13.熱耐性【6/24】
最終的にはタワーマンションで保護した5家族は本部で吸収することにした。
販売店部門で2名ほど足りなくなるが、高校生の子たちが働きたいと申し出てくれて、それらの応援でカバーすることになったようだ。
うまく収まってよかった。
一時期はまだ人が足りない?余ってる?と混乱していたようだけど落ち着いた。
5家族を本部で吸収したのはこの5名で温泉プロジェクトを専任で進めてもらおうと考えているからだ。
マジカル・ホープの敷地にもボーリングしたら温泉でねぇかなとつぶやいたらさっそく源蔵さんが温泉掘りの手配とホープ敷地内に温泉施設を作るプランを練り始めた。
ついでにもう一棟のマンションの方も温泉を掘る計画を進めてもらうようにお願いした。
まだ全然入居してないので1Fを全部使ってもいいからそこに温泉施設ができないかプランを作ってもらうことにした。
温泉?掘れば出るよ。俺、運がいいから。
山田さんち(そろそろ何か名前つけないとな。)の温泉もようやく掘り当てたそうだ。現在水質検査に出している。
温泉施設もやっと建設に入れる。
だからこそ専任が必要になってきているのだ。
そして火曜日。ようやく、木本組のリストの中学生の方に着手することにした。
俺はまた一日学校を休んで、各中学校を回り、鑑定をかけていった。
中学校は6校あるのだがやはり北の地域と東の地域に常習者はいた。
高校受験の悩みや、チンピラにそそのかされて服用したものなどだった。
悲惨な背景がない分ほっとしていたが、リストにない中学生がいたのには驚いた。
これは木本組以外の組から出回った薬のようだった。
全員薬物成分を除去してゾンビの暗示をかけておいた。
これでしばらく様子を見るしかないだろうな
今週も又水曜日の朝が来た。
今週授かったのは【熱耐性】というスキルだ。
『高温地帯でも耐えられる やけどしなくなる』
というスキルだ。
う~ん。使い方がわからない。
確かに温泉は出たけどそこまで熱いのかな?
まあ、これも地道に考えよう。
今日は免許交付の日だ。
待ちに待った日である。
俺たちは教習所で出された卒業証明書をもって試験場に行き、免許交付を受けた。
う~ん。感動する。
母さんたちはそろって大型免許の交付に来ていた。
わざわざ今日に合わせてきたようだ。
それぞれがバイクも購入して、明日納車らしい。
車種なんかはそれぞれ違うのだろうし、まだ聞いていない。
いったい母さんはどんなバイクに乗るんだろう?
もうバイクの教習からは解放されたので俺たちはバンドの練習をして解散した。
明日の納車が待ち遠しい。
翌25日木曜日。
朝から俺はウキウキだ。
人生初のバイク。Ninja400が今日納車される。
俺たちは学校でもにやにやが止まらない。
しかし、俺たちのアイテムボックスには入っているのだよ。グローブとヘルメットが。
ようやく待ちに待った放課後になり、全員でおっちゃんのところに行った。
すると店頭には9台のNinjaが並んでいた。
壮観だな。ここまで並んでいるのを見たことはない。
「おっちゃん。受け取りに来たよ。」
と声をかけたが、おっちゃんは元気がなく、真っ白に燃え尽きた後のようだった。
それぞれキーを受け取り、車検証などの名義も確認して、捜査上の注意も聞いて、俺たちは一斉にヘルメットをかぶり、グローブをして、バイクにまたがった。
キュルル…ドルン。と、エンジンがかかった。
この鼓動…。いいな。
俺たちは母さんたちに見せるため、会社の地下駐車場にバイクを入れに行った。
するとそこにはヘルメットをかぶってバイクにまたがった11名がいた。
俺はバイクを近くに止めて、母さんたちに近寄った瞬間
「ぐふっ」
っと、膝から崩れ落ちた。
母さんがまたがっているバイクは……あれは…。
Ninja H2 SX SE+じゃないか…。
その上…全員が同じニンジャだと?
地下駐車場にはNinja H2 SX SE+が11台とNinja 400 KRT EDITIONが9台並んでいた。
「いや~。子供たちが全員同じバイクでそろえるって言うじゃない。じゃあ私たちもって、あなたたちのNinjaの最高モデルを注文したんだ。いいでしょ。」
…なに?俺が膝から崩れるこの一瞬のために全員でそろえただと?
確かこのバイク、乗り出しで300万円ほどしたやつだよな…。
俺はさっそく親子で緑の部分の色を変えさせられた。
確かにこうして並ぶとすげーけどね。
間違うこともないだろうけどね。
ああ、本格的にニンジャ部隊になっちゃったじゃないか。
「ニンジャ部隊だね。ニンジャ部隊月こ…。」
「それ以上言わせない。」
俺は母さんの口を押えた。
でもよくそんなの知ってるね。
みんなのヘルメットも預けられてバイクと同じカラーのラインを入れるように指示された。
わかりましたよ。やりますよ。
……あっ。おっちゃんが燃え尽きてたのって、これの納車をせかされてたからだったんだ。
そう気づいた瞬間、俺はもう一度膝から崩れ落ちた。
ごめんよおっちゃん。
KLXの上位車種はなかったはずだよな…。
俺たちはおそろいのヘルメットにしたところで、夜のツーリングに出かけることにした。
美香もヘルメットとグローブ持参で、同じようにヘルメットにラインを俺に入れさせて、にこにこと俺の後ろに乗ろうとしたが、まだ免許取ったばっかしなので今日は無理だった。
「お前があまりに楽しそうにしてるから言いそびれたんだけど…。」
「何お兄ちゃん?」
「バイクの免許取って、一年間はタンデム禁止なんだよ。」
「は?」
「だから、美香を後ろに乗せれるのは来年なんだ。」
「は?」
…あまりにもいたたまれない。ここにはお前を後ろに乗せれるベテランは一人もいないんだよ。
全員初心者なんだから。
全員一年間タンデム禁止なんだ。
俺は「は?」という表情のまま凍り付いた妹が忍びなくて、バイクをアイテムボックスにしまって、妹と一緒に家に帰ることにした。
みんなは夜の街に走り出ていった。
母さんも張り切って走っていった。
俺と妹は俺が妹の手を引いて家にとぼとぼと帰って言った。
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