15.飛行【7/8】
先週は急遽の土地取得と訓練施設の設計で結構忙しかった。
しかし、そのおかげで今秋から工事の着工ができそうだ。
名目的は林道整備として、幅6mほどの道路を山々の外周をめぐらすように作成されている。取得した土地にある3つの山とその間に囲まれた耕作放置地に施設を作ることにした。施設には日本や世界が生み出した1970年代ごろから50年の歳月を経て進化したバイクの歴史が体験できるバイクミュージアムが、立てられる。
あくまで私費で、あくまで趣味での建造である。
実態は様々な訓練ができる訓練施設にできないかともくろんでいる。
この建物を中心として、山の頂上付近にまで伸びる道路や、ヘヤピンコーナーなどがあるコースなど様々な道路が走っている。
モトクロス用の林道も作られる予定で、こちらのコースもいろいろと設定できるように工夫している。
場内複数の個所に監視カメラのための塔を設置して、常時監視も行うことになっている。
また、ラップタイムなどの計測機器も設置する予定だ。
完成まで3年はかかるらしいが、一部使用できるのは半年後にでも使用できるように複数の道路工事会社を入れて建設をスタートさせる予定だ。
俺たちは土日総動員して、とりあえず半年先までの工事予定地の道路上の木を切り倒していった。全員チェーンソー装備だ。
隠密を掛けたチェーンソーで騒音は出なくして、設計コース上の木をどんどん切り倒していった。切った木はアイテムボックスに収納している。
後は木の根を掘り返せればいいが、なかなか難しい。
俺はそれからも夜になると毎日3時間ほど木の根の掘り起こしを進めている。
遠慮なく力が出せるのでいい鍛錬になっている。
おかげでつるはしを相当数ダメにしたが、アイテムボックスで修復し、強度を増して耐久力向上も掛れば、何とか人力でも掘り起こせた。
当分この作業続けないとだめだね。
もちろん土木会社にやってもらってもいいのだが、それだとかなり時間がかかる。
そこで俺たちでできることは俺たちでやる方が時間短縮になるから行っている。
早くコースで走りたいもんね。
今日は水曜日だ。
新たなスキルを見た時、俺は飛び上がって喜びそうになった。
スキル名は【飛行】だった。
『自由自在、思い道理に飛行することができる。』というものだ。
早速試してみたいが、朝から目立つだろうことと時間もあまりないので自重した。
美香やかあさんに話すと早速試したがったが、夜まで待ってもらった。
その日は2つの意味で放課後が待ち遠しかった。
一つはもちろん、飛行のスキルだが、もう一つあるのだ。
「おっちゃんバイク引き取りに来たよ。」
と、駅前のカワサキのお店に9人で行った。
そこには新車のKLX230が、9台並んでいた。
「おっちゃん大丈夫?」
おっちゃんはまたしても白く燃え尽きていた。
確かに9台の整備と点検はきついよね。
「じゃあもらっていくからね。」
とおっちゃんにあいさつしてから9人は乗り込みマンションに向かった。
地下駐車場に降りると、俺たちの駐車スペースにまたもや11人のライダーがいた。
ま…まさか。いや、KLXの上位互換車は今は出てないはずだ。
俺はバイクを止めて落ち着いて、そのライダーたちの横にあるバイクを見ると、またもや膝から崩れ落ちてしまった。
……この人たちは…。
そこには俺たちと同じKLX230が11台停まっていた。
「だって、訓練施設ではモトクロスのコースも作っちゃうんでしょ?それならやっぱり自分専用のバイクがあったほうがいいじゃない。」
と、順子さん。
またもやそれぞれの家族の色でカラーリングをねだられ、施していった。
これ、あんた達でもできるんだよと言うと、のりちゃんの方が早くてうまいじゃないと返された。
俺は黙々とカラーリングしていった。
ヘルメットとグローブもモトクロス仕様のものだ。
それらにもカラーリングを施した。
それぞれがアイテムボックスにしまい、会社に戻った。
ここまでそろえるんならレーシングスーツもそろえた方がいいよな。
俺はそう提案して、レーシングスーツとブーツをオンロード用とオフロード用で手配することにした。それぞれにニーパッドなどの保護防具も手配している。
俺は源蔵さんと組んで、周辺都市まで足を延ばして、各種バイクの入手を行っている。
改造や整備には補修材料が必要なため、ジャンク車なども手に入れていっている。
あらかためぼしいものは廃車レベルのものがなくなってきたため、中古車屋で買い付ける方法も取っていく。
あっという間に現行機種以外のバイクはあらかた集まってきた。
源蔵さんの知り合いがいい仕事するんだよな。
ネットを駆使して調べてリスト化して、どんどん買い付けていったんだ。
来週ぐらいからは国産車だけではなく、海外のメーカーのバイクにも手を伸ばしていく予定だ。
さて、本日のメインイベントと行きますか。
「みんなで飛行を試してみない?」
俺はそう呼びかけてみんなにスキルの使用許可を出した。
どうやればいいのかな。
う~ん。いきなり「浮け!」じゃ、天井に頭打ちそうだな。
まずは10㎝程度浮くように念じた。
するとふわっと体が浮いた。そのまま前進したり更新したり、身体を縦に回したりもできた。
それを見ていた義男は思いっきり天井にぶつかっていた。
…よく考えて使えよな。
みんなはその義男の蛮行を見たので、慎重に浮きだした。
やがて自在に動き回れるようになり空中でぴたりと止めることもできるようになった。
これは使い勝手がよさそうだ。
これで益々スニークミッションがはかどるだろう…。
……いや、俺は決してアサシンになりたくないんだ…。
………いやいや、ニンジャも違う。
しかしスキルの方向性はそっちにかじを切っているようにしか見えない。
「外で飛ぶときは電線や飛行物に注意して。それに自分の身体に隠密を掛けることは絶対に忘れないでね。」
みんながはーいと返事した。
それからみんなは帰るときには、隠密をかけてベランダから飛んで帰宅するようになった。
俺たちは街のパトロールに出かけた。
空からのパトロールだ。
怪しそうな人物を見つけると30m程度まで近寄って鑑定を掛け、組事務所の関係者や犯罪行為を見つけると、残らず撲滅していった。
『義男。お前が犯罪行為をすると俺たちはお前を殲滅しなきゃいけなくなるんだが…。』
義男はあるマンションの上空でピタッと止まったまま動かないでいた。
『のぞきは立派な犯罪行為だぞ。』
その念話は全員に伝えたために、会社に帰って女の子たちからそれぞれパンチを見舞われていた。
「だから言ったのに。」
と俺はぴくぴくしている義男に言った。
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