント自らが迎えてくれた。

「こんにちは学長。早速ですがこれは俺たちからのプレゼントです。」

 と3枚のCDを手渡した。

「俺たちの歌の英語バージョンでの録音音源です。」

「おぉ。これを待っていたんだよ。実はあの送別会のビデオを見た連中から矢のような催促でね。これはデモテープとして配布しても?」

「そのあたりは日本のエージェントの美智と話してください。おそらく数曲なら許可が出ると思いますから。」

「うんうん。それで十分だよ。」

「美智は10日後ぐらいには一度こちらに来る予定です。俺たちのドームライブの映像をもって。」

「おぉ。それは楽しみだ。」

 ユリウスさんにも謝っておいた。


 10日後に来る美智さんはSETVの柴田さんというレポーターと共に来る予定だ。

 独占インタビューを撮るのがその目的である。

 俺たちがキャンパスにいるところも撮りたいそうだ。


 その後物議を呼び、本当はMITになんか行ってないんじゃないかと噂が広まっていたが、それもこのインタビューで消えることになる。


 アメリカに着いて、それぞれがあいさつ回りしてバタバタしたあくる日の朝。

 今週のスキルが届いた。


【金属探知】

『地中、水中を問わず金属を感知し、それを集める。』


 これは鉱山に行けばすごいんじゃないか?

 …いやお金はもう十分あるからね。


 そう思っていた時に義男と源蔵さんから一枚の図面を渡された。

 彼らが進めていたホープマンションの住人が住む予定のマンションの図面だろう。

 俺は何気なく朝食を取りながら目を通そうとして口の中のものを吹き出してしまった。


「………これ何?」

「いや~、MITの教授たちと盛り上がっちゃってね。どうせなら未来的な高機能マンションがいいって話で進めてたんだが、そこに都市計画の教授も入ってあれよあれよと未来都市の都市計画が出来上がったんだよ。」


「……はい?」

「で、これを作ろうってことで盛り上がってるんだ。」


「…誰が作るの?」

「マジカル・ワールド。」


「………いくらかかるの?」

「予想では3兆円ぐらい?」


 俺は目を輝かせている親子にこれ以上いう言葉を失った。

 それから開いてる時間はすべて株式投資に割いて、メンバー全員で資産を増やした。

 もちろん、日本に置いてきたホープメンバーもだ。


 マジカル・ホープ・シティInc.として、全社員が株主になった会社を設立した。


 MITのほかの教授陣も乗っかって相当巨大なプロジェクトに膨れ上がっている。

 各学科の各教授に基本設計プランが出回ると、それこそ全員が参加しだした。


 ……今更200人が住むためのマンションが欲しいだけだなんて言えねえよ。


 MITの協力の下で、土地の取得も現在調整中である。。


 また、シティ内にはマンション10棟をはじめとして、ごみ焼却場、下水処理場、廃材リサイクル工場などのインフラ的な建物をはじめとして、官庁街、ショッピングモール、戸建て住宅なども計画されている。

 そして、発電施設も計画されて、これは極秘に進められているようだ。

 MITのOBたちも設計や討論のために続々と古巣のMIT研究室に集まってきている。


≪MITの技術者だけが集まって作る未来都市構想≫は、MITのOBにとっても魅力的な構想のようで、俺のところに出資を申し出る人々も後を絶たないが、とりあえず利権などを一本化するためにもマジカル・ホープ・シティInc.で一本化することにしている。


 あくまで、マジカル・ワールドの社員のための街を作るための構想だ。

 それをみんなで寄ってたかって実験場にしようとしている。


 どの教授も生き生きしている。

 やはり理論的な推察も面白いけど、実際に物を作る過程というのも面白いよね。


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