23.変装【9/2】
俺たちの三頭身イラストはその後、アニメ化の話まで出てきているそうだ。
イラストを担当したDropの花梨さんは、アワアワして俺たちを笑わせてくれた。
俺はこれで日本の教育現場へのアンチテーゼにならないかと思い、俺がシナリオを書いてみることにした。俺たちがやってきたそのまんまなんだけどね。
俺たち全員で監修して、これでアニメ化ができるならという条件でアニメ化にGOサインを出した。それともう一つ条件を出したのだ。当日までどんなアニメかわからないように一切の宣伝をしないようにお願いした。その方が知る人ぞ知るみたいで面白そうだしね。アニメ制作会社も初めは渋っていたが、スポンサーに俺たちの楽曲を提供するといってスポンサー確保に回らせると効果てきめんですぐに製作が決定した。
水曜日には【変装】というスキルを授かった。
これは便利だった。
特に顔ばれしそうな場所では威力を発揮していた。
ハンバーガーを買いに行くときなども軽く変装をかけていく。
変装で合って変身ではない。
つまり元の自分は同じだ。髪型や目の色、ひげなどを自在に変えることができるというものだ。ただし、衣服についてはいろいろと変えられる。
それこそ…今、目の前の美香がやっているような…ニンジャスタイルも。
みんなもそのスタイルが気に入ったようで、夜間の偵察などにはよくニンジャスタイルで出かけるようになっている。
そして、この変装は載っているバイクのナンバープレートまで変装してくれる。
いや、ここまで行くともはや偽装だ。
義男がバイクに乗ってニンジャスタイルで出かけようとして、バイク自体を木でできたように偽装できたらしい。
木でできたバイクのようなもので走るニンジャ。
もちろん町の噂は義男が独占していた。
木でできたバイクを操る変態男として…。
俺はもう何も言うまい。
実際にいくつかの暴走行為を繰り返していたやつらを、つぶすことには成功しているのだから。
俺たちは日本を心置きなく旅立つために、今まで受注していた仕事をどうするかで悩んでいた。
呉竹呉服店さんはこの洗浄補修事業でかなり儲かっているようだ。
この事業をつぶすのは忍びない。
そこで決まっているメンバーが数人、日本に戻ってきて、受け取り時のカルテ作成、アイテムボックスを使った洗浄補修。返却のための着物袋への収納をアイテムボックスで行うことで、これまでと同じく事業を継続していくことになった。すでにベテランの域に達している着物専属のチームがこれにあたることになる。
昼夜逆転していること、受け取り返却が3時間ほどで済むことでみんな納得してこの作業をしてくれることになった。このチームには瞬間移動のスキルも授けることにした。
もう一つのブランドバッグの洗浄補修チームも同様にした。
こちらは5の付く日に持ち込むようにしてもらうことですでに合意が取れており、事業は継続させる。
問題はパワーストーンの販売の方だ。
こちらは店舗での販売を取りやめ、通信販売一本に絞ることにした。
不動産屋に解約を申し出て、店舗を明け渡すことになった。
既に『星のいのり』専売品である三頭身ソフビキーホルダーは完売しており、今後通信販売にて受発注を行う旨は伝えている。
この事業は美智さんのところのグースのスタッフが引き継ぐことになった。
既に発注や、発送はグーススタッフが行っている。
売り上げのうちの著作権使用の使用料は販売価格の半額がマジカル・ワールドに支払われ、それぞれに手数料の20%を引き、各本人の口座に振り込まれることになっている。
ソフビキーホルダーの一番人気は美香だった。
2番は何と義男だった。
3番は翼となった。
く…いいさ…アニメ放映後に巻き返すさ…。
動画配信サイトはかなりの勢いで登録者数を伸ばしていった。
いじめで登校拒否などを繰り返していた生徒などもこの動画を見て学力に自信をつけて、通うようになった子もいると聞く。
よかった。今の学校制度のゆがみの救済になったと思うと感動した。
一方『大人の』講座はタイトルで何か勘違いした人もいたみたいだが、かなり好評だ。
元水商売の色っぽいお姉さん方が講師なのでなおさらだ。
あれ?だからサムネでみんな勘違いしたのかな?
受講が3,000円で1講座。結構な勢いで大人の講座も登録者が増えている。
サーバーの管理はリモートで翼が行ってくれるようだ。
そのうちビジネス講座も開く予定らしい。
接客や、経理、事務の基礎知識から経営に至るまで幅広い分野に及ぶようだ。
ホープマンションの住民もこの成功で結構自信がついたようだ。
経営や映像編集、アニメーション作成、3DCGなど、個々ですさまじい勢いでラーニングで学習していっているようだ。そして彼女たちはMITでもその興味のある分野での学科取りを進めていて、論文作成も大いに盛り上げって日夜検討会をしているという。
翼が行くコンピューターの学校と紗理奈のいくメディア芸術と科学の学科は特に人気があるそうだ。それ以外のところにもまんべんなく入り込む予定だ。
「もう。ただでさえ、仕事の引継ぎが忙しいのにこんな仕事受けちゃって。」
みんなにいろいろと怒られているのは俺だ。
そう、俺が調子に乗って
「何なら本人が声優やりましょうか?」
と言ったもんだから、それにGOサインが出てしまったのだ。
カアサンズとトウサンズはホープマンションの住人とともに渡米資格の準備に追われている。
トーフル、高校卒業認定試験、そして、自分が勉強したい分野の論文作成だ。
みんなでホープマンションや会社の方で喧々諤々の議論が続いている。
俺は依頼を受けて、リサイクルショップでホワイトボードを買いあさり、それらを修復、復元して、各会議ルームに大量に納品した。
その隙間を縫ってアニメのシナリオ会議やデビューコンサートの打ち合わせも行わなければならない。
そう、デビューコンサートが決まったのだ。
東京ドーム3デイズ。
それも同じステージを使ってWitch、Drop、Brainmenがそれぞれ3デイズ行うのだ。
合計9日間の長丁場になる。
これが9月19日から9月27日までの9日間毎日行われることになる。
順番はBrainmenが19日、22日、25日。Dropが20日、23日、26日。Witchが21日、24日、27日の公演になる。
さすがに3日連続はきついだろうとそれぞれのバンドが間に挟まる形で行われることになった。
それにしても日数がない。
これにはMITの教授たちからの矢のような催促が影響している。
俺たちはホープマンションの人たちと同じ時期に渡米するつもりでいたが、向こうは一刻も早く戻って来いと言う。
義男と源蔵さんは向こうでの生活拠点の設計をMITの教授と一緒にやり取りしながら設計しているようだ。暇さえあればCADで図面を引いている。
翼が開発した念話による入力ソフトが進化して、念話によるコンピューター操作になっている。みんなのパソコン、タブレット、スマホにはすべてこのアプリが仕込まれている。これはどういう結果を表すか。
思考だけで図面が引け、3Dモデリングができ、アニメーションが製作できるようになっていく。
これらを使って、3デイズの際に流すムービーなどの製作も始まったようだ。
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