16.瞬間移動【7/15】

 それから夜のパトロールは2人一組で行動することになった。

 まあ、義男のように思春期の男子が遭遇してはいけない場面に多々遭遇することもあるからね。

 高層マンションに御住みの方。

 高層だからといっても外から見られないとは限りません。

 十分ご注意ください。


 しかし一方で飛行があるから見つけられた犯罪も多々あった。

 マンションに連れ込んでの拉致、監禁、暴行などだ。

 発見次第、ベランダから侵入して、犯人を殲滅。

 その上で、念話で被害者に語り掛けて、警察に電話を掛けさせている。

 犯人は検挙できたが、被害者を助けたという人物の特定ができないでいた。

 一様にベランダから入ってきたようだというが、施錠されていた部屋も多い。

 これはアイテムボックスでサッシ戸ごと収納して、帰りにそれを戻して帰っていたのだ。

 割って侵入すると被害者に怪我を負わせる可能性があるからね。


 水曜日になって新たなスキルを授かった。

【瞬間移動】というスキルだった。

『一瞬で場所を移動できる。 移動する場所は本人がイメージできる場所しかできない。』

 と、言うものだった。


 俺は、大胆にも、一度行ったことのあるニューヨークの自由の女神まで瞬間移動した。

 もちろん隠密をかけてだ。

 俺はそこで隠密を解き、自由の女神をバックにしてスマホで写真を撮り

「自由の女神、なう。」

 とメールをチャットソフトにアップした。

 それからまた隠密をかけて自分の部屋に戻ってきた。

 靴を履いてなかったからはだしだった。

 これはこれから気を付けないといけないな。


「なになに?どうして自由の女神と一緒に写真撮ってるの?」

 と美香が部屋に乱入してきた。

「今朝授かったスキルが、瞬間移動というスキルだったんだ。それで試しに行ってみた。」

「お兄ちゃん、すごいじゃない。これで学校に遅刻しないでも済むね。」

「まあ、そういう使い方もできるだろうけど、必ず隠密掛けてからやらないと、いきなり人に出くわしたりしたら大騒ぎになるぞ。あ、それと室内から移動するときは靴を忘れるなよ。」

 俺はそう言ってみんながスキルを使えるように設定しておいた。

 もちろん先に注意はチャットソフトでしておいた。


「お前なんで廊下で土足なんだ。上履きは?」

 と朝から怒られている義男を見るのはもはやお約束だと俺は思った。


「う~ん。このスキルは世界中どこでも行きたい放題なのかな?それと一緒に瞬間移動することはできるのかな?」

 と疑問に思い、さっそくしおりと美香に両手をつながれ、言ったことのある場所に瞬間移動していった。

 すると手をつないで「この人と一緒に移動」と意識すると一緒に飛べることが分かった。

 これだと世界中に拠点が作り放題だな。

 もうすぐ始まる夏休みを利用して方々に飛び回ってビルを1棟とか買い取って回るのもありなのかもしれない。

 これはまたみんなに相談しよう。


 そろそろ、200人全体会議から1か月が過ぎている。

 それぞれが頑張ってくれたおかげで、パワーストーンショップは来週の23日の海の日から稼働できることになった。みんなこの日から夏休みだからね。

 ちなみに2週間たって資産は20億に増やしたが、誰も出ていく人はいなく、全員再契約となった。

 俺たちは期末テストを余裕で乗り切っていた。今回は全員満点でもさすがに誰も文句はつけないだろう。

 現在進行形で動画の準備は進んでいる。

 サーバーのテストも終わったのでもうすぐ一学期分の復習のための動画は出せるかもしれない。

 けどそれじゃインパクトは弱いと思うんだ。

 ちなみに8/12,13の高校卒業認定試験はカアサンズやトウサンズからも受ける人がいる。

 中卒で働いた人や嫁に行った人、高校中退した人などだ。

 源蔵さんもその一人で、

「俺は中学卒業したらすぐに親父から工務店の手伝いさせられたからな。修行の毎日だった。」

 と言っていた。中卒だからと言って馬鹿にされたこともあったそうだ。

「今から国立大の建築学科に入学して、そいつらの鼻を明かしてやればいいよ。」

 と俺は励ましておいた。


 この検定に通れば俺たちの高校生活に一応の区切りができる。

 来年の春はカアサンズやトウサンズも含めて全員大学受験するつもりでいる。

 それぞれが目指したい方向性が見えてきたのだ。

 医者、弁護士、税理士、建築士、薬剤師などから始まって様々な分野に進出する予定だ。

 俺はいま海外留学できないか残念美人先生と話を進めている。

「どこに行きたいか決まったって?」

「はい。どうせならMITの機械工学に行ってみたいと思って。」

「MIT(マサシューセッツ工科大学。世界最高峰の一つの理系大学。)だって?まあ、教育委員会なんかにも聞いてみるよ。」

「無理そうなら直接大学に行ってみますので。」

「おいおい。そんなことできるのか?」

「大丈夫ですよ。英語も話せますしね。直談判してみるのも面白いでしょ?」

 俺はそんなことを言いながら期末考査のテスト休みにこの夏のプランを練っていた。


「どうせ泳ぐならきれいな海で泳ぎたいわよね。」

 と順子さん。

「メインテーマは拠点の確保ですよ。そのあと時間があれば海なんかにもいく予定ですが…。」

「どこに拠点を置くつもり?」

「そうですね。資金は十分にあるんで、世界中に拠点は置きたいんですよね。で、できればまずはリゾート地から始めるのがいいなと思ってるんです。」

「うんうん。」

「だから皆さんにも候補地選定をやってもらおうかと…。」

「モルディブ!」

「ニース!」

 と口々に言いだした。


 それぞれ旅行予定を立ててもらって、現地で10日ほど交渉のため(あくまでお仕事ですから)に滞在してもらい、現地コーディネーターを探して、拠点となるビル、又はマンションの一室などを購入する。立地条件等は暮らしやすいところ、治安の比較的いいところを重点的に探してもらうことになった。


 治安はある意味俺たちならどうとでもできるからね。

 3人一チームになって、高校中退組の5人も加わり、時期をずらしながら拠点確保の出張に出かけることになった。

 高校生組は国内の拠点をまず充実させようと動くことにした。

「あ、そうそう。こういうの作ったんです。」

 と俺はアノニマスの図柄が書かれたバイク用のナンバープレートを取り出した。

「もしも行く先々でバイクを使う必要があったら、これをナンバープレートにつけてから走ってくださいね。もちろんその国の道路交通法違反は免れませんから、くれぐれもフル装備してからにしてくださいね。国内ではそういうことでなるべく使わないでくださいね。ただでさえ、目立つバイクなんですから。」

 俺はマグネットで取り付けれるプレートカバーをそれそれに2枚ずつ渡した。34階組の5母子は先週からバイクの教習所に通っている。

 区別なく一緒に行動できたらいいんだけどまだ来て1か月だからね。

 そのうち合流できるだろう。今は俺の中でもひとくくりで見ちゃってるもんな。


「それとこのリストにあるバイクを見かけたら鑑定をかけて、本物なら値段交渉して買い取ってきてください。その情報は逐一念話で知らせてくださいね。」

 と海外のバイクメーカーのバイクのリストを渡した。

 今回どうせ海外にみんなが行くなら是非やっておいてほしいことなんだよな。

「それと行き返りは飛行機になりますが、ビジネスかファーストクラスで行ってもらいますね。経費として計上できますから。あと、社用車として大人の皆さんの分の車は会社で購入しようと考えていますのでまた選んでくださいね。様々な用途で使えるように車種はスポーツカーだけじゃなくていろいろと分散させて考えてください。」

「スポーツカーは自分でも買えるしね。了解です。」

 と喜久子さんが答えてくれた。


 俺たちは日本中の拠点を抑えた後、全員でMITへの留学交渉のために渡米する予定だ。

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