-01.寺子屋

 …ん?


 学校がやらなくなった授業。これって講座動画配信に紛れて配信していけないかな?

 おぉ。いい考えだと思う。

 これで動画配信サイトの名前は決まったな。


『寺子屋』一択だ。


 古き良き時代の道徳や人や物の価値観を教える学校。

 受験勉強は片手間で済ませて、もっと広く人間を勉強しようって講座だな。

 親が言うことをうのみにするんじゃなくてもっと自分で考えよう。

 先生だって間違っていることもある。もっと自分で考えようってやつだな。

 この思考誘導って他の強化の動画にも紛れ込ませれないかな。

 ……そうだ。問題を解く生徒として物を考えるのではなくて出題者としての思考を教えればいい。

 なんでこのページのここをテストに出すんだろう。

 そこが重要なところだから?

 なんで重要なんだろう。

 使う場面も多いから。

 どんな時に使うんだろう。

 ……こんな感じで授業を組み立てたらどうだろうか。

 これも一度会議にかけてみよう。


 後は温泉施設もあるな。

 一年間タンデム走行が無理なら、自分が走れるコースを作ってでも美香を乗せてやりたいな。

 ポケバイのコースを少し大きくしたコースを作ろうか。

 それか、訓練用のコースを新たに作るか。

 そっちの方が面白そうだな。

 起伏が合ったり、ブラインドコーナーがあったり、障害物があったり。

 これって逃走や追跡するのにもいいのかもしれないな。


 ウイザーズ専用の訓練施設みたいなところかな。


 125㏄程度のレーサーレプリカのようなバイクを数台使って中学生たちに練習させるのもいいかもね。

 ウイザード予備軍って感じかな。

 それと、俺の趣味もあるけど、現行のバイクは少なくとも全部手に入れて練習しておいた方がいいかもね。

 3年ぐらい前までなら、現役のバイクもあるだろうし、それらは中古で買ってきて直しておくか。かなり特殊な施設とサーキットになるけど、今後のことを考えるとそういう訓練施設がいる時が来るのかもしれない。


 俺は俺にスキルメールが届いたころからこのスキルの必要性について長いこと考えている。

 これらのスキルが必要になるときが来るんじゃないだろうか…と。

 グループのスキルを授かった時、直感的にそう思ったんだよな。

 なぜ仲間だけが使えるようにしているのか。

 この辺は考えても仕方ないんだろうけど考えちゃうんだよな。

 だからこそ、訓練しておくっていうのはいいのかもしれない。


 うん。これも議題に挙げよう。


 後はパワーストーンとブランドバッグか。

 着物のことを考えるとブランドバッグのお店もリペアだけを受け付けて、買取はやめたほうがいいのかもね。これも議題に乗せよう。


 パワーストーンの方は原材料の仕入れ先で止まってるから進捗状況を五郎さんに確認しよう。


 後は…。しおりのお父さんだな。

 引っ越してきてまだ一度も顔を合わせていない。

 仕事で飛び回っているそうだから、すぐに機会はあるのかもしれないけどどうしているんだろう。

 …同じように最近顔を合わせてないのがうちの父さんだ。

 アメリカに単身赴任しているのだが、そろそろ一度戻ってきてもいいころなんだけどね。


 俺はつらつらと考えながらも套路を繰り返していく。

 身体が静から動へ、動から静へとスムーズに移れるように意識して身体を動かしていく。

 ふ~。

 かれこれ1時間はやってたかな。

 そろそろ朝食にしよう。

 俺は朝食をいただいて、忘れないうちに今週のスキルをチャットソフトに打ち込んでみんなの意見を聞くとしよう。


「お兄ちゃん今日は早起きだったみたいね。」

「うん、新しい武術のDVDとテキストを手に入れたからそれを試してたんだ。」

「何て武術?」

「八極拳。漫画にもなってる拳法なんだ。昔の漫画だけどね。結構面白いよ。」

「ふ~ん。今度見せてね。」

「おう。」

 俺はアイテムボックスから『拳児』を全巻出して、妹に渡した。


 俺たちは行ってきますと家を出て、いつものように中学校前で別れた。

 そういえば今日から7月なんだな。

 ここんとこずっと雨続きだったけどまだこの雨続くのかな?

 雨の方が侵入捜査はやりやすいから気にしないけどね。

 身体全体に撥水と汚濁防止の改造を施したコスチュームだから気にならないんだ。

 むしろ雨の方がいろんな音や気配も消してくれてるようでやりやすく感じるときもある。


 さて、学校だ。

 最近しおりも義男もマンションに引っ越したから、朝の登校が少し寂しいな。


 俺は休み時間中はいくつかの買い目が重複しないように設定して、次の授業までの時間での売り買いを5回ほど設定したものを送信していく。

 資金全額で買って全部売るというのを繰り返している。

 俺に豪運のスキルと鑑定の力がなければこんなリスクの高い買い方はできないよね。

 もしも外れたら一瞬でパーになるからね。

 一応自分で空売り空買はしないというルールを作ってるから、口座にある資金以上のお金の売り買いはしていない。しかし、こまめに運用することで着実に増えて行っている。


 放課後、みんなに集まってもらって会議をした。

 今朝考えていたことについてだ。

 既に準備を始めている項目もあって心苦しいけどバッグと着物の店舗での取り扱いは無しになった。

「そりゃ経営者の判断を優先するわよ。リスク背負ってまでやる商売じゃないもんね。」

 とは順子さん談だ。


 特殊訓練用サーキットにはみんな食いついてきた。

「そういうところがあったら遠慮なくぶん回せるわね。」

 とかあさん。

 いや、母さん、そんな性格だった?

 バイク乗り出してから性格が攻撃的になってない?

 この特殊コースは山田さんちの裏山も使ったコースになりそうだ。一部売りに出されている近隣の土地も買い上げれば何とかコース設定もできそうだ。

 山全体を使ったロードコースと並行してロードコースの外側にオフロードコースも設定するようだ。


 これは楽しみだな。


 等高線の入った地形図を見ながらああでもないこうでもないとコース図を作っていく。

 40年ほど前からのバイクコレクションも好評を博した。

「それじゃ俺があこがれてたZ1なんかも乗れるようになるってことか?」

「そうですね。現状で乗ることができるマシンはすべて用意するつもりです。だから、それらのリストと、ジャンク品の情報も集めてもらえませんか?」

「了解。昔の仲間にも聞いてみるよ。」

 と源蔵さん。

 マジックストーンの件はどんな宝石が必要かの洗い出しを終えて、現在ルートを確保していっているとのこと。

 日本で買う1/4ぐらいで手に入りそうだという話だ。

 これも楽しみだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る