-02.チーム分け

 ようやくみんなトイレから戻ってきたようだ。すでにそれぞれ仲良くなった人もいるようでお互いに話しだしている。いい傾向だな。

 タワーマンションの方に保護していた母子もこの中に入っている。

 日吉さんもだいぶ体調を取り戻してきているようだ。よかった。


「さて、そろそろ30分経ちました。周りの席で座っておられない方はおられませんね。

 では、ラーニングについて説明します。

 これは俺と皆さんの意識をつなげて、頭の中に直接学習内容を送り込んでいきます。

 原理や理屈はよくわかっていないんで申し訳ないですが、そうすることで皆さんの学力は大幅にアップします。

 お子さんのデータもこちらにいただいているので、お子さんには今の学年までの知識を学習してもらいます。

 お母さん方やその他の方々には大学受験レベルと外国語会話の知識を学習してもらいます。

 他にも接客方法など事務経理の知識もおまけしておきますね。

 では2時間ほどかかりますが、じっくり学習してください。

 皆さんの意識がなくなるということではないのでご安心ください。では始めます。」


 俺はそう言うと200人に一斉に学習させていった。この中には小学生30人、中学生20人、高校生15人が含まれている。他に乳幼児が30人ほどいるがみんなには猫とネズミが追いかけっこしているアニメでも見ていてもらおう。


 俺たちはそこでいったん退席した。

 学習した中には暗示ももちろん含めておいた。

 この会社を裏切ることのないように以前の一番みじめな経験を繰り返し思い出して、そうならないために生きるんだという活力を持ってほしいと前向きな暗示を持たせた。


 2時間後。


「そろそろ全員が学習を終えたようですね。いかがですか。

 ああ、言い忘れていましたが皆さんには俺の力の一部である身体強化と感覚強化の力も学習してもらっています。

 日常的に体を鍛える機会っていうのは今まであまりなかったと思いますが、これからは身体を動かしたくなると思いますよ。

 会社の福利厚生として駅前のステーションホテルの1,2階にあるスポーツジムと会社で契約しています。

 プールやランニングコースもあるのでぜひ利用してみてくださいね。

 これは中学生以上の方には無料で使える会員証をお渡ししますので、又一度行ってみてください。

 ああ、第一回目には会員証の写真を撮るそうですので、寝ボケ顔で言ってあとから後悔しないようにしてくださいね。」

 みんなの笑顔がかなり明るくなっている。


「皆さんのご希望があれば先ほど話した大学受験の模擬試験や高校卒業検定も受験してもらいます。

 俺たちもこの夏に高校卒業検定は受ける予定です。これは俺たちなりの日本の詰込み学習に対するけじめだと考えています。

 皆さんもどんどんチャレンジしてみてください。

 家に帰ってから子供たちの教科書を覗いてみてください。

 面白いほどに理解できていることを実感できると思います。

 学生の諸君は1学期の期末テストは多分満点になると思います。

 だって、わからないってことがなくなってるはずですからね。ああ、それと大事なことをいい忘れていました。

 先ほどの身体強化ですが、俺たちを見ていただければわかると思いますが、かなり体が引き締まってきます。

 すでに皆さんもお腹がペコペコになっているはずです。皆さんの今後の予定は食事をしてからにしましょうか。

 赤ちゃんたちのミルクや離乳食は用意がありますか?なければ申し出てください。こちらで手配しますので、ハンバーガーで申し訳ないですが、それぞれに用意していますので召し上がってください。

 ジュースなどのお代わりはあちらのテーブルに用意していますのでご自分でお願いします。

 食事をしていただいた後はそれぞれ帰宅していただいて結構です。

 帰宅の際はこちらに用意しています紙袋を持って帰ってください。

 子供も含めて全員分あります。乳幼児の方はタブレットのみ用意してありますので各自でセットアップを済ませておいてください。

 明日以降はそれをもって仕事していただきますので。

 パソコンやタブレットを今まで触ったこともない人でもすでに知識は頭の中にあるはずですから、問題なくできるはずです。

 もしわからないことがあったら同梱してある資料に会社のメールアドレスが記載されていますので、そちらに質問してください。」


 俺はこの日用に薄型のタブレットとしても使えるノートパソコンとそれよりも小さな携帯性に便利なリンゴマークのタブレットを用意している。

 みんなで分担して食事を配った。もちろんアイテムボックスから出したばかりなのですべてあったかいままだ。


 ようやく200人に及ぶ新社員への説明会が終わった。

 明日からはそれぞれメールで希望部署を聞き調整が始まる。


 部署としては

 本部統括

 仕入れ担当3部門 

 買い入れ担当3部門 

 販売担当3部門 

 がそれぞれ店舗ごとにあるので27部門ある。


 これだけで専属をつけると243名になりとてもじゃないが人手が足りない。

 そこで仕入れ担当、買い入れ担当はそれぞれ6人で計12名。

 販売店員は各店舗5名で15名、が3店舗なので45名。

 ここだけで57名必要になる。


 本部統括にはそれぞれの仕事で優秀な人を選別してきてもらうことにしている。

 それとプログラミング知識も学習させておいたので、アプリ開発などの社内応募も受け付ける予定だ。

 テーマは「人が幸せになれる」ということにしている。

 ゲームでもいいし、便利ツールでもいい。


 それと本部統括にはプログラム開発チームと動画配信チームを発足させる予定だ。

 また、小学生授業、中学生授業、高校生授業をそれぞれ配信していく予定なので講師陣も選ばなきゃいけないな。

 俺たちの手が離れてもやれることが大事だからね。

 俺やしおりたちも一講義は必ず受け持つつもりではいる。


 教科書には教師用の教科書も存在している。

 何をどう教えるのかが赤書きですべて掻きこまれているもので、学習指導要領として、教科書を打っている書店には大概置いてある。

 これに各学期で学習する範囲なども書きこまれているのだ。


 それを見ながら講義単位を分ける作業をカアサンズとトウサンズにお願いした。

 そしてそれぞれの講義を5分以内に教え切るという形にしたいと考えている。

 実は授業そのもので学習する時間は集約するとこれぐらいで十分に収まる。

 授業中では生徒に問題をこたえさせたり、板書させたりする時間がかなりの割合を占めている。


 動画の中ではいちいち教科書を読んだりしない。教えなければいけないことだけを抽出する。

 この方針で動画作成のためのシナリオも描いてもらった。


 こうして大体1学期30回の講座内容に分割していき、3学期で90回を予定している。

 これに試験用の特別講座が6回挟まれてきて、計96回の講義を設定した。


 これが高校なら10教科あるので960回の講義がある。


 中学では国語、社会、数学、理科、外国語の5教科なので、430回の講義になる。


 小学生では、学年によって呼び方が変わっているが国語、算数、理科、社会の基本4教科なので、360回の講義になる。小学生は定期試験がないため特別講座はない。


 そして大人のための講義、「大人でもわかる」シリーズの講義を追加した。


 これはカアサンズとトウサンズが大人になると大分忘れてしまって困ることがあるという声をもとに考えたプログラムだ。


 大人でもわかる計算問題、大人でもわかる当用漢字など、要点を絞った講義を考えた。

 計算問題、当用漢字以外には中学英語、中学数学、中学理科、中学社会を用意する予定だ。義務教育の範疇なので、ここまではせめて知っておいてというところをピックアップするようにお願いした。これも各10講座を考えている。


 これらを9月配信開始に向けて、撮影していかなければいけない。

 マジカル・ホープマンションの19階と20階の計6室はこの撮影のためのスタジオとして、当面専門チームが組まれることになった。

 計1,820回分の講義の収録である。


 俺はこの数を目にしたとき正直早まったかなと後悔した。

 しかし今や200人の雇用を抱えている。

 人海戦術で乗り切ることにした。


 高校、中学、小学と各科目ごとに一人の講師を選抜し、その人をメインキャスターとしてやってみることにしている。それプラス専属の編集者兼ディレクターとして2名、合計3名が各科目ごとの専属スタッフとして構成することになった。


 こうして高校10科目、中学5科目、小学4科目、大人講座1チームとして合計20チーム60名が必要だが、俺たち21名のうち、俺と美香を除く19名が、これらのチームごとに1名責任者として加わることになるので40名になる。


 店舗57名、動画作成チーム41名の合計98名。


 今回受け入れたのは全部で198名。

 うち学生が65名、幼児が30名、お母さんを含む女性が103名。

 タワーマンションに保護したのが5母子のお母さんだけで5名で合計108名になる。


 幼児の子供を持つお母さんたちで育児スペースとして1401号室を解放して、この部屋にみんな子供を預けて仕事に向かうことになった。幼児のお母さん30名のうち、幼稚園児が10名いたので、その方たちは各チームに入ってもらうので残りの20名で、それぞれローテーションしながら子供の面倒を見ることになった。

 この20名は本部付けとして雑用をこなしてもらうことになっている。

 常に5名抜けて15名の応援となる。

 この人たちに仕入れ担当と買取担当に入ってもらうことにした。


 つまり、45名販売員+15名本部付け管理部門+60名動画撮影チームとなり合計120名となる。このうち19名がトウサンズとカアサンズと高校生になるのでかろうじて人数が足りることになった。余剰が2名になるのかな。この人たちは本部に入ってもらおう。


 あと学生でも手伝いたい人にはどんどん手伝ってもらうつもりでいる。

 もちろんバイト料は払うからね。

 社員としては108名増えたことになる。

 つまり元からいた21名と合わせて129名が社員となった。

 一人30万円計算で月に3,870万円の人件費になる。

 既に着物リペアだけで黒字だ。


 いつまで続くかわからない商売だと割り切って次の事業も開拓しなければいけない。

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