-01.レコーディング

 MITには5つのスクールと1つのカレッジがあるそうだ。

 School of Architecture and Planning(建築および都市計画・地域計画)

 School of Engineering(工学)

 School of Humanities, Arts, and Social Sciences(人文科学・社会科学)

 Sloan School of Management(経営)

 School of Science(理学)

 Whitaker College of Health Sciences and Technology(健康科学・健康技術)

 俺たち9人と34階組5人がそれぞれ自分の好きな分野に進むことにした。


 俺たちは各授業でできるだけ早く教科書や専門書をラーニングしまくって、34あるという学部をはしごするつもりだ。


 入学のためにはTOEFL(とーふる)の試験が必須のようだ。

 日程を探すと最短は7/18(土)だった。

 大慌てでカアサンズとトウサンズなどのメンバーにも知らせて、受験申し込みをした。

 既にラーニングで過去問や受験での注意点などは学習している。


 呉竹市にもテストセンターがあるらしい。

 そこで受験することになった。

 受験当日、大学模試以来の緊張感がみんなを襲った。

 みんな学習はしているが、なかなかしゃべる機会もないため、発音などを心配していたが、Reading-30点満点、Listening-30点満点、Speaking-30点満点、Writing-30点満点の試験でほぼ満点だろう。


 スコアレポートを取り寄せるのに4週間ほどかかるようだ。

 う~ん。アメリカ行きの間に合うかどうか微妙だよね。

 まあ、スコアが取れていれば問題ないだろう。


 大人チームは日本の大学をそれぞれ受験するようだ。

 日本の法律が適用される範囲での活動が主目的だからね。

 弁護士や医師などはその後に国際的に活躍する選択肢は残されている。

 美香も16になったらすぐにでも留学したいそうだ。

 美香ならどこの大学でも通用するだろう。


 俺たちは自分たちが学びたい専門分野の専門書や論文などを片っ端から買い集めてラーニングしていっている。

 これらの知識が留学を勝ち取れるかどうかのカギになるだろう。

 高校卒業認定試験を受けて、その通知が届くまでは渡米できない。

 あ…あれ?

 よく調べてみたら、夏休み中は無理そうだ。通知が届くのは9月になってしまうだろう。

 う~ん。まあ、これも当たって砕けろだな。

 下見ってことでもいいや。


 そんな忙しい日々を送っている最中に、唐突にライブハウスのオーナーから電話があった。

 夏休みに入るだろうから、レコーディングをしないかという誘いだ。

 俺たちはこれ以上忙しくなるのかと天を仰いだが、これもやりたかったことの一つではある。高校時代の思い出のためにもこの話は受けておくべきだ。

 そう話し合って了承の返事をした。

 日程はいつでもいいということだったので、俺たちは翌日から3日間缶詰になるつもりでレコーディングに取り組んだ。

 曲はそれぞれのテーマ曲9曲とボーイズバンドの3曲、ガールズバンドの3曲の合わせて15曲となった。


 このアルバムの発売は9月1日に決定し、それまでの8月の各週末に、ライブハウスの方への出演依頼があった。

 8月の後半は渡米する予定だから、前半の3週だけOKを出した。

 その代わり9月は毎週末の土曜日の出演が決定した。


 ジャケット撮りにもう一日駆り出されることになった。

 どんな写真にしようかみんなで話し合った。

 顔ばれしちゃうよな。

 まあ、ライブハウスに出演した時点でみんな顔ばれするんだけどね。

 そうだ。後ろ姿で撮ってもらおうか。

 もしくはシルエットで。

 そう提案してOKをもらった。

 俺たちの顔を知ってるのはライブハウスに足を運んでくれた人だけ。

 後は音楽で満足してくださいって感じだ。

 生意気だけどちょっとかっこいいよね。

 俺たちは夜中、ライブハウスの前で9台のバイクを並べて止めて、ライトが付いた状態でカメラに背を向けてバイクに歩きだしているような写真を撮った。

 これが俺たちのアルバムのジャケットになる。


 いいんじゃないかな。


 うん、かっこいいよ。


 それから俺たちWitchのアルバムのタイトルは『メモリー』に決めた。

 高校生活の思い出って意味だ。


 そして作曲のところは『Michi』と美智子んさんのペンネームが入っている。

 俺たちもそれぞれ『Nori(紀夫)』『Shion(しおり)』『YO-(義男)』『Bassa(つばさ)』『Rina(紗理奈)』『Mie(美穂)』『Aki(千秋)』『Yakko(都)』『Cally(あかり)』とクレジットに名前を入れることになった。


 数日後、トラックダウンしたデモテープをオーナー自ら持ってきてくれた。

「これはすごいわよ。あんたたち、すぐにメジャーデビューするかもしれないわね。」

「あぁ、オーナー。一つ言い忘れたことがあるんですが。」

「何?」

「俺たちこの夏に高校卒業認定試験を受けて高校をやめてアメリカに留学しようと思ってるんです。」

「へ?」

「だから、バンド活動はとりあえずこのアルバムのみですね。」

「へ?」

「来年から俺たちアメリカに行くんですよ。予定ですけどね。」

「え~~~~~~!!」

 オーナーの美智さんは大声で叫んだ。

「じゃあ、マスコミのインタビューはどうするの?」

「そんなの入ってきてるんですか?」

「入ってきてるわよ。もうデモテープ送った大手レコード会社のプロデューサーもいるわよ。」

「俺たち美智さんのところ以外でレコード出す気はないですよ。」

「そんな。せっかくメジャーデビューできるチャンスがあるのに。」

「美智さん。どうせなら美智さんのところのグースをメジャーにしちゃえばいいんですよ。必要なら出資しますよ。」

「え~~~~!!!」

「俺たち下手にプロデューサーなんかがついて指図されたら、やめちゃいますからね。自由にできる美智さんのところが一番いいんです。何でしたら俺が手塩にかけて育てている中学生バンドを紹介しますよ。」

 と俺は美香を俺の前に出して

「サポートでギター弾いてくれてた俺の妹の美香です。バンドのメンバーには俺が教えてますから結構面白い曲書いてますよ。『美香ちゃんバンド』」

「美香ちゃんバンド違う!『ブレーメン』に決めたって言ったでしょう。」

 その場で俺が録音しておいたブレーメンの曲をパソコンから流してみた。

 美智さんは大興奮だ。

「こ…こんなフレーズ弾ける子がまだ中学生?これは売れる。絶対売れる!」

 そうして美香ちゃんバンドはレコーディングに入ることになりました。

 ついでだと思い、後発組の5人娘もレコーディングすることになった。

 彼女たちも練習してたんだよね。世の中の不条理を歌った歌が心に来るんだよ。

 曲調はロックンロールがメインになるようだ。

 こうして『マジカル・ワールド』から3組のバンドのデビューが決まった。


 よし、俺たちも気合を入れて高卒認定とらないとね。

 俺たちはその後を見据えた学習を繰り返し、他の人が買ってきた専門書などもラーニングさせてもらった。

 一括でラーニングする方法もあるけど、自分が意識をもってラーニングしないとただ知識があるだけになっちゃうからね。応用が利かないというか知恵が出てこない。

 俺たちは自分たちの進みたい分野の研究したいテーマについて論文を書くことにした。

 もちろん英語でだ。

 これを武器に留学を勝ち取るつもりでいる。

 みんなが同じ分野の論文などにも目を通してくれているので毎晩、会社で議論を続けていた。

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